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なにごとも陽気に明るく、心配事なんて忘れて、生きていこう。ひと時ひと時の幸福を味わうことこそが、生きていく上で大切なんだから

Richard Strauss


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ヴォツェック・オペラトーク@新国 (2)

Berg

一週間ご無沙汰しました。言い訳はいたしませぬ。と言うわけで、先日に続いて、ヴォツェックのオペラトークについてです。

 


ともかく、このオペラにおいては、ヴォツェックもマリーも、完全に貧困の袋小路に入り込んでいる。ここから逃れる術は全くないわけです。だからマリーは、鼓手長の中に貧困から抜け出す微かな可能性を求めているわけですが、冷静に考えると、鼓手長なんて言うのは、軍隊の中での階級はたかがしれている。結局逃れられないということです。しかも、それは自分たちの子供にも波及してしまう。きっとヴォツェックとマリーの息子も貧困の中で成長し貧困から逃れられないという現実。

(これは、まさに現在の日本がないしは世界が抱えている問題にも直結いたします。でもどうしようもないという無力感。自分がずり落ちないように支えるのが精一杯という現実)

クリーゲンブルク氏の演出の意図についての話し。(少々ネタバレですが、)

舞台装置は四角く、床には水が張ってあるそうです。それから黒い服を着た人物が何人も。登場人物はこの世ならぬ姿格好をしているわけですが、これはすべてヴォツェックから見た世界を表しているのです。ヴォツェックは、医者の実験台になり、抑圧されていて自分を見失い、精神的に崩壊しつつあるわけで、ヴォツェックの見る世界は常人あらざるものになっているわけです。まともに見えているのは、マリーと息子だけ。

舞台に水が張っているのは以下の三つの理由があるそうです。

一つは、ヴォツェックのいる世界が居心地の悪いと言うことを示している、と言う点です。じめじめしていて足下が濡れているという居心地の悪さ。特にドイツ人に取ってみれば湿気は日本人よりも嫌うでしょうし。

もう一つは、音響的な効果を狙っていると言うこと。ベルクの複雑な音楽に水音が加わることで、水音という我々にとっては身近な音が、ベルクの音楽世界をより現実に近いとことへと引き寄せよう、という意図があるのだそうです。これは実際にパフォーマンスに接してみないと分からない効果です。

さらには、視覚効果でして、水底が深淵であるように見せたり、あるいは水面の反射などの視覚効果を狙っているとのこと。こうした視覚効果から非合理的、非現実的な世界を表現しようとしているようです。

(少し面白かったのですが、舞台に水が張ってあることを、長木さんが「最近の新国ではやっていますが」といったことをおっしゃると、聴衆が笑ったこと。先日の「オテロ」の舞台でもやっぱり水が張ってあって効果的だったのですが、そのことを指しているのか、あるいは、劇場正面の水が張られた光庭を指しているのか)

この作品で重要なことは、ヴォツェックもマリーも良き人になろうとしていること。それに対して、大尉も医者もモラルから自由になっている。ヴォツェックもマリーも貧困といった現実社会の厳しさに直面して良き人であろうとしてもなかなかそうはなれない。特にマリーは鼓手長と関係を持ってしまい、罪悪感を覚えるわけです。このオペラの中でもっとも静寂なのはマリーが神に祈るシーンなのですが、その後ヴォツェックはマリーを殺してしまう。

なぜヴォツェックはマリーを殺したのでしょうか。クリーゲンブルク氏はこうおっしゃいました。非常に悲しいことに、マリーの殺害は、ヴォツェクが初めて自分でした決断だったわけです。それはヴォツェックの持つ怪物的な側面、それは貧困や境遇や人体実験によるものな訳ですが、そうした側面が表に出てしまったということなのです。

最後に一言ずつ。演出のクリーゲンブルク氏からは、この上演にてヴォツェック世界に入り、上演が終わりそこから去る時に、何かを持って帰って欲しい、という言葉が。指揮のヘンヒェン氏からは、この上演を故若杉弘芸術監督に捧げたい。本来なら若杉さんが振られる予定だったわけですが、残念ながらそれは叶わぬわけです。それからヴォツェックを「恐れずに」聴いて欲しい、とも。難解晦渋な現代音楽ではなく、実にエモーショナルな後期ロマン派音楽として不安を持たずに聴いて欲しいとのことでした。

せっかく書いたのですが、新国立劇場のウェブに全文載っておりますね。(#1, #2)ショック。せっかく頑張ってノートをとったのに……。

 

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