Giuseppe Verdi,Opera

 

新国立劇場2008/2009シーズン第二弾「リゴレット」にいって参りました。連休の最終日ということもあって、少々疲れ気味でしたが、何とかいくことができました。よかったですよ。

リゴレット役のバリトン、ラード・アタネッリさんと、ジルダ役のソプラノ、アニック・マッシスさんがすばらしかったです。アッタネッリさんの声は、艶のある光を帯びた豊かな声で、聴いたとたんに心を奪われました。マッシスさんも、安定したピッチコントロールを見せてくれた技巧的な声です。ハイトーンはかなりの迫力。このお二方の歌については終始安心して聴いていることができました。

マントヴァ侯爵はといえば、初っぱなでオケとピッチが全くあっていなくて、気持ちの悪い思いをしましたが、そのその後修正してきました。ただ、マントヴァ侯爵といえば、私が予習で聴いていたパヴァロッティの完成された歌の印象が強すぎて、少々物足りなさを感じてしまいます。

オケの方はといえば、先月聴いた「トゥーランドット」の強烈な印象に比べて、少々おとなしい印象。指揮のダニエレ・カッレガーリさんは、部分的には若干粘っこい感じもだしていましたが、全体的には割と淡泊な感じにまとめていた印象です。

演出の方は台本に忠実なオーソドックスな演出で、奇を衒うようなことは全くなし。それはそれでいいのですが、すこし野心的な演出もみてみたかったなあ、と、少々身勝手な感想。思えばオペラ公演に出向いたのも今日で51回目となります。そろそろ演出的なおもしろさを理解できる準備ができてきたというところでしょうか。

しかし、この作品、救いがないですね。ジルダの脳天気ともいえる人の良さって、いったい何? などと考えてしまいます。マントヴァ侯爵に辱めを受け、裏切られたというのに、それでも愛情を持ち続け、身代わりになって自分の命までも差し出すだなんて、なかなかできることではありません。ジルダはほとんどキリスト的存在と言っても過言ではない。人間の猥雑な欲望や野心などとは全く無縁でただただキリストの教えのみに接していたから、キリスト教的自己犠牲を体現できたのでしょう。なにはともあれ、おそらくはリゴレットの命で教会に行く以外は家に引きこもっていたというのも原因の一つ。自業自得の感もあります。かわいい子には旅をさせよ、というところでしょうか。

ともかく、陰惨な救済のない人間劇で、ただただ絶望するのみ。この後もきっとリゴレットは復讐の鬼となってしまうのでしょう。ジルダがリゴレットを諫める場面がありましたが、あるべき姿は憎悪の連鎖を断ち切るということ。そうでないと復讐が復讐を呼ぶ無限地獄へと堕ちてしまいますから。

さて、新国立劇場も、初めて訪れた6年前とくらべていろいろと変化があります。「オペラパレス」という愛称を前面に押し出すようになったのはこの2,3年のことでしょう。 

 

 

 

次回は12月のドン・ジョヴァンニ。その前に11月23日にオペラトークを聞きに行きます。 また一ヶ月後が楽しみです。

Roma2008

送信者 Roma2008

どうしてローマに来たかったのか? と問われれば、ラファエロを見たかったと答えるしかない。ヴァチカン美術館にはラファエロの後期の作品群が納められている。それからシスティナ礼拝堂にも行かなければならない。ローマに来て、システィナ礼拝堂に行かなかったとなれば、長野に来て蕎麦を食べずに帰るのと同じ。

ところが、ヴァチカン美術館は入場に大変な時間がかかるらしい、とどのガイドブックにも書いてある。日差しのきつい7月のローマで行列に並ぶのは気が滅入る。それに、我々には時間がないのだ。限られた時間でいろいろ回らねばならぬ。そこで、昨年のウフィツィ美術館のように予約ができないものか、といろいろネットで当たってみると、以下のサイトに行き着く。

http://en.roma.waf.it/ 

ヴァチカン美術館は公には個人の予約を受け付けていない。だが、団体客は予約を受け付けている。どんなに個人客が長蛇の列を作っていたとしても、団体客としてなら、行列をパスして入場できるのだ。そこで、このサイトでは、申込者達をひとくくりに団体扱いとしてくれて、入場までさせてくれる。あとは、特にガイドがつくこともなく普通の個人客として自由に見て回ることができるというわけ。ガイド付きの日本語ツアーもあったけれど、制約が多そうなのでやめておいた。

ともかく、指定された集合場所に向かうと、サングラスをかけた太った青年が目印を掲げている。名前を告げて、予約客が集まるのをまつ。集合場所はヴァチカン美術館の正面入り口の向側だったのだが、よく見てみると、あれれ、行列はできていなくて、個人客もスムーズに入場しているではないか……。実はこの予約料金は結構値が張っていて、時間をお金で買うようなイメージだったのだが、なんだか損をした気分。しかし、待たずに着実に入れる、という安心感を買ったと思えばいいか、と考えてみる。

ともかく予定通り14時30分に入場。だが、炎天下のローマを歩き回り、サンピエトロ大聖堂のクーポラにも登ったということもあって少々疲れ気味だが、ここまできてへばっているわけにもいかない。果敢に歩き始める。まずはローマ彫刻だ。

送信者 Roma2008

 

ローマ初代皇帝アウグストゥスの像。世界史の教科書どおり。帝政ローマの礎を築いたアウグストゥスの偉大さは、言うに及ばず。

 

送信者 Roma2008

 ジュリアス・シーザーの像。なるほど、禿げ上がっているという噂は本当だった。

こうして、ローマのことを思い出すと、塩野七生氏の「ローマ人の物語」に読みふけった幸福感を思い出す。実務的で総体的な国力でローマ世界を構築していった偉大な人々。読むたびに勇気づけられて、凛然として生きようという気にさせられたものだ。その偉人達の像を見るにつけて、再び勇気づけられる感じだ。こうして思い出すだけでも、小さなことにこだわらずに、大きなことをなせ、と言われている気がする。