Tsuji Kunio

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仕事始め二日目。ずっと画面を見つめていたら、ひどい肩こりに。

そうは言いつつ、帰宅しながらこちらを引き続き。

生きることと考えること (講談社現代新書)
森 有正
講談社
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今日の感想は以下のようなものでした。

言葉の定義というものを、標準的な哲学的な定義にとらわれることなく考えているのだなあ、と思いました。哲学の議論において、話をするためにはタームとしての言葉の相互理解が必要ですが、そうした枠組みにはまらない言葉の使い方を、それをそうと意識して、という前提ですが、しているのだなあ、と思います。経験、とか、体験、という言葉を使いますが、私が使いイメージする経験や体験とは少し違う意味で、語っていて、それを自覚的に説明しながら語っているというのが、きちんと聞き手の地平に降りてきている感じで、興味深いものでした。この、経験、体験という言葉も、体験は凝固した変化のない過去のものであるが、経験とは未来に向けた発展する経験である、ということを言っていて、まだ理解が深まらない感じではありますが、例えば、戦争を仕掛けたドイツ皇帝やヒトラーは体験的だが、逆に仕掛けられたその戦争で勝ったアングロ・サクソンは経験的だ、という書き方、あるいは第二次大戦中の日本の軍というものは体験的だという書き方から、帰納法的に考えてみると、どうやら、それは経験を活用して発展していくような、動きのある枠組み、というふうに捉えました。ビジネスでいうとPDCAサイクルをまわす、というようなことをよく言いますが、そういうことでしょうか。

それから、印象的だったのは、「日本には自然がない」ということでした。というのも、すべての「自然」はすべて名付けられている、というわけです。富士山もすでに「富士の高嶺に雪は降りつつ」といったような文化的な表現によって名付けられている。二見浦もやはり、それだけではなく、しめ縄が飾られ日がそこから昇る、というように語られている前提であるから、それはもうすでに自然ではない、といいうようなことが書いてありました。

やはり、フランスに出かけていることもあり、日本社会に対する問題意識を強く感じるものでした。この場でそういった問題を書いたり考えたりするのは難しく、どちらが良いとか悪いとか言えないのですが、それでもやはり、社会問題となっている様々な事案のことを思い浮かべた時に、やはりそうした森有正のいう問題意識(個が確立されていない、など)に翻ることもまた必要と思いました。

あわせて今日読んだのが「春の戴冠」。

春の戴冠〈3〉 (中公文庫)
辻 邦生
中央公論新社
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先日から「暗い窖」という春の戴冠に登場する言葉がどうにも気になって、読み進めているところです。今日読んだシーンでは、プラトン・アカデミアでの読書会をリアリストのトマソが「まるで目に迫る危機を見ないふりをしているようだ」というようなことを述べるシーン。確かに、生きるということ、あるいは厳しい国際情勢などを見ぬふりしていいのか、現実の問題を直視ししなければならないのではないか、という問題意識のようにも思いまいたが、「春の戴冠」は物語ですので、一部分だけを切り取っても何も意味はありません。ただ、すぐそこにある危機やリスクを見ないというのは、一般的な問題としてはあるものですから、自分はそうではないと思いつつも、やはり何か胸に手を当てたくなるような気分でした。

明日で金曜日。正月明けの連休は本当にありがたいです。ただ、今年はかなりの祝日が土曜日に当たり、休日は少ない一年だったりしますけれど。

それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Jazz,Miscellaneous

仕事始めでしたが、初日から色々と。何かしらの「思いつき」のようなものにこの数日間苛まれる、あるいは恵まれていて、少々あぐねているというか、高揚しているというか。

今日はこちらを聞きながら帰宅。

CHICK COREA/TRIO MUS

CHICK COREA/TRIO MUS

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I hear rhapsodyが、好きで、それを聞くためだけに、聞いているような感じです。それって、My One and Only Loveを聞くために、Now He Sings Now He Sobsを聞く、というのと似ています。後半は変幻な曲で仕事帰りには少し厳しい。

このアルバムを知ったのは、私の先輩が、I hear rhapsodyを弾いていて、感動したのですが、その方はChick Coreaの影響のものと弾いていたということで、入手。で、セッションで、サックスをChickのリフっぽく吹いたら、別の先輩に「Chick Coreaそのまま」と言われました。なんというか、とぎすまされた演奏だと思います。何か、もの哀しいラプソデイを胸が張り裂けそうになりながら聞いているイメージ。

ちなみに、素敵なMy one and only loveが収められているNow He Sings Now He Sobsはこちら。

Now He Sings Now He Sobs

Now He Sings Now He Sobs

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Chick Corea
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そういえば、とあるところでチャンドラーの「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない」という言葉を見かけました。結局、優しさというのは、努力の結果強くなり、そのご褒美として振る舞うことができるもの、なんてことを思いました。これも一つの「思いつき」かも。ただ、小説の一箇所を取り出してもあまり意味がなく、恣意的な解釈は忌避すべきものです。ということは、チャンドラーを読まないと、ということになりますかね。いくら時間があっても足りません。

それではみなさま、おやすみなさい。

Japanese Literature

生きることと考えること (講談社現代新書)
森 有正
講談社
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今日で年末年始休暇は終わり。朝、開店前の近所のスーパーに並んで、割引商品券をゲット。

並んでいる時に、森有正の新書を読んだのですが、これがなかなか面白いです。まだ最初の方なんですが、パリが感覚の街だ、というようなことが書かれてあって、東京にはセクシャルな情報があふれているが実体はないが、パリのセクシャルは実体がある、というようなことが書かれていて、なかなか面白いなあ、と思ったり、実家の樫の木への憧憬のようなことが書かれていて、毎回歌詞の木を見るのを楽しみにしている、ということに共感したり。まだ思想を語る部分の前ですが、明日もこちらを読む予定。速読でざっと読んでみようと思ったのですが、速読というわけにはいきませんでした。まあ、なんというか、文学的には、そういうエピソードのようなものの方が興味深く、牧師の父親は病弱だったが、非常に厳しく、話をしたことがない、というような話の方が何かいろいろなことを考えたりしました。

夜はETVのニューイヤー・オペラコンサートを。新しい実力派の方に驚いたり、常連の方の歌が素晴らしかったり。

今日はそんな1日でした。明日からお仕事。来年のお正月が待ち遠しいです。

それではみなさま、おやすみなさい。

 

Japanese Literature

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今朝の東京地方は曇り空で、あれ、天気予報と違う、と思いましたが、その後お昼に向けて雲が切れて行きました。写真は、ちょうど雲が切れ始めて快晴へと向かう時間帯のもの。
昨夜は、少しばかり飲みすぎまして、まったく懲りないものです。気を使う場だとついつい飲みすぎてしまいまし。正月休みということでお許しを。
この年末年始休暇は自分の時間をとることはなかなかできませんでしたが、家事をしながら、「紅白歌合戦」を含めて、テレビを見ていろいろ情報を得ました。

で、こちら。

BS1スペシャル「巨匠スコセッシ“沈黙”に挑む~よみがえる遠藤周作の世界~」

オペラ「沈黙」を新国立劇場で2回見ていて、映画化の情報も聞いておりました。この春にロードショーだそうです。録画を仕掛けていたのですが、家事のあいまで最後まで見てしまいました。

「沈黙」について語ることそうそう簡単なことではありません。ですが、自らの信仰、自らの価値感、自らの美意識を捨てる、と言うことは、キリスト教禁制下におけるキリシタンだけが直面する問題ではない、ということにあらためて思い至りました。

また、遠藤周作は、「沈黙」に登場するような弱き者たちを沈黙の灰から救い出すことこそが文学の仕事だ、ということを言っていた、とされていました。常々思っていることは、文学の仕事というのは、学問的な客観的必然性や普遍的妥当性がなかったとしても、そこに何かしらの真実を求める営為です。それは、ともすればPostTruthの文脈で語られるような安易な感情的な振りかざしになりがち、ありはそう思われることもあるのでしょうが、作家はそこに客観的必然性と普遍的妥当性を当為としてあるように書くことで、政治や歴史にはできない仕事をしているのだと考えています。遠藤周作の言っていたことは文学の使命として、ある種の作家に向けた一つの指針のようにも感じました。

さて、明日で正月休みは終わり。明後日からまた五時起きの毎日が始まります。

それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Jazz

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新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様にとりまして幸多き一年となりますことを願っております。

昨年末に「セッションでチック・コリアをやらないか?」と言われたりしまして、チック・コリアを聞き始めたら、なぜかとらわれてしまいました。

今日はこちら。「不思議の国のアリス」をモチーフにした1978年のアルバム。

マッド・ハッター

マッド・ハッター

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チック・コリア ゲイル・モラン エディ・ゴメス ジョー・ファレル ハービー・ハンコック スティーブ・ガッド
ユニバーサル ミュージック クラシック (2005-03-30)
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チック・コリアの音楽は、何か、70年代のオプティミズムのようなものが含まれているような気がしてなりません。20世紀のSFに描かれたオプティミズムのようなものと通底するものとも言えます。科学の発達が人類を栄光の未来へと導いていくというもの。あるいは、世界は歴史の流れにおいて必然的に発展し様々な問題は一つに収斂していく、というもの。それは、チック・コリアの来歴を知っているという要素はあるかもしれませんけれど。

今年は(あるいは今年も、と言いたいですが)、限りある時間を意義あることにきちんと使っていく年にしたいと思います。自分にとって意義あることは何か。それは不惑を過ぎていますので、定まっていますので、あとは時間を作ってやるだけです。

お仕事をされている方もいらっしゃると思いますが、みなさまもどうか良いお正月をお過ごしください。

※今年はスマホで初日の出をとってしまいまして、こんな感じになってしまいました。来年はちゃんとカメラで撮りましょう。