Richard Strauss

Strauss
前回に続き、チューリッヒ歌劇場の「ばらの騎士」です。
演出のことについて書いてみたいと思います。
僕は3階Lの1列1番という席でしたので、舞台の左側は全く見えませんでした。
ともあれ、モダンで無国籍な演出だったと思います。
第一幕と第三幕は大まかなセットは同じで、舞台の奥が大きなガラス窓とガラスドアになっています。壁には鳥の飾り物が幾つも掛かっています。衣装は本当に無国籍な雰囲気で、マルシャリンとオクタヴィアンの寝間着姿は普通の欧州風、オクタヴィアンが女装をすると、ターバンを巻いていてインド風。召使い達も白い服にターバンでインド風。イタリア人歌手は箱の中から登場するのですが、中国風の衣装をつけていて、機械仕掛けの人形歌手のようなイメージ。ホフマン物語のオランピアみたいでした。
第二幕はファニナル家なのですが、なぜか地下の厨房が舞台になっている。ファニナルはオーナーシェフのような高い料理帽被っている。ゾフィーはシュニッツェルを作っているのですよ! ポークステーキに丁度よさげな本物の肉を、肉たたきで叩いて、小麦粉と卵黄をくぐらせて、パン粉を付けている。本物ですよ、あれは。舞台の左側の調理台では、青緑の粘土のようなものを切り刻んでミンチにしている。おそらくはジャガイモのミンチからクヌーデルを作っているところと見ました。
第三幕は第一幕と同じセットなのですが、中央にテントが張られている。その中が特別室という感じですね。オックス男爵とオクタヴィアン(マリアデルに扮装しているのですが)が食事をしているのですが、骸骨人間が出てきて、オックス男爵を脅かしている感じ。特別室に出入りするウェイター達は虫をモティーフにした変装をしています。第三幕はしっくり来る演出でした。

Richard Strauss

Strauss
見て参りましたですよ、「ばらの騎士」@オーチャードホール。
いやあ、凄かったですね。

指揮 フランツ・ウェルザー=メスト
演出 スヴェン=エリック・ベヒトルフ
管弦楽 チューリッヒ歌劇場管弦楽団
マルシャリン ニーナ・シュテンメ
オックス男爵 アレフレッド・ムフ
オクタヴィアン ヴェッセリーナ・カサロヴァ
ファーニナル ロルフ・ハウンシュタイン
ゾフィー マリン・ハルテリウス
イタリア人歌手 ピョートル・ベチャーラ

まず、オケが強力に聞こえました。僕らは三回の一番舞台よりのところに座っていたので、オケピットのすぐ上だったこともあって、オケの音がとてもよく聞こえたというのもあるかもしれませんが、とにかく凄いダイナミックレンジでした。特に第三幕の三重唱の部分、凄かったですね。オックス男爵のワルツ、ウェルザー=メストさんはかなりスピードを落として演奏していました。失速寸前だが、全く失速することはなく、それでいてきちんとノリを維持していて、洒脱な感じを表現していましたね。

歌手の皆さんの中で一番印象的だったのはゾフィー役のマリン・ハルテリウスさんですね。音程はもちろん安定しているし声量も問題ない。高音域はクリスタルグラスを鳴らしたような目の覚める美しさ。バラの献呈の二重唱のところでまずは滂沱。第三幕、マルシャリン、オクタヴィアン、ゾフィーが三人になって難しい場面になるところの歌い方も素晴らしい。

マルシャリンのニーナ・シュテンメさんも、第一幕の歌い出しのところでもうグっと来てしまう。凄いなあ。オクタヴィアンのヴェッサリーナ・カサロヴァはメゾ・ソプラノなのですが、ある意味男らしさを持って歌っていらしたように思います。

それにしても、女装するオクタヴィアンというのは不思議ですね。女性歌手が男性役をやり、その男性役が女性として振る舞う、とは本当に面白い仕掛けを考えたものだと思いますし、オクタヴィアンの歌い手さんはその滑稽ともいえる演技を完璧にこなしていらっしゃる方が多いですね。

それから、サブタイトルの訳の仕方が面白かったです。第三幕でオックスをはめた部分、歌詞だとfalschだったのですが、それをジョークと訳したりしてましたね。

「ばらの騎士」は、これで公演を三回、DVDを一回、CDを二枚で体験したことになります。

  1. カラヤン盤CD(新)
  2. 二期会公演
  3. クライバー盤DVD
  4. カラヤン盤CD(旧)
  5. 新国立劇場
  6. チューリッヒ歌劇場

どれが一番、とかはないのですが、涙を流した量が一番多かったのは5.の新国立劇場でした。

次の「ばらの騎士」は11月23日のドレスデン国立歌劇場公演です。こちらも愉しみ。

明日も、この公演については少し書いてみたいと思います。