辻邦生「美しい夏の行方」と「春の戴冠」

美しい夏の行方―イタリア、シチリアの旅 (中公文庫)
辻 邦生
中央公論新社
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フィレンツェずいている今日この頃ですが、新潮文庫から出ている、題名も装丁も写真も、そしてもちろん文章もとても美しいこの本を読みました。アリタリア航空南回りで東京からローマに着いた時の祝祭的な気分、ローマの暑い一日を愉しみ、アッシジで聖フランチェスコの聖蹟に親しむ。途中で天使のような女の子に出会ったり。そしてフィレンツェ。ですが、そこで辻先生を待っていたものは……。

1989年に大判本で出版されましたが、もとは「マリー・クレール」という雑誌のために書かれた紀行文です。そして、この新潮文庫版が出版されたのは1999年7月3日。おなじ7月29日に辻先生は軽井沢で倒れられ息を引き取られましたので、おそらくは生前に出版された最後の本なのではないかと思います。

さしあたっては、前半のローマからフィレンツェの部分を読みまして、後半のシチリア紀行は今回は読まずに、「春の戴冠」に戻りました。こちらでは、ジュリアーノ・メディチが騎馬槍試合で、メディチ家のライバルであるパッティ家のロドルフォを打ち倒しますが、シモネッタの病も進行して……。サンドロ・ボッティチェルリは、いよいよ「春」の構想を練り上げてゆきます。上巻の喜びと悲しみのクライマックスが徐々に迫ってきています。

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