ハインライン「宇宙の戦士」

 ハインライン「宇宙の戦士」読了。今更何で読んでいるの、みたいな感じ。これは高校生の時分に読むべき本でした。

未来の地球連邦軍の機動歩兵訓練基地に配属された主人公。鬼軍曹と過酷な訓練に耐えて成長していくというある種ビルデゥングスロマン的要素。訓練キャンプを卒業し実戦配属され、困難な任務をこなし、士官学校に入学し、戦い続ける成長の物語。

これって、「魔の山」的な世界観だし、一昨年に読んだ「ケイン号の叛乱」的な世界とも通じる感じ。あるいは、豊田穣氏の「江田島教育」的なものにも相通じる。なので、読んでいて懐かしさすら覚える感じ。

とはいえ、ここに美化されて描かれている 軍事教練がいいのか悪いのか良くわかりません(受けたことがないので)。まあ相当辛そうですが、耐えることに喜びを得るかも。ある種M的嗜好を持っている人は少なくないでしょうし、私にだってM的要素はあるかもしれない。 

 それで思ったのですが、「宇宙の戦士」を読むと、これは実践生活に役立つな、と。会社も軍隊も大して変わらないでしょう。生死をかけるという意味においても同じ。うちの会社、ホワイトカラーの会社なのですが、仕事で命を落とされた方だって何人かはおられるわけです。「ケイン号の叛乱」を読んだときにも同じような感想をこのブログに書いていて、苦笑です。

主人公に課せられる義務や求められる能力のほうが遙かに高くて、私なんて微塵にも及ばないのですが、それでも参考になります。新任士官は先任軍曹の助言を聞くべし、とか、士官がイライラするんじゃねえ!、みたいな。それで、ああ、自分は本当に指揮官むきじゃないなあ、と落ち込むことしばし、でありました。

後書きには、この作品のある種暴力肯定的な部分とか、ファシズム賛美的な部分がいろいろと論議されているというようなことが書かれておりました。wikiにもいろいろ書かれていて面白い。この本がガンダム誕生の遠因なんですねえ。書かれた時代はベトナム戦争に突入しようとする冷戦時代のアメリカですので、社会的意味も大きかったと思います。

ただ、いまこの本を読むと、私にはある種のパロディにも思えてしまうのですが。パロディに思えるのは、「宇宙の戦士」の影響下にあるガンダムなんかをすでに知っているからでしょうか。それから、アンチテーゼとして読めるんじゃないの、みたいな。私は、この本の最終章で、主人公が戦死するか、地球連邦軍が負けるかどちらかだと予想しながら読んだのです。もし、予想通りだったら、最後に0を掛けて、虚無とするという魂胆だろうなあ、と。wikiや後書きを読むとそうではないと言うことが分かるのですが。