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<< やっぱり、辻邦生って、いいなあ。 | 「影のない女」研究 その5 オペラトーク(3) >>

Richard Strauss

月影もあらわになるほどに青空に映える三日月。影は常に寄り添うもの。

「影のない女」オペラトークの2回目です。終わるまでにはちょっと時間がかかりそうですね。初日は5月20日だそうですので、新国の舞台裏は今は大変なことになっていると思います。大丈夫でしょうか、みなさま。楽しみにしております&応援しております。

影とは何か?

「影のない女」の影とは何か? 詳しくは述べられませんでしたが、「影」とは、人間の生殖能力のことを指していると解釈されます。皇后は霊界出身であるがゆえに、真の人間ではないため、「影」を持たない。だから、真の人間になるべく、バラクの妻の「影=生殖能力」を奪うのである、という、実に陰惨な物語でもあります。

皇后は、影を得て子供を得たいのだが、皇帝は妻にはお構いなく、狩りに興じて家を留守にしている。一方バラクの妻は現実の生活につかれきってバラクに愛想を尽かしていて、子供なんて欲しくない。

二組の夫婦は、それぞれ子供を得ることができないという状態に置かれた不安定なもの。そこにこのオペラのひとつのモティーフがあるわけです。

バラク夫妻

よく知られているように、シュトラウスには暴露趣味があります。以下の三つは有名でしょう1

  • 英雄の生涯:シュトラウス自身を英雄になぞらえたもの
  • 家庭交響曲:シュトラウス一家を描いた実に奇天烈で美しき交響曲
  • インテルメッツォ:シュトラウス夫妻の間に起こった愉快な勘違い夫婦喧嘩をオペラに仕立て上げた。

で、バラク夫妻もやっぱりシュトラウス夫妻のメタファーになっているそうです。バラクは実直な男として描かれていますが、バラクの妻は、癇癪もちで、夫に愛想を尽かしているような女性なんです。

シュトラウスの妻であるパウリーネは歌手でしたが、結婚してからは、癇癪もちでヒステリックな悪妻だったようです。とはいえ、分かれるようなことはなかったんで、本当は互いに愛し合っていたんでしょうけれど。

これは、私がどこかで聴いた話なのですが、自宅への来客に、シュトラウスはこういったんだそうです。

「君、帰る時間を遅くして、もう少し我が家にいてくれないか。君が帰ったとたん、カミさんは、僕に『早く仕事(作曲)しなさい!』と癇癪を起こすだろうからね」

確かこんな内容。パウリーネがいてくれたおかげで、僕らはシュトラウスの音楽に恵まれているという面もありそうです。

世界観

このオペラには三つの世界があります。その間を行ったりきたりするわけです。

  1. 霊界:カイコバート、乳母、伝令が属する世界。妖精の世界。皇后は霊界出身である。
  2. メルヒェン世界2:皇帝と皇后が属する世界。
  3. 人間界:バラク夫妻の属する世界

霊界を、ホフマンスタールは神秘的なユートピア世界、神話的世界と捉えていました。「リング」のヴァルハラのようなイメージでしょうか。

1 「エジプトのヘレナ」でもやはりシュトラウス夫妻をモティーフにしたと思われる夫妻が登場するそうですが、不覚にも「エジプトのヘレナ」が数年前に上演したとき、落としていますので、大変残念。

2 オペラトークでは「メルヒェン」という言葉は使われませんでした。

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