
この「二人だけの秋」では、エマニュエルの親族が持つ城館で、深くなってゆく秋を過ごすことになりますが、時に寒くなる時期に暖炉のぬくもりが広がっていく感じが、なにかとても印象的に感じます。
エマニュエルはいつも謎めいてはいながらも深いフレーズを話します。主人公とエマニュエルの会話は、ジャズのインプロバイズのように、転調しながら続くような気もします。
この会話の感じは、同じ選集に収められている「サラマンカの手帖から」に登場する二人とよく似ています。
二人は、夫婦のようでもあり、恋人同士のようでもあり、しかし、なにか学術に関する仕事をしているようにも思います。
その二人が、スペインを旅してサラマンカに行きつきます。灼熱のスペインの荒野を走る列車に乗りながら、おそらくは冷房のない熱い車内をレモンの果汁を口に含みながら旅をして、サラマンカに行きつき、深夜の食堂で魚のフライを食べて、ジプシーの娘の踊りを見る。
それはもしかすると辻夫妻が欧州を旅した会話にもよるのではないか、とも思いますが、もちろん現実がそのまま書かれているわけでは全くなく、イマージュへと昇華し、全く別のものに鋳なおされているように思います。
「サラマンカの手帖から」の最後、主人公はこういいます
そうだ、オレンジを齧るんだ。裸足でね。そして何かにむかってゆくのさ
この言葉、いつも感動します。しかし、私も、裸足でオレンジを齧ることができるのでしょうか。
それでは。














