Book,Classical

はじめに

先日から二回目を読み終わった、岡田暁生さんの「西洋音楽史」ですが、色々考えるのですよ。日曜日に一気に載せようとしましたが、体調不良のため一旦撤回しました。仕切りなおして今日から連載で。
ではどうぞ。

神なき時代の音楽とはなにか?

2005年に出版された岡田暁生氏の「西洋音楽の歴史」は、新書で平易な書き方ながら、歴史の中の時代時代において変転していく音楽の「意味」を論じたものである。つまり作曲家やその作品の羅列ではなく、当時の政治社会情勢、あるいは思想状況を背景に、音楽がそれぞれの時代にどの意味をもったのかを明らかにする。

結論めいたもの

だが、この本は単なる歴史本ではないのだ。叙事的に語るだけでなく、現代における音楽の「意味」を措定している。ここが極めて画期的な論なのである。
この「意味」とは何か。私は以下のようにまとめてみた。
「神を失った現代人にとって、西洋音楽が、あるいは西洋音楽の末裔であるポピュラー音楽がそれに代わるものとして求められている、あるいは求められていた。神の秩序の代替として。」
これが、本書を読んで強く思った、音楽のアクチュアリティである。

年代記としての西洋音楽史

繰り返しになるが、本書は、西洋音楽史と位置づけられているわけで、当然ながら中世から叙述が始まる。叙事的に語られる中世音楽への淡々とした記述が、前述の私が思うところの結論である「西洋音楽が神の代替となる」への下敷きとなっていることに気付くことになる。
つまり、当然のことながら中世当時の音楽は超越的秩序の現れとされており、神を表現する方法でもあったわけで、そうした音楽の機能が、「神の死」の後の19世紀において、再び復活した、という、回帰の構造が見えてくるのである。「音楽史」という音楽の年代記的記述でなければこうした構造をとることはできなかったということになるだろう。

編集後記

この原稿、今月になってようやくわかりはじめたScrivenerというライティングソフトで書いています。これがもう画面が美しく機能的ですっかり虜になってしまいました。Macを使いたかった理由の一つがこのソフトだったので嬉しい限りです。みなさまも是非!
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カテゴリ: 仕事効率化
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