NNTT:新国立劇場,Opera,Richard Wagner

うーん、すごいなあ、シュナイダー師。昨日に引き続き「トリスタンとイゾルデ」第二幕を聞いているんですけれど、絶妙なテンポの揺らし方がすばらしくてため息が出てしまう。第二幕の白眉はトリスタンが登場して、二人で歌い続けるところでして、まあ、現実の恋人達はあんなにたくさん歌うことなんてないかもしれないんですがね。意外にも、というか、やっぱりというか、ブランゲーネ役のミシェル・ブリートさんもいいんですよねえ。見張り台に立って、「二人ともいちゃいちゃしないで注意しないとだめよ~」と歌うところ、最高ですね。
「トリスタンとイゾルデ」は、来年1月に新国立劇場の新製作で登場します。指揮は、欧州で大活躍の大野和士さん。イゾルデはもちろんイレーネ・テオリン様! ブランゲーネはなんと、エレナ・ツィトコーワというコンビ。想像しただけでゾクゾクきますね。

エレナ・ツィトコーワの思い出。


ツィトコーワの実演に接したのは4回ですね。
まずは、2003年だったと思うのですが、新国立劇場で「フィガロの結婚」のケルビーノを歌っていたんですが、それはそれはすばらしかった。華奢な体だというのに深みのあるメゾ的ソプラノで、すごく感嘆した覚えがあります。
次が、私の中では人生最良最大演奏のひとつとして数えている新国立劇場2007年の「ばらの騎士」のオクタヴィアン。美人なのに、ショートカットにして、男装すると、それはそれは格好のよいオクタヴィアン。演技も巧い巧い。第三幕の、オクタヴィアン役のソプラノが女装するという不可思議な演技を十全に演じていて、私はもう涙が止まらなかったですよ。
それから、彼女は、昨年2009年の「ラインの黄金」と「ヴァルキューレ」でフリッカを演じました。けれども、フリッカにしてはかわいらしすぎてちょっと拍子抜けしてしまった。フリッカといえば、ギリシャ神話で言うとヘラのような存在で、ヴォータンにしてみれば口うるさい妻といった、ちょっと癖のある役柄なんですが、ツィトコーワは美しすぎたんですねえ。もっと体格のたっぷりとした方だと似合ったのかも。でも、声はすばらしかったです。

期待膨らむ新国の「トリスタンとイゾルデ」

で、来年1月に、ツィトコーワは新国の「トリスタンとイゾルデ」でブランゲーネを歌うのですよ。しかも、テオリン様と競演とは! お二人はどう見ても対照的。きっと、強き女性たるイゾルデと、従順で忠実で、ちょっと気を利かせすぎてしまったブランゲーネという感じで、しっくり来るパフォーマンスになるんじゃないでしょうか。期待は膨らむ膨らむ。
ただ、このオペラは、長いのが欠点。体に十分に音楽をしみこませておかないと、最後まで聞きとおすのはつらいかも。私も2008年の秋に、バレンボイムがベルリン・シュターツオーパーを振った「トリスタンとイゾルデ」をNHKホールで聞きましたが、かなりつらかった記憶があります。風邪引いていましたし、前々日にイタリア旅行から帰ってきたというかなりハードなスケジュールでしたから。
そうこうしているうちに、第二幕の盛り上がりのひとつの頂点、愛の死のテーマに入ってきました。ロバート・ディーン・スミスとイレーネ・テオリンの二重唱炸裂中。
あ、昨日知ったんですが、ロバート・ディーン・スミスって、新国で 「 -ローエングリン- ワルキューレ」に出ているんですね。今度、新国の情報資料室に入り浸ろうかと画策中です。

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昨日は池辺晋一郎氏の新作オペラ「鹿鳴館」のオペラトークに行きましたが、今日も引続き初台に赴きまして、「カルメン」を聴いて参りました。
私のカルメン体験は、クライバー&ドミンゴのDVDを観たのと、2006年にドレスデンで不祥ながら実演に接した、という二回限りですが、このところは、もっぱらクライバー盤とカラヤンの抜粋盤を交互に聴いておりました。
今日驚いたこととと言えば、まずは前奏曲が速い速い。疾風のように軽やかにギャロップする駿馬のよう。のっけからノックアウトされた気分。バルバッツィの指揮は、最近はやりのためるような棒ではなく、砂塵を巻き起こして走り去る軽騎兵のよう。すごく新鮮に感じました。私が予習で聴いていたクライバーよりずっと速くて流れるような演奏で溜飲の下がるおもいです。こういう指揮もいいなあ、と本当に感激でした。
一方、カルメンを歌ったキルスティン・シャベスも素晴らしかった。確かに終幕部にかけていくぶんかの疲れを見せましたが、第一幕の登場から、妖艶なカルメンを歌い演じきっていました。この方は生まれたときからカルメンだったのではないか、と思うぐらいはまり役です。歌唱のほうも素晴らしく安定していました。ピッチの狂いもあまり感じませんでしたし。何より演技が大胆で、迫力さえ覚えたぐらい。見ているだけで、ちょっと気恥ずかしくなるような場面も。まさに、ファム・ファタールたるカルメン。
ホセを歌ったトルステン・ケールですが、最初はかなりセーブぎみに歌っていたのですが、後半に進めば進むほど迫力と力強さを増して行きました。最初は少し細く軽めな声だと思っていたのですが、クライマックスでは正確なピッチで美しいロングトーンを聴かせてくれました。
あとは、ミカエラを歌った浜田理恵さんが素晴らしかった。この方を聞くのは二度目です。2008年に新国で「トゥーランドット」リュウを歌われたのですが、あの時に続いて、今日も日本人離れした太くて豊かなメゾソプラノで、感激しました。でも、よく考えると、リュウもミカエラも決してかなうことのない恋のに殉じていますね。
演出、その他については、また明日書いてみたいと思います。