また今年も辻邦生の命日が参りました。
ご存命なら86歳でしょうか。
13年の年月が経ってしまいました。
変わるものは変わり、変わらないものは変わらない。
こちらは、かつて某所で撮影した辻邦生の作品ノートです。
それから、辻邦生が教鞭を執った学習院大学の校門。
画質は悪いですが、自筆原稿の写真。手ぶれしています。
なんだか、時代はすっかり変わってしまいました。
ですが、こうも世の中がめまぐるしく変わり、(私事で恐縮ですが)職場の方針が機動的に変わり続ける激動の世にあると、レベルは違うかもしれませんが、終戦時の辻邦生の思いが少し分かるかもしれません。
昨日までは皇国史観一辺倒だったマスコミや教師が、一日経つと、米国流民主主義者に変貌したという事実です。
あれで、学生だった辻邦生は世界を信じられなくなったのだそうです。
だからこそ、文学においては理想という高みを目指したわけです。
西欧の二千年に及ぶ文明に築かれたイデアールな価値を求め続けたのは、不変な価値をを求める旅であったわけです。
しかし、そうした不変なもの、あるいは普遍的なものが存在し得ないと言うことが分かってしまった私にとっては、辻邦生の歩んだ道でさえも、手の届かない高みへ昇って行ってしまった感があります。
私が辻邦生に出会った90年代初頭にも、世界にはそうした相対主義の萌芽があったはず。
ですが、情報の拡散と情報の爆発は、普遍を超えた気がします。その行く末が、これも卑近な例で申し訳ないのですが、10年ほど前に流行った、世界でたった一つの花、なのかもしれません。
などと考えるにつけて、やはり、辻邦生の歩んだ道は、まだ閉ざされることなく世界に開いているのだ、と思います。
明日は、社命により公休。熱いですが都内に出る予定です。