詩への旅詩からの旅を読んで
なんだか、ひどくいろいろなことをやっていて、くさくさした感じになってしまい、これはもう、何かストレス解消になるようなことをしないと、と思っていたのですが、この本を読んで一気に沈静化してしまいました。
辻邦生「詩への旅 詩からの旅」。1973年出版です。
古本で買ったものですが、いつどこで買ったのか全く覚えていません。ところが、裏表紙を見ると、辻邦生のサインが。
実際に40年以上前に辻先生が手に取られた本が、21世紀となった今、私が手に取っている、という感動はそこはかとないものです。
この本、かつて読んでいるはずなのですが、もう20年も立っているので、ほとんど初めて読む感覚でして、冒頭のパリの描写にシビれてしまい、しばらく先に進むことができません。先日書いた「エルEllE」の中で、フランスの個人主義について少し触れましたが、その個人主義が「死」に立脚しているという指摘に痺れてしまったり、あるいは、フランスのカフェの微細な描写に、外国に行った時の緊張感のようなものを思い出したり。
朝のカフェのこの感じ、この雰囲気は決して伝えることはできない。そのなかに生きる以外にはそれを味わう方法はない。だが、そのことは小説を書くことに似てはいないだろうか。なぜ小説では、微細な細部が描かれるのか。なぜ裁断し、批評し、説明し、要約しないのか。それはただ、微細な描写が生きた雰囲気、なまなましい感じの容器となって作用しているからではないのか。この感じ(サンサンシオン)は、そうした描写にひょって、そのまま保たれているからではないのか。
11ページ
なんだか、もう外国に行くこともなくなってしまい、本当に悔しさとか悲しさとか歯がゆさとか、そういうことを感じずにいられません。が、人生は短く長い。これからどうにかしないと、とも思いました。諸々頑張ろう。
それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません