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会社帰りにサントリーホールに行けるという僥倖。私の夢でしたが、ありがたいことにこれも叶ってしまいました。仕事たまってますが、月曜日に早出しますので許してください。
曲目は以下の通りです。
* ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
* モーツァルト;交響曲第31番「パリ」
* ベルク:ルル組曲
* ラヴェル:ラ・ヴァルス
うーん、この組み合わせは、少し不思議なんですが、私的には垂涎ものでした。これはオールパリプログラムなのだそうです。「ルル」の全曲盤初演がパリだから、ということだそうです。ブーレーズが振ったあのCDのこと。。そうか、なるほど。。
指揮者は、1979年生まれの俊英、山田和樹氏です。もちろん初めて聴くのですが、経歴をみるとすごいことになっています。東京芸大でコバケンと松尾葉子に師事し、2009年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝してしまう。その後BBC交響楽団とかパリ管弦楽団を振って、再演を決めてしまう。N響の副指揮者。で、32歳ですか。。
山田和樹
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前半のドビュッシーに泣いた。。
山田さん、最初のフルートソロで、手をほとんど動かさなかったです。最初をほとんどフルートに任せてしまった感じ。その後も、オケにクリックを正確に与えるようなことはなく、ダイナミズムとクリティカルなタイミングを指示するのみ。大時代的な杓子定規なものはないかんじです。その指揮ぶりは、なんだか天から振ってくる音を拾い上げて、オケに伝えていると思えるぐらいです。
実は、半年ほど前にも日フィルの「牧神の午後への前奏曲」を聴いているんですが、今回は落涙度二倍ぐらいでした。弦のうねりが美しすぎて。癒されました。
ルル組曲で震えた。
ルル組曲、さすがにこの曲は難曲です。さすがの第一楽章の冒頭は、いろいろな音のパーツがあちこちで錯綜しているような感じでした。しかし、中盤に向かっては徐々にオケも暖まってきた感じで、充実した響きを見せてくれたように思います。
数ある見せ場では、私のイメージを超えたカッコよさににんまりしながら聞いていました。弦楽器がうねり歌うところとか、トランペットが泣き叫ぶところとか、サックスの媚態のような音なんかが入り乱れて、忘我状態でした。
複雑で混乱にも聞こえるリズムと音程の中に通底する危険な抒情性に心が揺さぶられ、苦しくもあり快くもありました。十二音技法を使った危険で魅惑的な旋律群が幾重にも繰り出されてくるあたりは、ベルクもすごいですが、指揮者もオケの皆さんも本当にすごいです。それから、曲のダイナミクスレンジをきちんと聴かせる演奏でした。最高潮の部分、何度ものけぞりました。そうしたオケの機能性を十二分に楽しむことが出来ました。
ルルのアリアを歌うのは林正子さんでした。残念ながら私の席からは十分にその声質を確認することが出来ませんでした。座席は、P席の横、打楽器を目の前にしたような席で、林さんの背中を観ながら声を聴いていたような状況でしたので。ですが、ピッチの狂いもなく、膨らみのある豊かな声だったのではないか、と推しています。
このとき既に、私は座席を間違ったことに気づきました。S席にしておけば良かった、と。というか、最前列、全然空いていました。休憩時間に移れば良かった。。。(ウソ)。
この曲の最終楽章ですが、切り裂きジャックにルルが喉を掻き切られる場面があります。ブーレーズが振っているCDでは、ここでソプラノの強烈な悲鳴が録音されていて、ホラー映画のように死ぬほど怖いんですが、さすがにそれはありませんでした。ちょっと期待したんですが。それにしても、この場面でベルクが描くルルの断末魔は実に写実的で身震いするほどでした。首から血が噴き出し、大きく数回痙攣し、力を失い倒れていくルルの最後の姿が目に浮かびます。
個人的には、サックス奏者の端くれとして、サックスパートがとても気になりました。アルトでしたが、メチャいい音です。もちろん、マウスピースはラバーですので、ジャズのよなギラギラした感じや、ざらついた感じは全くないです。艶やかで滑らか、それでいてエッジを感じる音でした。心が洗われました。私には絶対に出せない音です。
ルルについては、こんな文章を書きましたので、よろしければどうぞ。
“<参考>「ルル」を巡る不思議なエピソード":https://museum.projectmnh.com/2011/12/09235959.php
ラ・ヴァルスで盛り上がった。
最後のラ・ヴァルス。これがすごかった。この曲で盛り上がらない方がおかしいのですが、山田さん、ここでも相当盛り上げました。テンポは早々動かしませんでした。ただ、金管を歌わせるところは少しテンポをあげてアクセントをつけていたように聞こえました。最高潮のところは、全身で大きな振りを見せました。怒濤のフィナーレで、このときばかりは割れる拍手がフライング気味で、ブラボーの絶叫が飛び交いました。演奏後のオケの皆さんの顔も悦びに溢れている感じでした。
反省
今回の座席は、二階席のちょうどオケの左側面に面したところでした。これは完全に失敗でしたorz。オケの音が直接聞こえてくる感じがしません。一度ホール内で反射した音を聞いている感じです。間接音みたいな。最前列で聴いていたら、もっともっと感動したはず。悔やまれます。。
まとめ
山田和樹氏が千秋真一ばりの才能の持ち主であることが分かりました。しかしながら千秋真一よりも腰が低いし、オケにすごく気を遣っているのが分かります。最後なんて、オケの全パート立たせてたしなあ。
それから、今後は、座席選びは(家計も大事だが)悔いのなきようベストを尽くします。
今回の日フィル定期も本当に楽しかったです。
ラ・ヴァルスの感動の余韻に浸りながら、明日は新国に「こうもり」を観に行きます。