沈まぬ太陽 第一巻 アフリカ編その1

今更ですが、「沈まぬ太陽 (1)アフリカ編」を読みました。
私は、基本的にはドラマはあまり見ません。最近は映画も見なくなってしまった。なので、頼りとなるプロットのネタの仕入れもとは、既存の小説か、知り合いが教えてくださることぐらいでしょうかね。
この本は、1960年代から1970年代のJALがモデルになっていて、今読むと、まあ右肩上がりの時代なので何がしかの未来への希望はあったとはいえ、今と比べて、もっともっと劣悪な労働環境だったのだなあ、という感じ。昔も今も大変です。
書かれていることは、JALにとって、相当厳しい批判的な内容でしたので、険悪な空気となったようで、当時連載していた新潮社の雑誌をJALは積み込まなかったそうです。
しかし、まあ、ここに書かれていることがおおむね真実だとしたら、まあ、今のていたらくぶりはさもありなむ、という感じ。まさに事業仕分けで滅多斬りにすべき内容。
しかし、描かれていることはアクチュアルなもの。普遍性をきちんと持っている。組織と個人の問題、自己保身に走る情けない男たち。信念を曲げることなく振る舞おうとすれば、無邪気な奴だと陰口をたたかれ、批判を浴びるという蟻地獄。
もちろん小説ですから、すべて本当なわけはないんですけれど、明らかに取材しないと分からないことがたくさん含まれていて、リアリティはかなり高いです。
カラチの描写は実体験か取材をしなければ書くことができない内容でした。昔のパキスタンって、あんなんだったんですねえ。それから、飛行機の描写が少いのが残念ですが、一カ所だけ出てきました。ILSを掴んで着陸しようとしたDC-8がゴー・アラウンドする、つまり着陸復行するシーンでした。あれも取材が無いとできないはず。
とりあえずは二巻目以降でどういう動きになるのかが楽しみです。御巣鷹編、というのもあって、JALにしてみれば目の上のたんこぶの様な小説ですねえ。
小説の機能として、バルザックやらの時代から、現実認識や伝聞の媒体である、ということが言えましょうが、この小説は、そうした伝聞告発的な要素もありますね。もちろんそれだけではありませんが。
ただ言えることは、このような小説を新人作家が書いたとしても、評価されることはないだろう、ということ。山崎豊子さんのビジネスモデルなんですから、二匹目のドジョウはなんとやら、だとおもいます。
もちろん最後まで読んで、主人公がどのような運命をたどるのか、興味はつきません。次の巻がが楽しみです。