American Literature

アシモフの「夜明けのロボット」を読終わりました。先週の木曜日から読み始めまして、最近にしては少し時間がかかりました。これまでのロボットシリーズよりも長くなっているようでして、文庫本だと上下二冊です。私は図書館から借りた単行本を読みました。

今回の事件はショッキングです。ダニールと同じヒューマンフォームロボットであるジャンダーが「殺されて」しまうというもの。ロボット殺しとは、ロボットの頭脳である陽電子コンピュータをフリーズさせる、あるいはデッドロック状態に陥れることです。ロボット三原則がありますよね。

  1. ロボットは人間を傷つけてはならない。
  2. 1.に抵触しない限りにおいてロボットは人間の命令に従わなければならない。
  3. ロボットは上記二項に抵触しない限りにおいて自分のみを守らなければならない。

ロボット殺しは、このロボット三原則といった根本的な命題、定理の三竦み状態のような状態に陥らせることで、ロボットはフリーズし再起不能となるわけです(本当はそんなに単純な話でもないのですが)。ですので、殺人とは少し様相が違います。

今回もファストルフ博士の要請によりイライジャ・ベイリが捜査にあたり、地球から惑星オーロラに向かいます。オーロラは、スペーサー達の中心惑星。オーロラは「夜明け」という意味がありますので、タイトルの「夜明けのロボット」には「オーロラのロボット」という意味を撮ることができます。

今回も、「鋼鉄都市」からおなじみの、ヒューマンフォームロボットのダニールが登場。そして「はだかの太陽」に登場したグラヴィアも。グレディアとイライジャ・ベイリの関係も面白いのですが、グレディアとジャンダーの関係も興味深いです。殺されたヒューマンフォームロボットのジャンダーとグレディアの隠されていた関係とは何か。

捜査に当たる中で、ベイリは宇宙人(スペーサー)達の派閥抗争にも巻き込まれます。銀河を地球人の手で開拓すべきだというファストルフ博士と、開拓はあくまでスペーサーが行うべきであり、人口の少ないスペーサー達自身ではなく、スペーサーと同じ能力を持つヒューマンフォームロボットを量産して開拓に当たらせようというアマディロ博士の対決です。議論の前提としてあるのは、スペーサーたちの人口は制限されており、ロボットを使用した安穏無事故の世界に留まっているがゆえに、開拓といった仕事は不可能である、と言うことがあります。

ベイリは、ファストルフ博士と「鋼鉄都市」の中でこういった問題を議論し、地球人が銀河系開拓に向かえるべく運動に従事するようになっているわけで、派閥抗争はベイリの捜査にも影響してきますし、ベイリの運動にも影響があるわけです。地球人独力では銀河の開拓は出来ないわけで、オーロラなどのスペーサー達の星間連合の協力なくして出来ないわけですから。

ここから先はこたえが書いてあるので、色を変えます。

それにしても、アシモフの本を三冊読みますが、緻密な構成には舌をまきます。犯人らしき人物が判明するのですが、実はそれが違う、とか。ベイリも真犯人であるロボットのジスカルドのことを気づいているのですが、人の心を読み、人の心の操作までも可能なジスカルドが、この物語の中でどのような役割を演じたのか、薄い層となって物語全体に敷衍されていますので、してやられた、という感じです。

というわけでロボットシリーズの三冊を楽しみました。引き続き「ロボットと帝国」を読む予定ですが、その前に読む本が3冊ほどあります。がんばりましょう。