やっぱり問題作? 新国立劇場「ラインの黄金」

ちと忙しくてコンディションが万全とは言えませんでしたが、なんとか出かけることが出来ました→ラインの黄金@新国立劇場

いやあ、のっけから驚かされる指環でして、音楽そっちのけで演出に驚かされっぱなし。 ひしゃげた長方形の画面に水面の様子が映し出されてライン河をイメージしているのはわかりますが、この後からが大変でして……。

このあとはずっと、このひしゃげた長方形を通して指環劇を観ることになるのですが、あるいはそれは映画館のメタファーなのかも。ラインの乙女達はこのひしゃげた長方形の前に並べられた劇場椅子の上を自在に動き回り、アルベリヒを翻弄します。大衆的複製芸術としての映画が指環に重ねあわされるとどういう意味を持つのか。そういう意味で実にキッチュな感じの演出だったのではないかとも思うのです。

ともかく、最後にワルハラへの入城の場面で、仏陀やらキリストやらポセイドンやらイザナギ・イザナミがワルハラに現れるというのはどうしたもんでしょうか。あまりに刺激的ですが、なんだかとってつけたような感じも受けます。映画の「ソ○ィーの○界」を見たときに感じた居心地の悪さでした。

演奏が終わると、なんだか悪夢の中を彷徨っていたような気分になりました。これは夢の世界です。それもナイトメア。

まあ、こうしていろいろと指摘したくなるということ自体が、ウォーナーの意図するところなのかもしれません。まんまと蜘蛛の糸に絡め取られたというところでしょうか。

音楽的な面ですが、歌手としてはユルゲン・リンさんのアルベリヒが一番よかったです。声質に張りと艶やかさがある私好みの歌声です。

一番楽しみにしていたのは、エレナ・ツィトコーワさん。ツィトコーワさんを新国で聴くのは3度目になります。最初はケルビーノ、次はオクタヴィアン。これは素晴らしかった。そして昨日はフリッカ。うーむ、ちょっと印象が違うのですよ。オクタヴィアンの鮮烈な印象がすばらしすぎて、フリッカの持つ神々しさとかある種の傲岸さのようなものがあまり感じられないのです。衣装も地味なツーピースでしてすこし物足りなさが。歌声は柔らかく豊かで、すばらしさは健在で脱帽なのですが、それがフリッカ的であるかどうかはちょっとよくわかりません。

カーテンコールはブラボーだかブーイングだかわからない怒号が飛び交う感じ。こんなに荒れた感じのカーテンコールは初めてかも。あえて言えば、○国のボ○○ムを○上道○氏が振ったときと、関○○期○のナ○ソ○島のア○ア○○のときぐらいでしょうか。まあ、まだ56回しか観てないので、赤子も同然なのですが(56回「も」かしら。それにしては何も知らなさ過ぎる)。

それにしても、演出の印象が強い、ということは、僕自身音楽をきちんと聴けていなかったということになりそう。ここは至極反省。次回のワルキューレはきちんと体調を整えて行きたいと思います。

さて、究極の選択。

  • 休みなしの2時間45分のオペラ
  • 休みを二回いれた5時間超のオペラ

どちらが体に優しいでしょうか?

私的な答えは4月12日に出ます。