ベルリンフィルのヴァルトビューネ、フレミングのカプリッチョがいい!

世の中とはままならぬもの。さりとて、打ち捨てるには惜しいほどの美しさに満ちている。だからこそ、世の背理に耐え、艱難を忍び、その向こう側にある彼岸へのまなざしを保持せねばならぬ。
昨夜、今年のベルリンフィルのヴァルトビューネの映像を見ました。フレミングが登場するということで、シュトラウスを歌ってないかなあ、と期待していたのですが、やっぱり歌っていました。それも私がもっとも愛する曲のひとつである「カプリッチョ」終幕の場面。フレミングの「カプリッチョ」はフレミング名義のオムニバス盤で、エッシェンバッハと組んで歌っているものでしたが、ベルリンフィルをバックにフレミングの、まるで伯爵夫人マドレーヌが乗り移ったかのような気迫にあふれた美しく力強く、それでいて正確無比な歌唱を聞いて、久々にゾクゾクしました。この曲、半年までに聴いていたら、涙があふれて大変なことになっていたはず。それが、失われたのが今年の三月以降だと思いますが、昨夜は調子が少し戻ってきた感触がありました。でもまだもう少し。しかし、ベルリンフィルは巧いですねえ。ホルンのドールもよかったですし。コンマス樫本さんが、コンマス席の左隣に座っていました。時代は変わっているんですね。
なんだか最近呆けているのか、絶望しているのか、よく分かりませんが、なんともいえぬ虚無感や無常感に苛まれている感じです。とはいえ、6月に「鹿鳴館」を聴いてから、オペラの実演はお預けですので、耳がなまってしまっているのかも知れません。私の2010年/2011年シーズンは、10月11日の「アラベラ」で幕を開けます。そうすると、また少し何かが変わってくるかもしれません。努力なしに果汁を飲むことは許されませんので。