新国立劇場《マノン・レスコー》その2──「女の子は女だよ!」

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はじめに

幕がひけた後の新宿です。もうちょっと引くと面白かったのですが、iPhoneの単焦点レンズですと、こんなかんじにしかなりません。まあ、限定されたものの面白みというものがあるのだと思います。

マノン・レスコー、引き続き

歌手勢では、マノンを歌ったスヴェトラ・ヴァッシレヴァがとりわけ印象的です。舞台がキリッとしまりました。

特に、二幕のマノンの悪魔っぷりがいい感じです。あそこは、マノン役の見せ場だと思いますが、本当に濃密で集中したパフォーマンスでした。時を忘れた感じです。

さすがにそれらしい演技です。でも本当の悪魔はそうではないのかも、とも。とにかく、男はアホですな、というのが結論か。経済学は女性のほうが得意なのでしょう。

ヴァッシレッバは低音域も豊かで、重みのあるソプラノです。プッチーニ役が得意とのことですが、ヴェルディの主役級はいけそうです。ヴィオレッタは当然ですが、この方のデズデーモナとか聴いてみたいです。なんか、《ばらの騎士》の元帥夫人とか《カプリッチョ》の伯爵夫人もいけるのでは、とか思ったり。あるいはジークリンデ、とか。本当に綺麗な方です。

第二幕の途中登場のダンサー。男性ダンサーが女性的バレエを踊るという、フランスの頽廃を皮肉ったもの。男性が白粉で顔を真っ白にしているというのもなにか示唆的です。中性化が革命につながる? そういうものなのでしょうか。

終わりに

今日、一緒に飲んだ高校時代の友人。幼稚園に通う娘さんがいるのですが、一言こうおっしゃっていました。

「女の子は女だよ!」

ありがとうございました。今日一番の名言をいただきました。

ではグーテナハトです。

新国立劇場《マノン・レスコー》その1

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はじめに

今日の新国立劇場の水庭。静謐な水面です。

今日は《マノン・レスコー》。2011年3月にプレミエが予定されていましたが、震災のためゲネプロをやったところで中止となった、という事情のあるプロダクションです。

4年前のブログにもいくつか書いておりました。

http://museum.projectmnh.com/2011/03/14214016.php

http://museum.projectmnh.com/2011/03/20193219.php

日本人にとっては、このプロダクションはなにか感じるものとなります。当時のブログ記事には先行きの見えない不安や悲観が書いてありました。実際には、震災当時八千円だった日経平均は二万円目前まで上がっています。2020年のオリンピック開催も決まりました。しかし、福島第一は引き続き先に見えない修復作業をおこなっており、復興も道半ばです。

そうした中にあって、中止されたこのプロダクションが復活するということは、当時失ったものを一つ取り戻した形になる、ともいえるでしょう。

今日の演奏

それにしても、ピエール・ジョルジョ・モランディの指揮が素晴らしかったです。

この方、元はオーボエ奏者でいらっしゃいます。その後、ムーティのアシスタントになり、バーンスタインや小澤征爾に師事し、 1989年にローマ歌劇場の首席指揮者という経歴を作ったようです。

先日、シノポリの画期性とは? という記事を書きましたが、カラヤン後にあってテンポをうごかした、というところにあるのでは、と思いました。80年代にあの様な演奏はに「戻した」というのが画期的だったのでしょう。

今日ではめずらしくはありませんが、今日の指揮もやはりそうしたテンポを動かしてドラマを際立たせるものでした。特に二幕の最後の駆け上がるような加速とか、極端にテンポを落としてみせるところは、なかなか圧巻でした。

ドラマをきちんと成立させる指揮という意味で、完全な指揮でした。まずはそこがあって、その上で、です。今回はその上もできていましたから。間奏曲の弦の厚みとか、うねるグルーブとか、絶妙なダイナミズムなどは、緻密に行き届いた名画を見るようでした。

さしあたり

今日は一旦ここまで。明日に続きます。

それではおやすみなさい。グーテナハトです。

春の風情──マノン・レスコー予習中

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なにか春の風情が日に日に色濃くなる東京地方の今日この頃です。なんだか、めまぐるしく動く年度末な感じ。つうか、水面に落ちる影が綺麗。

マノン・レスコーを鋭意予習中です。ナクソスミュージックライブラリーのおかげで、同曲異演の確認ができるようになっていいですね。

今日はこちらを。

プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」全曲
バルトレッティ(ブルーノ) アンブロジアン・オペラ合唱団 カバリエ(モンセラ) サルディネロ(ビセンテ) ドミンゴ(プラシド) ティアー(ロバート)
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私が聞いているシノポリ盤とおなじく、ドミンゴが参画していますが、音作りが違います。シノポリ盤はなにか交響曲を聴くような音の統一感がありますが、この盤は、伝統的なヴェリズモオペラのような劇的な感覚です。なにか古い感じがします。

つうか、間奏曲の最後のフレーズ、マーラーの復活にクリソツだ。。

先週、今週と徹夜仕事をする機会があって、生活リズムがイマイチ。いや、もう徹夜はできる人とできない人がいるし、徹夜すればするほど寿命が短くなるわけですから、とっとと寝たいんですけれどね。。早く人間になりたい。

ではおやすみなさい。グーテナハトです。

ボエームな時代とは? あるいは時代のボエームは?

はじめに

船便のボジョレーだそうです。

先日のんだボジョレー。船便だそうです。一ヶ月ぐらいしてから届きました。なかなか美味しくいただきました。ボジョレーなのにラベルが英語って、いったい。。

Puccini: La Boheme
Puccini: La Boheme
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今日のNHK-FMの「名演奏家ライブラリー」はミレッラ・フレーニでした。私も、フレーニの音源は沢山持っています。特にオペラを聴き始めた頃に聴いたカラヤン盤《ラ・ボエーム》は思い出深いですね。その他、シノポリ盤《マノン・レスコー》も素晴らしいです。

《ラ・ボエーム》は、番組の一番最後にオンエアされました。フレーニとパヴァロッティ。まさに教科書というかカノンというか、そういう規範的なボエームです。

第一幕の後半部、ミミが、ロドルフォの部屋に来て蝋燭の火を借りに来るんですが、これは逆ナンパではないか説が有力ですね。そういう解釈に従った演出もあるそうです。メルビッシュ湖上音楽祭でやったボエームがその解釈をとっていた気がします。蝋燭の火を借りて「おやすみなさい」といったあとに、とつぜん鍵落とすんですから。わざとらしいと行ったら、という感じです。

ロドルフォは詩人ですが、ミミも造花を作っているといいながら、それは詩なのだ、といったりして、まったく。。

たしか、プッチーニは原作にあったミミの強気な性格をかなり弱めたんですが、それでもなお残っているという感じなのでしょう。

一九世紀におけるボヘミアン

ボヘームというのは、ボヘミアンという意味。まあ、ボヘミアからきたロマの方々を自由人としてみて、そこから、自由奔放な考え方をする若者たちをボヘミアンと称したということで、《ラ・ボエーム》。描かれた若者たちはボヘミアン。

ロドルフォは詩人、マルチェロは画家、ショナールは音楽家、コッリーネは哲学者。一九世紀パリ。

この頃、もっとも先進的な職業がこれらだったんでしょうね。

私の大学の先生が入っていた言葉が思い出されます。哲学に優秀な人材が集まっていたのは二〇世紀初頭までである、と。

逆に言うと、それ以前は哲学に優秀な人材が集まっていたはず。もちろんそれは哲学に代表される文化一般であるはずで、文学、絵画、音楽、哲学という人文系職業にも優秀な人材が集まっていたはず。

というのが私の勝手な想像で、それはつまり、第一次世界大戦までパリにあったサロンにおいて、文学、絵画、音楽、哲学などが力を持っていた、というのはプルーストを読むと何となく分かるなあ、というわけです。

現代におけるボヘミアンは?

現代でいうと、彼らはだれなんだろう、と思うことがあります。ビジネスマン、起業家? 

私は、NYやシリコンバレーでITベンチャーを立ち上げている人々がそれに当たるのではないか、と思うのです。ビル・ゲイツとかスティーブ・ジョブスとか、そういう偉大な起業家たちがそれではないかと。

一九世紀にあって、文化が先鞭をつけた自由主義が世界を変えると思われていたわけですが、今、世界を変えうるのはITであるはずです。

パリを手に入れるぜ、というのは、今で言うと、NYやシリコンバレーで一旗あげるぜ、とうことになるんでしょうね。私はそう思ってます。

わたし、一つウソを書いています。つまり、世界を変えうるのはITだった、ということだったのかもしれません。つまり過去形。

あの1990年代後半のインターネット時代の開幕の熱狂はどこへ行ってしまったのか。ITバブル真っ盛りの時「世の中が変わったのであるから、市場は絶対に落ちない」という幻想がまことしやかに語られていたのも思い出します。

その次に訪れたのは、ITバブルの崩壊、リーマンショック。それから、ネットを舞台にしたサイバー戦争です。ネットは自由をもたらすものと思われましたが、とある大国では規制がかけられ、いまや監視装置になっています。

私は戦前に若い時代を過ごされた年配の方がネットに恐怖心を抱くのは、こうしたことを察しているからではないか、と思っています。

では、次にボヘミアンたちはどこに行くんだろう? 何を作るんだろう。最近、そんなことを考えてます。

ではグーテナハトです。

まずは短信で。二人のヒロイン──新国立劇場《カルメン》と《蝶々夫人》

IMG_0483.JPG この週末は大仕事でした。友人の結婚式のため、《カルメン》をエクスチェンジしましたので、土曜日が《カルメン》、日曜日が《蝶々夫人》ということになってしまい、ついでにとある原稿の締め切りもかかえていました。
ということで、息つくまもなくあっという間の週末でした。
土曜日の《カルメン》は、皇太子殿下がいらしていたり、有名な女流作家をお見かけしたりと、華やいだ感じの公演だったと思います。皇太子殿下登場の折は拍手が起こりまして、100年前の欧州もやはりこういう感じだったのか、などと思ったり。エクスチェンジして良かったかも、などと。
日曜日の《蝶々夫人》は、初日に体調不良でキャンセルしたアレクシア・ヴルガリドゥが登場し、盛り上がりました。指揮のケリー=リン・ウィルソンの素晴らしさが際立っていましたね。緻密で大胆でした。女性らしいきめ細やかさがありながらも歌わせるところはダイナミックに歌わせ、ドラマを支える劇的な演奏でした。
やはり、ドラマが躍動するのは音楽があるからです。これは、聴いている時にはなかなか気づかないことなのかもしれないのではないか、と思います。ストーリーや歌唱に感動している気がしていますが、実は指揮者によって勘当させられている、という状況です。私はこの感覚を、ペーター・シュナイダーや若杉さんの指揮で学んだように思います。
土曜日のカルメンも、日曜日の蝶々夫人も男のエゴで死に至る悲劇のヒロインです。ふたりは正反対のタイプの女性ですが、共通しているのは、ふたりとも男によって造形されたキャラクタであるということです。オペラの中でも外でも悲劇なのかもしれないです。
というわけで、続きはまた明日。

ソンツォーニョオペラコンテストに落選したプッチーニ

プッチーニの最初のオペラ「妖精ヴィッリ」は、ソンツォーニョオペラ作曲コンテストに出品され、落選したものだった。

このコンクールは出版印刷会社経営するエドゥアルト・ソンツォーニョが企画したものだった。ソンツォーニョ社はもともと、文学作品の廉価版を出版したり、共和党の月刊誌にも関わっていた。

エドゥアルトはそれにも飽きたらず、音楽情報誌「イル・テアトロ・イルストラート」を作った。そこでオペラ作曲コンクールを催したのだった。


第一回目の優勝者は、ルイージ・ボレッリ「アンナとグァルベルト」、グリエルモ・セッリの「北の妖精」であった。プッチーニの妖精ヴィッリは落選したのだが、これには背景がありそうだ。というのは、プッチーニは遅筆で、締切間際に提出し、しかも乱筆であったから、というのだ。人間はまずは体裁から入るから、中身が良くても体裁が悪すぎては氷化されないと言うことになる。


ソンツォーニョ社はプッチーニを見いだすことが出来なかった。

だが、第二回目のコンクールにおいて、ソンツーニョ社は金の卵をてに入れたのだ。

マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」である。

これが「ヴェリズモオペラ」のブームのはじまりはここにあった。そして、そのブームがプッチーニに「トスカ」を作曲させる要因の一つになったのだ。

一方、落選した「妖精ヴィッリ」を目にとめたジュリオ・リコルディがプッチーニを見いだしたのだ。ソンツツォーニョ社はライヴァルのリコルディに塩を送ったことになる。

また、第一回目の入選者はどうなったのだろう。人生の哀楽をみる一つのエピソードがある。

次回へ

《短信》ソンツォーニョ社について

今日も郷土のために頑張りました。

トスカに関連して、周辺事情をいろいろと調査しています。

ソンツォーニョ社について調べています。19世紀のイタリアの出版社で、ソンツォーニョオペラコンテストを主催していました。プッチーニはここに「妖精」を出品しましたが、残念ながら落選します。そのあとが面白いのです。

今日は遅いので取り急ぎ。明日に続きます。

 

《短信》フランケッティについての補足

先日から連載しているトスカの件ですが、その後も引き続き調査を続けています。その中でわかったことをお伝えします。

トスカ成立の話の中でフランケッティという作曲家が登場しました。もともとトスカの作曲権を持っていたのですが、ジュリオ・リコルディにしてやられて、プッチーニに作曲権を渡してしまうという話でした。

その際に、フランケッティはプッチーニの学友だったという話を書いたと思います。このエピソードは、プッチーニの伝記として有名なモスコ・カーナーの著作に登場します。私はそこから引用しました。

ところが、南條年章氏の「プッチーニ」(音楽之友社)おいては、それが誤解ではないか、という説が紹介されていました。

曰く、フランケッティは、プッチーニと同じマージという先生に習っただけなのだそうです。いわば兄弟弟子です。ですが、一緒に学んだことはなかったとのこと。プッチーニはルッカで、フランケッティはヴェネツィアで、マージに師事したということになります。

歴史の中に埋れた真実はその手がかりをつかむのは難しいです。

(イタリア語がわかれば良いんですけどね。あと10年すれば、翻訳エンジンの性能が上がるでしょうから、文献程度なら辞書がなくてもわかる日がくるでしょう)

このシリーズ、来年元旦には、形にまとめてご披露できるよう頑張ります。

 

デイヴィスのトスカを聴きました。

トスカ、まだまだ続きます。

そろそろ「理髪師」の予習もしないと行けないのですが。

今日はデイヴィス盤を紹介します。

デイヴィスの指揮はずいぶん好きなんです。「ピーター・グライムス」や「魔笛」に親しんでいました。

デイヴィスの指揮もきりっと引き締まっていて、緊張感が素晴らしいです。テンポコントロールがきまっています。

スカルピアのイングヴァール・ヴィクセルがエラクカッコイイですよ。スウェーデン生まれのバリトンで、昨年亡くなられたようです。鋭利で冷たい刃物のようなスカルピアです。

カレーラスも雄々しく雄叫びをあげます。第二幕でナポレオン軍の勝利に歓喜して絶叫するところは、さすがカレーラス!、と思います。

トスカを歌うモンセラート・カバリエがも豊潤でドラマティックです。

1976年にコヴェントガーデンで録音。

(もう36年も前ですか。。)

  • 指揮:コリン・ディヴィス
  • トスカ:モンセラート・カバリエ
  • カヴァラドッシ:ホセ・カレーラス
  • スカルピア:イングヴァール・ヴィクセル

最近夜更かし気味です。今日もそろそろ眠ります。

では。

新国立劇場「トスカ」に行ってきました。

初台にてトスカを見てきました。

今回も前列方面でしたので、いつもになく十分に堪能しました。ありがたいことです。

3年前の「トスカ」をみた後には「このパフォーマンスが東京で、なんて恵まれている。」という記事や、「音楽か、言葉か、演出か?」なんていう記事を書いています。

今回も、このパフォーマンスを東京でみられる幸運に感謝です。

 

ノルマ・ファンティーニ!

トスカを歌ったノルマ・ファンティーニ、今回も聞かせてくれました。

というか、迫真過ぎて、見ているのがつら過ぎするぐらい。

なんだか、もう、トスカの危機的状況が手に取るように分かって、あらすじは理解しているんですが、ハラハラしました。

表情も硬軟織り交ぜているのよく分かりました。巧いです。

第一幕、カヴァラドッシが浮気をしているのではないかと疑うシーン、笑ったり怒ったり織り交ぜてカヴァラドッシを責めるあたりは、本当に役者だなあ、と思います。

パワーもものすごいです。座席が前の方だったので直接声が響いてきました。いままで味わえなかった感動です。

舞台の歴史背景

ステージの豪華絢爛さは何度見ても素晴らしいです。座席的にも舞台がよく見える場所でしたので、聖アンドレア・デラ・ヴァッレ教会に本当に足を踏み入れた気がします。

ちょっとイタリアに来た気分で、幸福な気分です。

今回は、歴史的経緯もちゃんと確認していきましたので、その点でも楽しめました。

第一幕最後のテ・デウムのシーンに登場した若い王妃が、ナポリ王国女王のマリア、カロリーナですね。ずいぶん若いですけれど。

どうやら教皇も登場していたようです。きっとピウス七世です。

スイス人衛兵もカッコよかったです。

雑感

しかしなあ、これから死ぬ運命にある幸福な恋人達の会話を聞くと胸が痛みます。

カヴァラドッッシも、いつ逮捕されても分からない状況にあったのに、トスカと一緒に居たいが為にローマに滞在していたわけですから。

政治を甘く見てはいけないです。お節介ですけれど、

第三幕、トスカとカヴァラドッシが感極まって、歌と絵で芸術を極めよう!みたいなことを言うんですが、これって音楽と演出のことを言っているんだろうなあ、と思ってみたり。

トスカとカヴァラドッシが巧く逃げたら、きっとカヴァラドッシが演出家になって、トスカが出演のオペラプロダクションを作ったりして。。

結局、うまくいかなさそうな二人です。

スカルピアがもし生きていたら、ナポレオンが再びローマを攻略したときに失脚するんでしょうが、巧いことやって、フランスに取り入ったりするんでしょうね。

 

今回も本当に楽しめました。ありがとうございます。

それではまた。フォースとともにあらんことを。

 

※ヌーヴォー飲んで酔いながら書いてます。。