NNTT:新国立劇場,Opera,Richard Wagner

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1月10日の新国立劇場公演、テオリンのことしか書いていませんでした。その他のことも書かなければ。
まずは指揮のこと。ダイナミックでシャープな指揮は、大野さんの意図が良く伝わってくるもので、とにかく高揚する場面での統率振りは見事で、ここまでのレベルまでオケ全体を押し上げるのは相当大変だったはず。あの爆発的なパワーは、なかなかお目にかかれないです。バーンスタインのような陶酔と恍惚でもなく、シュナイダーのような玄妙でもなく。あえて言えばシルマーの「エレクトラ」を新国立劇場で聴いたときと良く似ているかもしれない。
昨日も書いたとおり、私はどうやら大変な体験をしていたようですので、それも大野さんのおかげだと思います。
ただ、場面によっては疲れからか、指揮が単調になる場面も数箇所ほどあった気がします。たしかに、大野さんの顔はやつれきっていて、大丈夫かいな、と心配するほど。顔色も良くないし、スマイルサービスにも力がありませんでした。それから、オケの機能的問題についてはここで詳しくは触れません。
ブランゲーネを歌った期待のツィトコーワは、テオリンと一緒に演技をするとほとんど別世界の人間と思えるぐらい、小柄で痛々しささえ感じてしまう。演出上でも、なんだか虐げられている設定で、イゾルデから怒鳴られ、クルヴェナールにいじめられ、船員には揶揄される始末。第二幕では、せっかくイゾルデに進言しているのに冷たく跳ね除けられてしまう。常に何かにおびえているブランゲーネで、イゾルデにも冷たくあしらわれている。最終部分も、体育すわりをしてしまって、ほとんど引きこもり状態。そんないじめられ役的なブランゲーネを演じていました。
しかし、あの小さい体格で、テオリンに肉薄する声の太さを持つというのは驚嘆に値します。それにしてもカーテンコールでテオリンとツィトコーワが目をぜんぜん合わせていないように見えました。演出上もイゾルデとブランゲーネの間に冷たい主従関係を見て取れただけに、なんだか怖い。なぜ、ブランゲーネはああまで虐げられるのか? 所詮は昼の世界にしか生きられないということなのか。
最期のカーテンコールもすごかった。8年ほど新国に来ていますが、終了のアナウンスを覆して幕を開けさせたのは今回が初めてだったと思います。ブーイングもブラボーが入り乱れましたが、これがいわゆる「よいカーテンコール」というものなはず。新国にも桜がいるのかもしれませんが。