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Tsuji

Haru
辻邦生全集〈9〉小説9
辻邦生全集〈9〉小説9
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春の戴冠を読んでいます。ようやく上巻の半分ぐらいまで来ました。前回読んだときよりも読む速度が早まった感じ。おそらくは読書時間が昔より増えたからだと思います。というのも、昔は会社の近くに住んでいましたので、通勤時間に本を読むと言うことができなかったからです。家が近いと、遅くまで仕事をしてしまいがちですし、疲れていると部屋で本を読もうにも、臥せってしまうことが多かったのでした。当時は明け方まで働くこともありましたからね。それに比べれば最近は早く帰らせて貰っています。ともかく、そう言う具合で読み進めているのですが、二回目ということもあって、内容を朧気にも覚えていますし、あるいは、覚えのないエピソードに遭遇して、嬉しくなったりしています。 ちょっとしたことですが、印象的なところ。マルコ・ヴェスプッチとシモネッタの婚礼の場面で、知り合いの親方がフェデリゴに目をつぶって遠くから挨拶をするシーンがあるのですよ。こんなシーンです。
叔父カルロの競争相手の毛織物製造業者ベンボも片眼をつぶって、遠くから私へ挨拶した。
春の戴冠 144頁 ここを読んでため息が出ましたよ。そうそう、そうなんですよ。日本人は目をつぶって挨拶する風習などあまりありませんね。もしそんなことをしたら気障な奴、と言われるに違いないのです。ですが、外国ではありますよね。映画でも観ますし、旅行中も見たことがあるような気がします。日本にはない風習であるからこそ、この一文を書かれたとことで、大きな現実性が付加されるわけですね。

語り手であるフェデリゴは、商人マッテオの息子です。マッテオは、事業に砕身しながらも、夜にはギリシア語で古典を読むという習慣を持っています。マッテオは、商売を営む現実人でありながら、ギリシア古典に親しむ理想的な人文主義者でもあるのです。マッテオのようなスタンスを撮る人間がフィオレンツァには多いのだ、という設定になっています。

現実と理想とのバランスに於いて生きるというスタイルは、「嵯峨野明月記」の角倉素庵の生き方と似ていますね。彼もやはり人文の世界で典籍に親しみながらも、ある時決意して家業に力を注ぐようになる。その二つのバランスを苦しみながらもやり遂げようとする。マッテオ達と同じなのです。その二つの世界は相容れないものではないのだ、とフェデリゴに語るのが、ルネサンス期のプラトン哲学者のフィチーノです。彼は、二つの世界を一つにまとめることが大事なのであって、現実に生きる人間こそ、理想の世界を忘れてはならないし、理想の世界に生きる人間も現実の世界を忘れてはならないのです。現実にぶつかって、株取引でもうけたり、営業成績ナンバーワンいなろうとも、一度、人は死ぬのだという宿命にぶち当たったときに、それを乗り越えるためには、一度理想世界、人文界を見遣らずには居られなくなるのだ、というわけです。

私たちもそうですよね。生きるために会社で働かなければならない。利益を上げるためには、ある種のカラクリを使わねばならない。それが善意にもとるものだったとしてもです。それでも、眼差しは本に向いていたり、音楽に向いていたり、哲学に向いていたりする。そのバランスをとることに苦慮する毎日を送っている。そうしたアクチュアルな問題をマッテオの生き様に投影させている。そう言うことなのだと思います。

一介の会社員に過ぎない私などがこういうテーマを読むと、どうしても自分に投影して見ざるを得なくなります。辻邦生師自体、大学院に通いながらも、日産ディーゼルで嘱託として働いていたと言うこともあったり、戦争が終って、文学の力に疑問を持ち、実務的な世界にあこがれていた時代があった、ということもあって、現実と理想のバランスのテーマは頻出していると思います。このテーマを考えてくれているということが、僕が辻邦生師を愛する理由の一つであると思います。

すこし、現実と理想を安易に使用した感もありますが、そんなことを思いながら読んでいます。
今回は、本の読み方も工夫しています。気になるところには付箋を入れていますし、気になるエピソードはなんとか書き出そうとしています。こうした長編を読むのは、勢いで読んでしまいがちなところもあるのですが、あとで全体を把握するためには、備忘録的なものがあった方が良いなあ、と思っています。
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福田和也さんの「ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法」では、本に折り目を付けて、あとから書き抜くという方法が紹介されていますが、これも試してみたのですが、私の場合読んでいるときに、すでに関連する物事が沸々と沸き上がってきて、すぐにメモをしないと忘れてしまうのですね。本来なら、本の中に書き込めばいいのですが(現に書き込んでいる本もありますが)、さすがに重厚な単行本に書き込みをする勇気をまだ持てずにいます。本来なら、すぐにでも書き込むべきなのでしょうけれど。あるいは、折り目を付けてしまうのが良いのかもしれませんが。それが無理なので、やむなく付箋を貼りつつ、メモをとりながら本を読むようにしています。もっと言い読み方があればよいのですが、昔から試行錯誤しながらまだ迷いがぬぐえません。

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