2011/2012シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera,Richard Wagner

新国立劇場情報センターローエングリン上映会に参加して来ました。みっちり四時間予習しましたが、とても充実した勉強になりました。

このときの演出は、あのヴォルフガング・ワーグナーなのですが、カーテンコールで登場していました。御存命の姿を見ることになるとは予想外でした。

指揮は若杉さんでした。まだお若くて、お元気なお姿でした。
ストーリーも再確認できました。世界は論理ではないですし、人間はいつの時代も不変です。テーマの普遍性だなあ。

Opera,Richard Wagner

はじめに

ワーグナーの活躍した19世紀はグリム兄弟がドイツ民話やドイツ神話を研究収集した時代で、ワーグナーもこの影響を受けてローエングリンやニーベルングの指環を作曲しました。

この時代のドイツは、フランス革命後のドイツ国民意識の高まりや、産業革命や帝国主義の進展を背景に、1871年のドイツ統一に向かっていた時代でした。フランク王国が分立しドイツの原型ができあがった時代を舞台とする「ローエングリン」は、そうしたドイツ的なものを再確認する機縁となったのです。

「ローエングリン」に登場するハインリヒ王は、初代神聖ローマ帝国皇帝であるオットー大帝の父親に当たります。ハインリヒ王は、東方のマジャール人の侵攻を防ごうとしていることがこのオペラの一つの背景にあります。

ドイツ統一に向けた時代背景

ドイツを守ろうとするハインリヒ王の姿は、フランス革命により火をつけられたドイツ国民意識の高揚とつながります。

19世紀はこうした、ドイツ国民意識の高揚と、ドイツ統一への機運が高まっている時代です。オーストリア中心の大ドイツ主義とオーストリアを排除する小ドイツ主義のせめぎ合いははげしいものでした。

そうしたなか、1849年に学識者を中心とするドイツ憲法制定議会(フランクフルト国民議会)が小ドイツ主義に基づき、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム四世に皇帝冠を捧げるも、国王は拒絶し、議会によるドイツ帝国成立の機会は潰えました。

Friedrich Wilhelm IV by Kreuger.jpg 

(フリードリヒ・ヴィルヘルム4世とフランクフルト国民議会)

そうしたドイツの激動の中にワーグナーも一人の当事者として関わっていました。1849年のドレスデンにおける革命騒ぎに参加し、追放されていたのです。

「ローエングリン」初演の時代

そのような時代に、「ローエングリン」は成立しました。作曲は1848年に終わっていましたが、フランツ・リストの奔走により、1850年8月28日にワイマールにてリストの指揮により初演されました。

後にナチズムに利用されることになる「ドイツの剣をとってドイツの国土を守れ」という第三幕におけるハインリヒ国王の台詞も、こうした国民主義高揚の文脈のなかに身を置いてみると、得心するものがあります。

「ドイツ帝国」のその後

その後、ヴィルヘルム一世とビスマルク率いるプロイセン王国が武力によるドイツ統一を成し遂げることになります。その後、第一次大戦でドイツ帝国は滅亡しますが、ヒトラーにより第三帝国を標榜するナチス・ドイツが世界を揺るがすことになります。

「ローエングリン」はドイツ第一帝国(神聖ローマ帝国)成立の一世代前を舞台とし、ドイツ第二帝国(プロイセン中心のドイツ帝国)前夜に誕生し、ドイツ第三帝国(ナチスドイツ)において利用されたと言えます。

Classical

ああ、これが歴史というものに生きる我々が耐えねばならない試練。
私たちが齢を重ねるごとに、その試練は重みを増し、絶え間ないものとなる。
“http://www.spiegel.de/kultur/musik/dietrich-fischer-dieskau-gestorben-a-833828.html":http://www.spiegel.de/kultur/musik/dietrich-fischer-dieskau-gestorben-a-833828.html

黙祷。

Opera,Richard Wagner

ローエングリン人物相関図

ローエングリンの主要登場人物の相関図を作りました。

登場しない人も書いてあります。パルジファルとブラバント侯爵です。

このオペラのセリフには、後に作曲することになる「ニーベルングの指環」に登場するヴォータンや、ワーグナー最後のオペラ「パルジファル」の同名の主人公であるパルジファルが現れます。

ローエングリンの父親はパルジファルという設定ですが、パルジファルは聖杯を守る騎士で、アーサー王の円卓の騎士の一人に数えられることもあります。

 

私の予習も佳境には入って参りました。日曜日はほぼ究極に近い予習(?)に行く予定です。

Richard Wagner

週末おわり。色んな方にお会いしました。
土曜日の夜は、大学時代の知り合い達と中野坂上で会いました。そのうちのお一人がUSで活躍するサクソフォニスト。14年ぶりに会いましたが、変わらずお元気そうでした。しかしプロともなると相当緻密に体のケアをしているわけですし、行動力も半端じゃない。学ぶべきことが多々あるなあ、と思いました。
私も頑張らんとなあ。
今日もローエングリンの予習。なんか、こんなにカッコいい曲でしたっけ、みたいな。新たな発見がたくさんありました。
すこし前にもtweetしましたが、第二幕の最後からマーラーが産まれたんですね、きっと。分厚い合唱とオケの最大音量、そしてオルガン。マーラーの二番、八番の終幕につながる壮大さなんですね。ますます楽しみになって来ました。


そろそろ飛びだってみますか。がんばれ。

Opera,Richard Wagner

6月はいよいよ私の敬愛するペーター・シュナイダーが新国立劇場に来てくださいます。演目はローエングリン。稽古はすでに始まっており、マエストロ・シュナイダーの来日もそろそろだとか。
というわけで、今日から本格的に予習を開始します。と同時に、またせっせと文章を書こうと思います。このところ筆舌に尽くしがたい(?)状態でしたので、やっと文章に向き合える感じです。私の根が尽きないように頑張ります。
まずは、シュナイダー師が御自らバイロイトで振った「ローエングリン」を聴かなければ。

この音源は、DVDで発売されていますが、個人使用のため音源に落としてiPodに落としました。
CDもあります。キャストを見るとDVDと同じなので同音源かと思われます。

バイロイトの響きは素晴らしくて、柔和な響きがシュナイダー的な繊細な弦と良く調和しています。
私はシュナイダーのこの音量感覚が大好きです。オケをきちんと抑制して、全体のバランスを最適に保ち、歌手を際立たせています。歌に感動しているのですが、じつのところオケがきちんと底部を支えていることによるものなのです。この音源もそうしたバランスの良さを感じることができます。もちろん、録音音源ですので技術の介在もあるでしょうけれどね。
ローエングリンをうたっているPaul Freyは、ペーター・ホフマンの代役でローエングリンを歌ったのがバイロイトデビューだったそうですね。もう少し遠慮せずにうたってほしい気もします。
昨今、時間のねん出が大変。少し寝不足だ。。