堅実で緊密──新国立劇場《ホフマン物語》

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はじめに

もう12月。あと30回ほど寝るとお正月です。お正月は笛吹いてお絵かきして遊びましょう。

新国立劇場《ホフマン物語》

さて、新国立劇場《ホフマン物語》に言ってまいりました。まったく凄いオペラでした。
* 指揮:フレデリック・シャスラン
* 演出:フィリップ・アルロー
* ホフマン:アルトゥーロ・チャコン=クルス
* ニクラウス/ミューズ:アンジェラ・ブラウアー
* オランピア:幸田浩子
* アントニア:浜田理恵
* ジュリエッタ:横山恵子
* リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:マーク・S・ドス
まずは、フレデリック・シャスランの巧みな職人芸的指揮が素晴らしかったです。微妙なニュアンスがツボにはまります。音量も細かくコントロールしてましたね。パーカッションの音を抑制していたのが印象的でした。アンサンブルが実にまとまっていて、安心して聞くことができました。
悪役4名はマーク・S・ドスが完全掌握です。シリアスな演技からコミカルな演技まで幅広くこなしていて、多才ぶりを発揮していました。目をギラリと光らすんですが、マイルス・デイヴィスのような目つきの鋭さでドキドキしてしまいました。
Twitterでも前評判が高かった浜田理恵さん、たしかに凄い。声の深みや豊かさは相当なものです。歌手の歌というものは一点の素晴らしさに加えて、持続する素晴らしさというものも必要なのですが、そういうところもいい感じでした。
あとは、ジュリエッタを歌った横山さんも。ジュリエッタの妖艶さがよくでていたと思います。抱きつくホフマンを尻目に、ギラッと目を輝かせる演技なんかも絶品。高級娼婦は恐ろしい。
チャコン=クルス、最初の《クラインザックの歌》のあたりでは、なにか物足りなさが会ったんですが、幕が進むに連れてどんどん良くなっていきました。第4幕あたりからは、あとを気にせずフルスロットルで歌ってくれました。鋭さと甘さのあるバランスある声でした。もう少し厚みがあると嬉しい。エラソーですいません。

アントニアの幕

それにしても、《ホフマン物語》はすごい曲です。歌詞の中身もさることながら、音楽的にもすごくて、こんなに単純なコード進行なのに、ここまで緊迫感と絢爛さを醸成できるのか、と関心します。
特に、アントニアの幕で、アントニアの母親が登場するところは、実にオーソドックスなコード進行ですが、母親の亡霊、悪魔の化身の医者、そして死に至るまで歌わされるアントニアの三人の金箔の盛り上がりが効果的に表現されています。あそこの1音ずつ上がっていくスケールが、緊迫感を増すのです。上がりきったところで、ミラクル博士が哄笑したりして。恐ろしい。
この場面を初めて観たのはウィーン国立歌劇場でしたっけ。安い席で舞台が全然見えない桟敷席の奥から必死に見てたんですが、あの時の恐ろしいまでの感動を思い出しました。ウィーンでの演出では母親の肖像画がバタンと開いてなかから母親の亡霊が現れるという恐ろしさでした。
今回のアントニアの母親は山下牧子さんだったんですが、あの方独特の妖しい魅力で、アントニアは冥界へと旅立ってしまったような感じでした。
ちなみに山下さんはステラ役かぶっています。アントニアの母親がステラという問題。深遠。

おわりに

8年ぶりに上演されたプロダクションでしたが、あらためて《ホフマン物語》を見ると、いろいろと面白い視点があることに改めて気づきます。科学批判、芸術批判などが織り込まれた「現代批判」の側面も持っているということになりそうです。オペラの愉しみというのが現代批判であるとしたら、《ホフマン物語》のアクチュアリティというものも考えることができるでしょう。これは明日考えてみたいと思います。
明日は健康診断に再検査。いや、別にどこが悪いというわけではなく、3日連続で徹夜勤務したり、半年で規定以上の深夜勤務をしたからだそうです。まあ、どこも悪いわけないんですけれど。
それではグーテナハト。

付録

昨日、近所のカラオケにカミさんと二人で行ってきました。
昔はできていたはずのピッチコントロールがぜーんぜんできてなくってショックです。
で、これはどういうショックなのか、というと(1)昔は、本当にうまかったけれど、今はうまくないというショック、あるいは(2)昔も下手だったけれど、最近になってピッチを聞き分ける耳ができて、昔からヘタだったことにいまさら気づいたショック、のいずれかどちらかなわけで、いずれにしてもショックであることにはかわりはないということになります。
(1)のほうがいいんだけど、(2)だったらイヤだなあ、と思います。
しかし、オペラ歌手の方々の微妙なピッチの違いが最近分かるような気がするので、もしかすると(2)である可能性のほうが高いのではないか、と危惧しています。だとすると。。いままで本当にすいません。
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堅実で緊密──新国立劇場《ホフマン物語》” への1件のコメント

  1. こんにちは。
    私も、「ホフマン物語」を鑑賞してきましたので、興味をもって読ませていただきました。
    今回のこの否両論があると思いますが、軽妙なオペラッタ的な場面とシリアスなオペラ的場面が交錯していく舞台の中で、音楽の転換の切れ味は見事で聴きごたえのある音楽は良かったと思いました。
    私も「ホフマン物語」の感想などを書いてみました。読んでみて頂き、ご意見、ご感想などコメントしてくださると感謝致します。

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