2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

雨の日曜日で、いろいろ捗りました。

今日は第3回で、トスカ成立におけるヴェルディのちょっとしたエピソードです。で、このエピソードがプッチーニにやる気を与えたらしいので無視できないのですね。

ではどうぞ。

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「トスカ」の原作となったのは、劇作家であるヴィクトリアン・サルドゥによる戯曲「ラ・トスカ」である。

「ラ・トスカ」は1887年でのフランスにおける初演以来、圧倒的な成功を勝ち得ていたのだった。これは、あのサラ・ベルナールが主演を演じていたというところにもあるけれど。

この戯曲をオペラ化するに当たって、台本を担当したのはルイージ・イッリカである。イッリカは、プッチーニの出世作「マノン・レスコー」をはじめ、「ラ・ボエーム」、「トスカ」、「蝶々夫人」の台本を手がけた。また、ジョルダーノの「アンドレア・シェニエ」も手がけている。(写真はルイージ・イッリカ)

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イッリカは台本への脚色をサルドゥと相談するためパリへ向かう。そのとき、パリには「オテロ」のパリ初演を準備するために当時81歳だったヴェルディが滞在していたのだった。ヴェルディはサルドゥと親しかったため、イッリカとサルドゥの会談に同席したのだった。

イッリカは、その場で「トスカ」の台本を朗読したのだが、第三幕のカヴァラドッシの辞世の歌に深く感銘を受けたのだった。

《私の愛は永久に消え、時は去り、私は絶望して死ぬ。今ほど人生をいとおしんだことはない》

ヴェルディは、年老いた自らに重ね合わせたに違いなかった。そして、もし自分がもうすこし若ければ、「トスカ」をオペラ化していただろう、と語ったのだった。

「オテロ」、「マクベス」など、シェークスピアの戯曲をオペラ化したヴェルディをして、そこまで感動させたこの「トスカ」とはどのような物語なのか?

次回は「「トスカ」とはどのような物語なのか?」です。

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日にて。

チケットぴあ

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

プッチーニがヴィクトリアン・サルドゥの戯曲「ラ・トスカ」によるオペラ作曲を考え始めたのは1889年頃だった。プッチーニの二番目のオペラ「エドガー」初演の頃で、31歳のことである。

プッチーニは、楽譜出版社リコルディの社主リコルディに宛てた手紙の中で、オペラ化に当たって、サルドゥの許可を得られるよう依頼をしている。しかし、このプッチーニの「トスカ」への思いは、6年後にフィレンツェにおいて「トスカ」の実演に触れるまで封印される。

その間、プッチーニは、「ペレアスとメリザンド」のオペラ化を考え、メーテルリンクに会いに行くのだが、ドビュッシーに先を越されてしまったり、マリー・アントワネットの最期の日々を題材にしたオペラを考えていたりしていた。

だが、プッチーニはフィレンツェで「ラ・トスカ」実演に触れたことで、「ラ・トスカ」のオペラ化を具体的に考えるようになる。

これは、プッチーニが、ライヴァルを意識した結果でもあろう。当時のイタリアでは、レオンカヴァッロおよびマスカーニのヴェリズモオペラ(写実主義的オペラ)の潮流が吹き荒れていた時代であった。

image(写真:ルッジェーロ・レオンカヴァッロ (1857-1919))

レオンカヴァッロの「道化師」やマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」などのオペラで知られるこの潮流は、元々は、ゾラやフロベールなどの文学上リアリズムの影響が音楽に現れたものだった。それまでは神話などを題材にしていた台本ではなく、殺人や情事など、現実的あるいは日常的なテーマを扱った台本によるオペラが作られるようになったのである。

プッチーニと、「道化師」を作曲したレオンカヴァッロとは、あの「ボエーム」を巡って、プッチーニとレオンカヴァッロ[i]はミラノの喫茶店で喧嘩をするほど、お互いのライバル意識は少なくなかったのだ。

プッチーニがオペラ化を企図する「ラ・トスカ」には、こうしたヴェリズモオペラの要素が満ちあふれていた。

  • 画家カヴァラドッシと歌手トスカの恋。
  • そして、政治犯を匿ったかどで拷問を受けるカヴァラドッシ。
  • カヴァラドッシを助けるために身を任せるよう警視総監スカルピアに強要されるトスカ。
  • そしてスカルピアを殺害するトスカ。
  • そして図らずも恋人を殺され、サンタンジェロ城から投身自殺するトスカ。

情欲と流血に満ちた素材は、まさに「ヴェリズモ=リアル=写実」である。

つづく

次回は「ヴェルディ翁を感動させた「ラ・トスカ」」です。

 

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日にて。

チケットぴあ

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[i]実は、「ラ・ボエーム」にはレオンカヴァッロが作曲したバージョンが存在するのだ。

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ちょっと力入れすぎですが、がんばります。今日も静謐な一日。明日もその予定。

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

はじめに

「トスカ」は、プッチーニの代表作の一つです。

描かれるのは、革命、理想、愛、典礼、情欲、秘密警察、拷問、刺殺、銃殺、希望そして絶望。まさに、スペクタクルと人間ドラマに彩られたオペラ中のオペラです。

音楽的にも魅力に満ちあふれています。キリスト教典礼の目眩く絢爛豪華なオーケストレーション。涙無くしては聴けない名アリアの数々。そして、情欲と葛藤がせめぎ合う緊張に満ちた音楽群。これは興奮と魅力に満ちあふれた音楽なのです。

この「トスカ」を10倍楽しむために、シリーズ「新国立劇場「トスカ」を聴こう」を連載することにしました。

もちろん最後は初台の新国立劇場オペラパレスへ行きましょう。息を吐かせぬ感動が待っているはずです。

<次回の予定>

「トスカ」成立の背景は?

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日にて。

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