American Literature

老人と海 (光文社古典新訳文庫)
光文社 (2014-09-19)
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今日、読み終わりました。

というか、ストーリーと結末は知っているんですが、先が気になって仕方がなくて、ついつい飛ばし読みのように速読してしまいました。前にも書きましたが、高校時代には何を読んでいたのか。訳が良くなったのかもしれないです。

それにしても、語りの手法が本当に巧みで、例えば、海に出て二日目に意識が混濁してくるあたりの筆致が素晴らしく、本当に唸ってしまいました。あとは、パースペクティブがずいぶん動く場面があって、そのスピード感に酔いました。

※ もっとも、こうしてわかってきたからといって、何があるのか、という問題はあるのです。懐古調には懐疑的でもあります。

ストーリの内容もそうですし、あるいは方法論的な部分も含めて、ノーベル文学賞受賞作品への畏れみたいなものを感じたり。

Kindleなので、隙間時間でずいぶんと勉強になります。どうも最近、まとまった時間をとって本を読むとか、そういうことができなくて困っているのですが、Kindleなら、iPhoneを通して通勤時間中や食事をしながらといったタイミングで読めますので、ずいぶんと捗るような気がします。前にも書いたと思いますが、iPodが出てきた時の感覚と似ているのかも、と思います。

明日で今週のウィークデーは終わり。頑張らないと。

ではおやすみなさい。グーテナハトです。

American Literature

老人と海 (光文社古典新訳文庫)
光文社 (2014-09-19)
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今日も「老人と海」を少しずつ。この魚に引っ張られて、長い間海上で過ごす、ということ自体が、ありそうで、なさそうで、という微妙なところで、本当に素晴らしいなあ、と思います。釣った魚を食料にし、魚と駆け引きしながら、野球のことを夢想するというなんとも言えないカッコよさ。高校生の時にはわからなかった境地かも。

ヘミングウェイ、あまり読んでなかったんですが、これはもう、チャンドラーを通じて村上春樹に伝わっているんだろうなあ、なんてことを思ったり。

音楽はあまり聞けず。カラヤンの《トリスタンとイゾルデ》がApple Musicで聴けたので少し聞いたというところか。

帰宅して食事をしていると、はがきが来ているという。なんと、某試験の午前試験の一部が合格していたらしく、次回の本試験が楽に受けられるという状況になっていることがわかり、ただただありがたい。

明日も朝から会議となりましたので、今日はそろそろ休みます。おやすみなさい。グーテナハトです。

American Literature,Tsuji Kunio

「老人と海」。高校三年の読書感想文の課題でした。あの時は、半世紀前の翻訳が家にあったので、そちらを読んだのですが、ずいぶん苦労したおぼえがあります。

で、こちら。先月、Kindle版の半額セールをやっていたので買っていたのでした。

老人と海 (光文社古典新訳文庫)
光文社 (2014-09-19)
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読み始めると、これがもうなんだか本当に面白いのですね。

まだ半分ほどしか読んでいませんが、本当に巨大な小説だということがわかりました。

辻邦生の「ある生涯の七つの場所」で、主人公の私とその恋人のエマニュエルの会話が実に素敵なんですが、たしかそれはヘミングウェイの影響だということを読んだことがあります。「老人と海」でも、冒頭で、老人と少年の掛け合いがありますが、これも本当に素敵です。

それから、こればっかりは、書くと陳腐になってしまうのですが、自然と人間の関係というものがあらゆる意味ですごくよくわかります。おそらく、この「感じ」を表すためには、読み手も一つ小説を書かなければならない、とすら思いました。

また、今のところ、ですが、この「老人と海」すら辻邦生の「ある生涯の七つの場所」の一つの短編であるかのような気がします。

そうか。

「ある生涯の七つの場所」はスペイン戦争が一つのモチーフですが、あれはヘミングウェイへのオマージュだったということなんだなあ、と。

当たり前すぎて、今まで書くことすらなかったことかもしれないです。あるいは、今初めて気がついたのか。記憶はうつろいゆくものですから、どっちなのかはわかりません。

「仕事」の合間の隙間時間で、iPhoneを開いてKindleで読んでいますが、こういう読書習慣はこの数年のものなんだろうなあ、と思いました。

それでは、みなさまおやすみなさい。グーテナハトです。

American Literature,Book,Miscellaneous,SF

先週から、ハインラインを二冊読みました。学生時代に読むべき本でした。今更読んで本当に残念。
今回読んだのは「スターファイター」と「銀河市民」です。いずれも、実に古典的な物語構成で、大変勉強になりました。

スターファイター (創元推理文庫)
ロバート・A. ハインライン
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「大宇宙の少年」という題名で新訳も出ているようです。

大宇宙の少年 (創元SF文庫 ハ 1-7)
ロバート A.ハインライン
東京創元社
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「スターファイター」は、月旅行に憧れる高校生が懸賞で偶然手に入れた宇宙服を使っていたところ、異星人にさらわれ、異星人の月面基地に監禁されてしまうという物語。脱出、捕縛、救出、どんでん返し、と物語の王道を歩んでいます。ですが、その意外性や、スケールの大きさ、人類一般への深い洞察、科学的技術的に緻密な考察など、本当に物語の喜びが横溢している作品です。

銀河市民 (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)
ロバート・A・ハインライン
早川書房
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「銀河市民」も、奴隷の少年ソービーのビルドゥングス・ロマンであり、貴種流離譚という物語の王道です。乞食に拾われたソービーは自由商人の中で頭角をあらわします。実のところ、彼は世界最大級の大富豪の跡取りで、奴隷制度根絶のために力を注ぐというストーリー。こちらも本当に面白かったですが、本当はもっともっと長い物語のはずで、おそらくは制限などによってかききれなかったか、ハインラインが飽きてしまったかのどちらかだと思いました。あるいは日本語訳が抄訳なのかもしれません。

ちなみに、会社の若い皆さんに「ハインラインしっている?」と聴いたところ、誰も知りませんでした。私の少し上の先輩に聴いてみたところ、ご存知でした。「夏の扉」を読まれたそうです。

もっとも、「スターファイター」も「銀河市民」も両方とも1950年代の作品です。いまや古典だし、読まれることも少ないのですかね。少しさびしいような残念なような。でも「宇宙の戦士」は機動戦士ガンダムの元ネタではないかと言われていますので、現代日本のアニメの源流の一つがハインラインともいえるのですけれどね。

今日は家族通院のため、割当てられた社命公休をいただきました。考えごとをしたり、IT関連の勉強をしたり、書評を書いたりとまあまあ生産的な一日でした。暑い一日でしたが皆様はいかがお過ごしでしたでしょうか。

それではおやすみなさい。

American Literature,Book

いやあ、恐ろしい。来月早々、飛行機に乗る予定ですが、恐ろしくなってきました。
「高度41,000フィート 燃料ゼロ! 」という本の中のエピソードです。ヤード・ポンド法からメートル法へ切り替わってまもないカナダにおける、信じられないミス。当時最新鋭だったボーイング767の燃料計の破損が幾重ものエラーチェーンを生み出し、なんと、目的地半ばにして燃料切れを起こすというストーリー。都内への出張時間を利用して、一日で読み干しました。すごかったですよ。。。
一番の白眉が、この着陸シーン。度肝を抜かれます。ドキュメンタリー番組がYou tubeにあがっていて、二週間ほど前、遮二無二&刮目して見ました。これ、操縦するものにとっては、信じがたいぐらいの神業なんですよねえ。

繰り返しになりますが、まあ色々原因があります。燃料計の故障からはじまり、ヤード・ポンド法からメートル法への切り替えにきちんと対応できていなかったことや、ボーイング767から、従来の三人乗務機から二人乗務機となり、責任所在が不明確になってしまったこと、その他様々な偶然……。
この本は、そうした、事故の背景から、事故機に乗り合わせた多くの方々への丁寧な取材が巧くまとめ上げられた秀逸なノンフィクションです。上述のYoutubeの動画の最後のあたりににわかには信じがたい驚異の映像があります。飛行機ってこんなに動けるんだ、みたいな。
最終的には、全員が奇跡的に助かるというハッピー・ストーリーではあるのですが、これを読んでしまうと、恐ろしさが先に立ちます。
それにしてもキャプテンのピアソン氏はすごいですよ。偉大すぎる。
ところで、昨今の航空事故事情ですが、百万フライトで、数件しか全損事故は起きてはいません。また、旧東側や発展途上国の航空会社で事故が多いというデータもありますので、航空会社を選べば、事故に遭う確率をさらに下げることが出来ましょう。
また日本の航空会社の死亡事故はこの十数年間は起きていません。
一番最近の死亡事故は、(wikiによると)日本航空MD-11型機が1997年に乱気流に巻き込まれ客室乗務員一名が亡くなったという事故以来のはず。これは、乱気流という原因もありますが、MD-11という飛行機の特性もあるようです。この飛行機は操縦するのが難しいのです。戦闘機的な設計思想で作られているそうです。ですから、旅客型MD-11はほとんど姿を消しました。また、昨年、成田空港でMD-11が着陸に失敗し、成田空港初の全損事故となったのも記憶に新しいところ(MD-11は危険です)。
また、私がよくお世話になっていた全日空でいうと、最後の死亡事故は1971年の雫石上空における自衛隊機との空中衝突事故以来ありません。
ちなみに、来月搭乗する機種は、ボーイング777とボーイング747-400。
ですので、来月のフライトはきっと安全で楽しいものとなりましょう。楽しみです(って、すこし不安だけど)

American Literature

偽りの書、読了。
これも、やはり「ダヴィンチコード」や「天使と悪魔」、「ロストシンボル」などのダン・ブラウンものとよく似た構造です。
この本でテーマとなるのは、フリーメイソンの失われた秘密の言葉でもなく、シェイクスピアの未発見原稿でもなく、カインがアベルを殺した時に使った凶器を捜すというもの。
コミック版スーパーマンの原作者の父親が、ロシア兵だった頃に、スウェーデンで手に入れたカインから伝わる神から授けられた秘密の奥義を手に入れたという設定です。主人公のカルヴァンは、長い間生き別れていた父親と再会を果たすのですが、父親は秘宝を運ぶトレーラの運転手でした。その秘宝を手にいれんとする「預言者」や「判事」と、元警察官のエリス。巻き込まれてしまったカルヴァンは、否応なく秘宝の探求に巻き込まれてしまう……。
話はあれよと進んで行きますが、作者のペースが読者を置いて行くぐらいハイスピードなので、少し戸惑いもありますが、アイディアはなかなか面白いものでした。スーパーマンと、カインとアベルの話を結びつけるなんて、なかなか出来ることじゃありません。
それにしても、小説とは言え、学術的でないにしてもきちんとしたリサーチは必要ですね。この小説もやはりオカルト系ですが、日本人作家で言うと、高橋克彦さんなどを真っ先に思い出します。高校時代にはどっぷりと高橋克彦さんにつかっていた時期もありました。懐かしい。と言うわけで、現在、高橋克彦さんの本を取り寄せ中。楽しみ。

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先日まで、辻邦生の高雅な世界に沈潜していたのですが、今週に入って、くだんの本を読み始めました。その名も「シェイクスピア・シークレット」。
シェイクスピアの正体への疑いが色々あるのは知っていましたが、実に興味深いのです。クリストファー・マーロウとか、フランシス・ベーコンがシェイクスピアの名を借りて戯曲を書いていたのではないか、という話しにとどまりません。舞台はイギリスからボストンに移り、それからユタ州、ニューメキシコ州、ワシントンDCへと飛び回ります。
主人公の女性とそれを助ける頼もしい従者という構造は、多分に逆ダン・ブラウン的ですが、それでもパターンは美しいのです。
まだ最後まで読み終わっていませんが、予想通りのどんでん返しに少しほくそ笑んでしまいました。それから、固有名詞が相当出てきますので、さらさらと上っ面で読んではいけません。研究書を読むぐらい注意深くないと。もっとも、とびっきり面白い研究書なのですけれど。
この本を読む前に、是非こちらのシェイクスピア別人説のウィキ記事をおすすめします。昨夜遅くまでこの記事を読んでいたのですが、これだけでも面白い。そして、なぜか恐怖を感じるのです。
“http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%A2%E5%88%A5%E4%BA%BA%E8%AA%AC":http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%A2%E5%88%A5%E4%BA%BA%E8%AA%AC

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予想通り、本日読み終わりました。「ロスト・シンボル」。ちょっと意外な感想を持ちました。
最初は、娯楽小説を読む気満々で、読んでいて、たしかにそう言う目的は達せられました。それぐらい面白い。ちりばめられたある種衒学的とでも言われてしまいそうなほど、トリビアがたくさんで、目もくらむばかりの万華鏡なんですが、結末に至るにつれて、私の中の古い血が騒ぎ出した感じ。
昔、リッケルトという哲学者の本を読んでいましたが、彼はこういうことを言う(私の誤解でなければ)。
_昨日の私と、今の私は、時間的に隔絶されている。にもかかわらず、昨日の私と、今の私は、同じものとして何かしらの結びつきがある。記憶があったり、考えが似通っていたり。時間が経ったからといって、別人であるということは言い難い(そうも言えない場合もあるけれど)。_
_それと同様に、空間的に隔絶されている人間の間にも何らかの関連性があるのではないか。だからこそ、相互理解が可能なのである。それを可能にせしめているのは、人間の意識を極度に抽象化した意識一般Bewußtsein Überhauptとも言えるものなのである。_
かなり、私の主観が入っているけれど、こういうことを言っていたはず。「認識の対象」という本ですが。
うーん、私は、さっきまで、このリッケルトの考え方について行けなかったのですよ。
時間と空間を同列に扱うあたりは、あまりに純朴なカント主義者という感じがして、この考えを理解したり、体験したりすることはなかったと思っていたんですが、「ロスト・シンボル」を読んで、ちょっと考え方が変わった気がします。
他人同士なんて、全く理解できないと思っていたけれど、それでもなお、その可能性を求めて、哲学を始めたわけですが、結局答えは見いだせなかった。なぜなら、そこに科学的な方法論を確立するためだけの、方法論としての哲学、基礎付け学問としての哲学しか見いだせなかったから。
それは内容のない空疎なものに思えてきたという感もある。もちろん、僕の哲学センスがないと言うだけなのかもしれないし、勉強不足だったとも言えるけれど。もう少し、内容まで踏み込んでも良かったはず。あまりに形式にこだわっていたので。
ここでいう形式とは、カントで言う感性と悟性で、内容というのは、謎のもの。哲学において、内容を語るのは危険だと思っていましたから。語った時点で、それは宗教となり、僕らの言葉で言うと「抹香臭い」考えになってしまう。それは、ダークサイドに落ちるのと同じぐらい忌避されていたので。少なくとも僕の周りではそうだった気がする。だから、形式のほうへと逃げ込んでいって、気づいたら何もなかった、という感じだった気がする。
でも、もしかしたら、リッケルトの言うように、空間を隔絶していたとしても、なにかしらつながりはあるのかもしれない。そんな非科学的なこと、とか言っているのは、単なる偏った態度なのでないか。哲学を放りだしてしまったのは少し残念だったのかもしれない。
「ロスト・シンボル」で教えられるまでもなく、科学を押し進めた先に、なんらか宗教的なものが存在するというのは、予備知識としてあったけれども、それを自分のところまで引き下げて考えたことはなかったんだが、もう少し自分のところまで引き下げて考えてもいいのではないか。
何を言っているのか分からないかもしれませんが、結論を一言で言うと、単なる娯楽小説以上の体験が出来たと言うこと。
最近、辻邦生の永遠性の問題とか、一回性の問題とか、そういうことを考えている時期だったので、かなりの刺激を受けました。アマゾンの評価では、賛否両論あるようですが、まあ、私としては大変貴重な本に出会えた、と思ったのでありました。

American Literature

うふふふふ。ようやく、順番が回ってきました「ロスト・シンボル」。上巻を一日半で読み終え、目下、下巻を読破中。
うーむ、パタンは同じだが、水戸黄門と同じで、パターンを愛せるむきには素晴らしい上下巻です。
若干の歳をくってしまったラングドン博士は、以前よりも太りやすい体質になったらしいけれど、頭脳明晰で、国家を揺るがす(?)フリーメーソンの失われたピラミッドの謎を解くべく、奔走どころか、CIAまでも敵に回して大活躍をしております。
フリー・メイソンなんて、もう珍しくはないけれど、叩けばいろいろ出てくるものなのですね。小説に書いてあることがすべて真実だとは思いませんが、すべてがウソでもないことは、大人でなくても分かります。
しかし、「ダヴィンチコード」、「天使と悪魔」を読んで、「ロスト・シンボル」へ至ると、先にも述べたようにパターン化という面も強いのですが、それでも、ちりばめられた知識群を、垂涎しつつ堪能する悦びは、またとないもの。会社の行き帰りが楽しくて仕方がありません。
でも、もっと大事なこともあるんだけれど。。
きっと、明日読み終わると思います。
あ、今日は、シュナイダー指揮の「ローエングリン」を聞き続けました。これもこれで素晴らしいんだよなあ。
こんばんは、バイエルン放送協会で、バイロイト音楽祭の「ヴァルキューレ」が放送されます。リンダ・ワトソン、You Tubeで観たんですが、すごいっすねえ。今から楽しみ。ちゃんと録れると良いのですけれど。

American Literature

今朝は四時半に目を覚ましました。あわててテレビをつけるのだが、メガネをかけていないので、点数がよく見えません。目を瞬いてとっくりとみると、あれれ、勝っているじゃないですか! 後半始まったばかり。まだわからないけれど、2点差。すごいなあ。
というわけで、少し早めの朝食をとりながら、日本の勝利を鑑賞しました。次はパラグアイですか。がんばって欲しい。

あなたに不利な証拠としてを読もう

で、先日から読んでいる「あなたに不利な証拠として」のことを。この本は、都心で売っているBig Issueの書評で紹介されていたもの。うちの奥さんが読んでみたら、と薦めてくれたので、早速入手してみたんですが、いやあ、すごいですわ。ここまでの強靭な粘りを持った小説家に出会ったのは久しぶりです。

著者横顔

著者はローリー・リン・ドラモンド。名前だけでは、一瞬、男性か女性かわからない。ローリーとくれば、ローリーですからね。でもミドルネームのリンは女性の名前であることに気づく。だが、この方の経歴がすごい。女性でありながら制服警官として5年間勤務し、30歳で交通事故にあって辞職し、ルイジアナ州立大学で英語の学士号とクリエイティブ・ライティングの修士号を取得した。現在は大学で教鞭をとりながら親筆活動を続けている。

構成と内容

この本、キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラという5人の女性をめぐるオムニバス形式の中短編。やっぱり、女性作家はすごい。ひれ伏すのみ。
たとえば、執拗なまでの完璧な描写を無限大に繰り出してくるし、難しいはずの「匂い」の描写を数ページにわたって粘り強く、執拗といってもいいかもしれないけれど、とにかく気迫に満ちた描写力に心を強く打たれました。
描かれているのは、女性警官たちをめぐる勤務の日常なのですが、われわれサラリーマンのように定型化された仕事などはなく、常に死と隣り合わせの世界。警察官の死亡率は交通事故が一番高いという意外な事実も。
緊迫感のある犯人との対峙シーンも読み応え抜群で、これは現役警官か、現役警官をきちんと取材した人でないとかけないだろう、と思わされてしまう。
一番心に残るのは冒頭のキャサリンだと思う。優秀な警官で、伝説の女性で、そして最後はやっぱり……。心打たれるものがある。

心の和む描写、そして開かれた謎

描写が凄い、と書きましたが、特に、ところどころに織り込まれる自然描写が美しくて、ラヴリー。私はアメリカに行ったことがないのですが、映画で見るアメリカの中流階級の住む住宅街の風情なんかが直接伝わってくる。たとえば、枯葉が風に吹かれて乾いた音を立てているシーンとか、葉の色が黄色になった広葉樹が重い枝を街路にたれていたり、リスが時折現れたり、とか。描写力は絶品で、これはもうなかなかまねできないと思う。かなり鍛練を積んだんだろうなあ。
それから、事態についての説明はあまりなされない。原因究明も。それは以前も言ったように謎のまま温存してある。だから、読者は、開かれた物語世界の真ん中に放り出されて、どこに行くのも自由。それを許す包容力がこの本にはあるのです。
緻密な描写、説明をしない奥ゆかしさ。
そうかあ、ここまで書かねばならんのかあ、とかなり勇気付けられた感じ。
だから本読みはやめられません。

女性作家万歳!

しかし、最近気づいたんですが、やっぱり女性作家さんの小説が好きかもしれない。まあ、いろいろ芸風はあるでしょうけれど。私が感銘を受けた女性作家といえば。。。
* 塩野七生
* 永井路子
* 篠田 節子
* 岡本かの子
* リンドグレーン
* アニタ・ブルックナー
* 澤田ふじ子
* ジュンパ・ラヒリ
加えて、辻邦生師の作品は女性的甘美さや緻密さを湛えているし、マルセル・プルーストだって、いろんな意味で女性的なものをもっていますので。そういうくくりでは辻邦生師もプルーストも女性的だといえるのでは、と勝手に思い込んでいます。