辻邦生「フーシェ革命暦」第二部

辻邦生師の「フーシェ革命暦」第二部を読了しました。熱に浮かされたように通勤時間に読み続けていました。

国家破綻寸前のフランスを立て直そうと、財務大臣のネッケルが貴族の免税特権を剥奪し税収を増やそうとするわけですが、当然貴族たちは黙ってはいないわけです。そこで三部会を開催し、税制を変えようとします。三部会は、僧侶階級、貴族階級、平民階級の三つの階級が合同する会議なのですが、貴族は当然議事の進行に協力するわけがありません。一方で平民階級の議員たちは、独自に議事を進めようとするわけです。

当時の平民階級、特に農民や労働者たちの置かれている状況は大変厳しかったわけです。穀物の不作にも関わらず徴税請負人の厳しい取り立てに種籾さえも供出しなければ行けない状態。食うや食わずの状況を強いられていました。もちろん都市労働者も同じです。小麦は貴族階級に買い占められており、パンの値段は上がる一方でした。 平民階級の不満は爆発寸前でした。

そんな折の三部会の開催で、平民階級はそうした状況が是正される最後の切り札として三部会を捉えていたわけです。 貴族階級、僧侶階級の不参加で、三部会の存立自体が危うくなったところで、アベ・シエースの提案により、平民階級のみで三部会を存立させることとし、議会の名称を三部会から国民議会に変更し議事を進めていきます。

一方、貴族階級も反撃を進めようと、傭兵部隊をパリ近郊に配置。治安状況の悪化していたパリに圧力を加えます。パリの民衆の不満・不安は頂点に達し、民兵が組織され、火薬を求めてバスチーユ要塞へ進撃し、これを陥落させるのでした。

民衆の理性を失い凶暴化した様相が強調されていて、「春の戴冠」のサヴォナローラ訴追の場面を思い出しました。フランス革命はテルミドール反動で幕を閉じるわけですが、フーシェ革命暦」は本来ならそこまで書かれるはずでした。つまり「改革」の破綻で幕切れとなる予定だったわけです。そういう意味では、私の持論である「性急な改革への警鐘」という、辻邦生文学の一つのスキームに合致すると考えています。

未完成に終わったのは実にもったいなくて、大枠のあらすじは、歴史が教えてくれるわけですが、魅力的すぎるミュリエルというキャラクターの誘拐事件を巡る顛末についてはわからないままです。いろいろと示唆は与えられているのですが、どこに落としどころがあるのかは謎のままかもしれません。 もちろん、未完成に終わった第三部の途中まで全集第十二巻に所収されていますので、引き続き読んでいこうと思っています。

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