映画「最高の人生の作り方」を。

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この映画も面白かったですね。少し時機を逸しましたが、ディケンズの「クリスマス・キャロル」を思い出しました。

偏屈な老不動産屋の元に、その存在すら知らなかった孫娘が現れたことで生じる化学反応、というのがあらすじです。

とても安心してみていられる映画でした。

それで、何より凄かったのが、ダイアン・キートンの歌ですかね。最終部分で、「いそしぎ」を歌うのですが、いや、めちゃかっこいいです。まあ少しばかりの傷はあるにせよ、いい雰囲気でした。演出もいいんですよね。聞いている老紳士が、ダイアン・キートンのトークや歌に徐々に引き込まれていく姿が描かれているんですが、その老紳士はあくまで背景なのでピンがあっていないという状況で、ピンが合わなくても、そういう心情が伝わるということとは、その俳優さんの演技の素晴らしさと、演出の妙なんだろうなあ、と思いました。

あれ、「いそしぎ」を調べたんですが、この映画「いそしぎ」の最後は、怪我をした鳥を空に羽ばたかせる映画なんだそうです。この「最高の人生の作り方」も最後鳥を飛び立たせるなあ、と。意図しているとも見れそうです。

あともう一息で2015年も終わりです。

では、おやすみなさい。グーテナハトです。

老いらくの《カルテット》


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面白い映画でした。

音楽家のための老人ホーム。存続資金を得るためのガラコンサートを、老いた音楽家たちが企画している。そんな時に、ホームに入ってきた老ソプラノ歌手は、ガラコンサートに出演する老歌手のかつての妻だったのだが…。

というストーリー。

一番驚いたのは、あのグィネス・ジョーンズが出演していたことです。エンドロールで気づいて、本当に驚きました。物語の中で、年を重ねてもなお歌うことを恐れる、という主題が出てくるのですが、グィネス・ジョーンズは、映画のなかで、実際にその恐れを克服している、あるいは感じていないかのようにおもいます。 
実際、グィネス・ジョーンズと同じく、高名な演奏家が出演していて、演奏を披露してくれます。リアルです。

今日はこちら。


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グィネス・ジョーンズの豊潤をサロメを聞くことができます。フィッシャー=ディースカウのヨカナーンも最高。
それでは、おやすみなさい。

映画《カルテット》を見ながら──クライバーのブラ4

Photo

先日、風の強い日に噴水が強風に煽られ波立っていたので撮ってみました。石で固められた都会にあって、こういう池や噴水の水にはホッとします。

今日は一日中フルスピードで頭を動かして、仕事場を出てからも、とあるインターネットプロバイダーに苦情を言いながら契約を更新するなどしたもので、なかなかヘビーでありました。

帰宅の電車では、こちらを観ているところです。前から見たいと思っていましたが、Amazonプライムビデオに入っていたということで、通勤電車でも見られるようになったという感じ。

まだ見ている途中ですが、設定としては、ビーチャムハウス、という、おいた音楽家のための老人ホームが舞台です。これ、ヴェルディの作った老人ホームにインスパイアされているんだろうなあ。

老オペラ歌手が、オペラについての講義を学生たちにしている場面があるのですが、本当にいいことを言っているなあ、と。曰く、かつてはオペラはぶっ飛んだ若者がやっていたものだが、いつしか、上流階級のものとなり魂を奪われた。それは、まさにラップと同じく、言葉に乗せて人生の痛みを語るものなのである、みたいな感じだったか、と。ちょっと翻意が入っていますけれど。

老オペラ歌手が、黒人の若い男性にラップを歌わせるシーンは、ちょっとジーンときます。


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映画は、90分から120分の間に、プロットをギュッと詰めますので、とても勉強になりますね。人生勉強にも文学の勉強にも。

今日はこちら。今日、感銘を受けたのは、第一楽章最後のティンパニーの打撃。あの加速度的な破壊力は本当に何かがほとばしっています。それから、第四楽章。これも、鋭さを持ちながら、厚みのある音作りで、何か民族的なものを思わせる悲しみに満ちたテーマが、絶妙なテンポ感で料理されていくさまは本当に圧巻です。クライバーは本当にすごい指揮者です。


ブラームス:交響曲第4番


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まあ、こう考えると、先日書いた、以下の引用が身にしみていて、それを今更やっているんだと思います。

たくさんの本を読め 、できるだけたくさんの映画を見よ 、せいいっぱい音楽を聴け 、たくさんの人に会え 、多くの経験を積め 、そして空想の羽ばたきに身をゆだねよ !自由を楽しめ !

で、若さは相対的概念である、という点も含めて。頑張らないと。

ではおやすみなさい。グーテナハトです。

映画「大統領の料理人」を見ました。

今日はこちらを観終わりました。


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フランス大統領ミッテランの希望により、大統領官邸エリゼ宮の料理人となった女料理人の物語。

誇大なキャッチフレーズにはなれているからいいですが、これは、まさに、権威と真実の戦いの物語。料理人である主人公はもちろん、権威のトップの大統領でさえ、その権威の網から逃れられない。権威はすべてを動かす。料理人をスカウトするためさえ、列車の発車を遅らせるわけほどの力を持ちます。

それは、とかく、権威の長、つまり大統領や社長よりも強大な力を持つわけです。劇中、ミッテランは、自分はいじめられている、とこぼすわけですが、権威が権威の長をも支配する、トイう類例でしょう。

この、灰色の巨大なアノニムな権威は、崩れることなく、過去から綿々と続いているのですね。

ルイ・フィリップの時代から使っているという銅の鍋の話はそれを物語るし、衛兵はローマ時代のデザインの兜を今もなおかぶっている。大統領は、エリゼ宮というかつての王宮に住み、家臣は、フランス国王に対するような受け答えを今でもしています。

2000年にも及ぶ権威はそうそう崩れることはなく、真実や個々人は常に敗北します。自由と革命の国フランスにあってもなお。

そういう物語だと私は解釈しました。

今朝方、尊敬する伯父が亡くなりました。

人生というものは、失敗と悔恨でできている、と言っても過言ではありません。

==

伯父とは、もう10年も会っていませんでした。それが悔恨というもの。

ですが、私の記憶の中には、ずっと元気でいてくれています。私のエピソード記憶は半端なものではないのです。

学生時代は、毎年夏に行って、一緒に海水浴をしたものです。真っ赤に背中を焼いたあの夏の日々はもう帰りません。海岸沿いを伯父と二人で走り回った日々も戻りません。奈良に出かけて、昼間から日本酒を飲んだ日々も戻りません。

今思えば、伯父の生活スタイルが、遠い日に見た私の理想の生活スタイルなんだろうなあ、と思います。

人生の中でも、ずいぶん短い間しか会っていないような気がするのですが、若い頃に受けた影響というのは、本当に強く、その後の人生を左右するものなのです。

私は、それもこれも全部覚えていますから、伯父とは何度も何度もいつでも会うことができるでのだ、と思います。

おやすみなさい。グーテナハト。

ストラヴィンスキーの新古典主義のようだった「世界にひとつのプレイブック」

今日はこちら。

まるで、ストラヴィンスキーの《プルチネッラ》のような作品だと思います。つまり、非常にシンプルなストーリーの映画なんですが、何かバランスが悪いところがあって、引っかかりを覚えるのですが、それでもなお、その引っかかりさえも許すことができるぐらいに、面白い、というものです。

引っかかりというのは、ひとつは、主人公たちのエキセントリックな振る舞いに代表されるような、ストーリーの中で意図したと思われる味付けでしょう。さすがに躁鬱病患者の振る舞いは、さすがに、ある種の感情を呼び起こします。

もう一つの引っかかりは、ストーリーの中にある幾つかの恣意的とも思える展開です。ですが、いくら恣意的であろうとも、全体のバランスの中では、一つの味付けとして楽しめるわけで、むしろ、そうした恣意的な要素ですら、包括して、いい映画だ、と思えるものなのです。

おそらくは、ストーリーというのは、よく言われるように旧約聖書で出尽くしたと言われていますので、それ以降は、それでもなお、芸術であるためにはどうすべきか、というのを考えたのが、物語芸術だったと思いますが、この映画を見て思ったのは、まるでストラヴィンスキーが新古典主義においてやった、古い音楽に不協和音をつけて解釈したのと同じように、使い古されたストーリーに様々な不協和音を載せることで新たな解釈を提示した作品だったなあ、ということです。

アカデミー賞にノミネートされまくっていて、その中で主演女優賞をジェリファー・ローレンスが撮っています。それほど、映画界で受け入れられた作品のようですが、私は、なんだか、ストラヴィンスキーを思い出しながら見ていました。

もちろん、最後まで目を離せないことは言うまでもないですし、これもまた定石とも言える終幕部に置いて、俳優の方々の素晴らしい演技、これはまるで《プルチネッラ》を素晴らしく演奏をする演奏者のようだとも言えるのですが、そうした演技も含めて、とてもいい映画だったなあ、というのが私の印象です。

ちなみに、最後のシーンは、素晴らしかったので、4回ほど繰り返し見てしまいました。何度見ても心が打たれます。

今日の一枚。

この映画の最後、Mistyが流れるんですが、古いアレンジでとても良かったのです。Apple Musicで探しましたが、見つからず、雰囲気の似ているシナトラを聞いていました。

しかし、シナトラにも弱点あり、というのを見つけ、驚きましたが、それを超えて余りあるエンタティナーぶりに脱帽しました。

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それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~


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9月末から始まったAmazonプライムビデオですが、今回初めて利用しましたが、これはなかなか便利です。データ通信に影響が出ないように、あらかじめWi-Fi環境でダウンロードしておけば、外出中にもビデオを見ることができます。2時間の映画であれば、私の場合、仕事場への行き帰りで見れてしまいます。もっとも、他にもやるべきことがたくさんありますので、映画だけというわけにもいかないところなのですが。

それで、とりあえず、面白そうな映画を、ということで《シェフ》という映画を見ました。なんだか、昔映画館に通っていた時期を思い出すような、あるいは、飛行機の中で映画を見るような、懐かしい気分になりながら楽しんだ感じです。

それにしても、ストーリの面白さが詰まった映画でした。確かに、途中何かしらの難しい箇所もあったにはせよ、最初から最後まで、スムーズなストーリー運びで、爽快でした。理想と現実のギャップあり、傭われ人の悲哀あり、男女のギャップがあり、恋愛模様があり、成功譚であり、という感じです。

いい映画だと、登場人物が、あたかも実在する人物であるように感じることがありますが、この映画の登場人物は、本当に輪郭を持った実在として感じることができたと思います。今朝、仕事場近くの駅に到着したところで丁度映画を見終わったのですが、今日1日、なにか主人公のアレクサンドルとジャッキーは今頃パリで何をしているだろう、なんてことを考えたりしました。それぐらい現実感あふれる映画でした。

よくある話で、芸術作品は、経済活動の添え物に過ぎない、ということが言われたりすると思います。ですが、実際には、逆なんじゃないか、とも思いました。もし、経済活動が不要なら、人間は芸術しかしないんじゃないか、と思ったり。それぐらい、この映画を見て、幸せな気分になリ、芸術の力のようなものに、畏れを抱いたような感じです。

それではまた。みなさまおやすみなさい。グーテナハトです。

ベルリンの記憶 またまた

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グッバイ・レーニンという映画がありました。2003年の映画です。

ベルリンの壁が崩れて14年あまりのころの作品です。

ネタバレになるのであまり触れませんが、たしか熱心な党員だった母親が心臓発作を起こしてしまい、過度なショックを与えないように、息子がベルリンの壁が崩壊した事実を伏せるため活躍する、という話だったかと。

舞台は壁崩壊直後の東ベルリンです。

とても秀逸な映画で、しかもめちゃくちゃおもしろくて、映画館で身をよじって笑いました。本当におすすめの映画。

たとえば、母親がテレビを見るわけですが、テレビでは壁崩壊のニュースがひっきりなしに流れます。ですので、テレビニュースを捏造して、壁崩壊の事実を母親に知らせないようにするんですが、このパロデイ精神が本当に面白くて面白くて。

東ベルリンに西ベルリン市民が訪れるわけですが、これを「西ドイツが崩壊して東ドイツに市民が逃げてきた」みたいな説明をするニュースを創ったり、まあ奇想天外で面白いです。

とにかく、壁の中に囲われていた人々が、必死になって、自由を渇望し謳歌するというベクトルが伝わってきました。きっと当時の我々には想像のつかないことだったと思います。

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夕闇のブランデンブルク門。デジカメを初めて買ったころなので下手くそな写真ですが。当時の街の様子はつかめるかもしれません。

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こちらは、ソヴィエト連邦との友好を記念したモニュメント。今もあるのでしょうかね。。

目に見える壁ならまだよいのでしょう。壁が透明なのが、壁崩壊後の壁のあり方なのかも、などとおもいます。

そうした壁は、もともとあるものでもあり、新たに創られたものでもあり、あるものは有用で、あるものは有害なものでしょうね。

仕事場に同僚が出ていて、気もそぞろな土曜日の夜です。みなさま、どうかお身体にお気をつけて。

ではグーテナハトです。

禁酒のはて──オーベルニュの歌

いや、もう、この二週間禁酒していましたが、おかげでアルコール耐性がすっかり落ちてしまいました。
昨日は仕事関連の飲みだったのですが、一次会の前のゼロ次会に参加し、一次会、二次会と5時間半飲み続けた結果、今朝はフラフラ。仕事場に行ってみると、みなさんも大変なことになっていました。
しばらくアルコールは本当にやめます。
というわけで、今日はこちらを。ただれた空気はオーヴェルニュの歌で一掃です。

カントルーブ:オーヴェルニュの歌
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私は、アップショウ、キリ・テ・カナワ、ダヴラツの三枚聴きましたが、やはりアップショウが一番かもしれません。ケント・ナガノという日系人指揮者とアメリカ人というフランス人ではない音楽家の演奏なので、普遍的な音楽に消化しているのかもしれない、などと思います。他の演奏の中には、本当に田舎の土臭い感じがする演奏もあり、それはそれでいいのですけれど、アルコールにつかれたあとなどはアップショウ盤がいいですね。
私は、どうもこの盤を聴くとこの映画を思い出します。
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辻先生が進めていた映画でした。南フランスの夏の雰囲気が伝わってくる映画です。マルセルという少年の家族がプロヴァンスで過ごす夏休みを描いた作品です。観たのは10年以上前ですが、今でも折にふれて思い出します。あの強い日差しに灼かれた土の色が忘れられないです。それを観て、セザンヌを思い出すのですね。どこか日本の美術館でみた作品なんですがよく思い出せません。ただ、以下の絵のように土の色がとても美しかったのです。「マルセルの夏」でもやはりこういう土の色が出てきて、セザンヌの色彩とつながったのを記憶しています。

きっとセザンヌやゴッホが過ごした南フランスはこんなかんじだったのかなあ、などと想像します。オーヴェルニュとプロヴァンスは少し離れていますけれどね。
では、グーテナハトです。

若きリーダーはカーク船長に学ぼう

はじめに


先日、スタート・レック イントゥー・ザ・ダークネスを見てきました。
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スタートレック


お恥ずかしいことに、この歳になってはじめてスタートレックを見たことになります。もちろん、カーク船長やスポック、USSエンタープライズについては名前だけは知っていましたけれど。
色々調べていると、どうやら、スター・トレックの元ネタは、ホンブロワーシリーズから来ているのですね。私はホンブロワーシリーズを高校時代に愛読していましたし、2002年ごろにドラマ化されたものも見ています。
おそらくは、当初のスタートレックはこのようなアクションものではなかったようですが、このご時世ですので、テンポのよいアクション映画に仕上がっていました。
TVドラマシリーズがオリジナルですが、そのドラマシリーズの前史を壮大に描いたのが本作です。悪役ベネディクト・カンバーバッチが異才っぷりを大いに見せてくれますよ。

絶叫の3D


特筆すべきは、3Dであったということです。
ここまで遠近感がしっかりでているとは思いませんでした。
そもそも、映画の前のサンプル映像で、目の前にオブジェクトが現れたのには驚きました。目と鼻の先まで映像が迫ってきますからね。驚きました。
もちろん本編も素晴らしく、飛んでくる岩に思わず身をかがめましたから。
もう2Dは見られないかも。

若きリーダはカーク船長に学ぼう


あとは、伝説的登場人物であるカーク船長ですね。ホーンブロワーのように、若くしてキャプテンに抜擢されますので、それはもういろいろと苦労します。ホーンブロワーの場合、先輩が副長ですし、カーク船長も、目上の人物を使っていかなくてはならない。そういう苦労のようなもんもが端々にでていて、見ていて面白かったです。
まあ、どんな組織も人間相手なので共通するものは多々有ります。若きリーダーはカーク船長をみて研究するといいかも。

興味深いシーン


宿敵カーンの協力を求めるシーンでこんな面白いやりとりが。
カーク船長
「君の部下の安全を私が保証する」
カーン
「自分の部下の安全を守れない男が私の部下の安全を保証するのか」
なるほど。。。

終わりに


トレッキー(スタートレックファン)になるかどうか思案中です。なりたいんですが、映像見る暇があるかどうか。
では、グーテナハト。

短すぎる2時間──宮崎駿《風立ちぬ》

はじめに


2013-08-04 17.43 のイメージ
宮崎駿監督《風立ちぬ》を見てきました。一言で言うと、素晴らしい映画です。是非見に行かれることをおすすめします。
ですが、一般的にヒットするか、というとそこは疑問に思いました。ただ、それにはしかるべき理由があります。
あらすじをかかず、あえて感想のみを書いてみることにします。

あまりにも充実した内容


思い返せば返すほど内容が濃すぎて、一言二言で語り尽くすことのできないものです。私は、この内容を二時間強にまとめること自体が無理難題なのだと考えました。この五倍は必要なのかもしれません。十時間以上かかる長編ドラマではないかと思うのです。
これは一つ一つの場面が短縮されすぎていて、シノプシスを観ているようにも思えるからです。あるいは映画というメディアの限界なのかもしれません。この内容は長編小説です。あまり長編なのです。含まれているエピソードの多様性もさることながら、そこに込められたメッセージの大きさ、重さを表現するには、背景説明や概念が必要です。ですが、それは映像で描くという行為の限界なのでしょう。

わかりにくさという宿命


ですので、映画としては、良い意味で「わかりにくい」とも言えます。
航空機や戦前の軍事情勢に関する予備知識がなければ十全に楽しめるとはいえませんし、頻繁に登場する文学を前提とした仕掛けは、分かる人には分かるのですが、おそらくは気がつかない観客もいるはずです。
たとえば、トーマス・マンの《魔の山》を敷衍したセリフや、「カストルプ氏」の由来とか、《魔の山》にも登場する横臥療法がでてくるなど、個人的には面白みがあります。また、私が分からない概念や仕掛けがまだいくつも埋めこまれているはずです。
気が付かない事自体は問題でもなんでもありません。ですが、それが「わかりにくさ」のひとつの要因になりうることも確かだと思います。
わかりにくさのもう一つの原因としては、なんども夢の場面が登場することかもしれません。文学作品において夢ほど語ることも解釈も難しいものはないからです。脈絡などが一切剥ぎ取られたイメージの連続の難しさは、たとえば《2001年宇宙の旅》の最後の場面などを想像するといいかもしれません。あるいは、夏目漱石の《夢十夜》や《草枕》などの夢語りの難しさなどです。ただ、夢でないと語れない部分があったのは事実です。カプリーニとの交流は夢でなければ不可能だからです。

男性原理に拠るヒロイン


菜穂子というヒロインの存在が、私の中で一番引っかかっています。
ともすれば、結核に侵され薄命である、という戦前戦中文学のステレオタイプを敷衍しているといえます。作られているエピソードは、既視感のあるもの。結核に侵されたヒロインが、無理をして夫に尽くすが、その後命を落とすという構造は、堀辰雄はもちろん、武者小路実篤の《愛と死》などにも見られます。サナトリウムという言葉は文学的には極めて魅力的です
もちろんそれは堀辰雄という引用元があるからこそなのです。
ですが、私はどうもそこに男原理の身勝手さのようなものを感じずにいられないのです。薄命でありながら、夫につくし愛する。だが、夫は仕事に心血を注ぐ。あまりに恣意的な女性像を押し付けているように思えるわけです。
ただ、そうとわかりながらも、宮崎駿の作戦が完璧なものである、ということを認めないわけにはいかないのです。
この既視感は、引用によって正当化されていますし、それを引用するという行為、キュレーションという芸術的行為自体は賞賛されるべきです。また、それをさらに芸術へと昇華させた、ということが最も素晴らしいことです。
私がこの映画を素晴らしいものであると評価する理由の一つはここにあります。
ただ、恋愛の場面は既視感とともに、青春の面映さというか、わざとらしさというか、甘さというか、なにか常日頃においてはお目にかからないものを見てしまい、かんべんしてほしいという気分を持ったのも確かです。
しかしながら、映画をみて一日たっても感じるこの名状しがたい感覚は、おそらくはそのヒロインの存在があるわけです。それは悪いものではありません。宮崎監督の作戦にはめられてしまった悔しさに近いものがあるのでしょう。

現代とのつながり


また、現代批評が幾重にもこまられているのは言うまでもありません。第二次世界大戦前の日本と現代日本の抱える問題の共通性もあるでしょう。また、震災の場面の現代的意味を捉えることも大切です。描かれる一部の日本人の姿にアイロニーを感じる部分が多々ありました。
それからもう一つ。現在、三菱航空機はMRJ(三菱リージョナルジェットの略)という国産ジェット旅客機を開発中です。本来昨年初飛行の予定でしたが、延期され、今年初飛行となるはずでした。ところが、つい先ごろ、再び延期となり、初飛行は来年に持ち越されます。この三菱航空機を舞台としているのがこの映画です。私はこれはひとつのMRJへの応援ではないか、とも受け取りました。三菱の名前は大々的に映画の中に登場しますので。

おわりに


とにかく、すごい映画であることは確かです。私はもう一度見に行くかもしれません。それほど意図が濃密な作品だったといえます。解釈多様性こそ芸術である理由の一つです。この映画も芸術の一つに数えられます。まだまだ考えれば出てくるものはたくさんあります。これで考えることをやめるつもりもありません。
あとは堀辰雄を読み直します。20年ほど前に読んだだけですので。
みなさんも是非劇場でご覧になってください。