新国立劇場/プッチーニ「西部の娘」

OPERA CITY
NNTT

観てきました、西部の娘。今回も幸いにも行けて良かったです。

(写真はオペラシティ、中庭の池)

演出について

  • 舞台上には段ボールの直方体が積み重なっていて、倉庫の中といった趣。それが幕が進むにつれて徐々に壊れていきます。ホモキ氏の解説では、最後は荒野に帰するという設定なのだそうです。
  • 舞台上には、世界各国の衣装をまとった男達が登場します。ユダヤ人、アラブ人、黒人、東洋人……。演出のホモキ氏の意図通り。アメリカ西部に集まる男達を移民ととらえて、それを現代に移すとこうした多国籍の男達が職を得るため、生きるために、移民となってアメリカ(ないしは欧州でもいいと思うのですが)に集まっているという設定なのです。
  • ミニーは、オレンジ色のつなぎの作業服を着て登場。スーパーマーケットの従業員といった感じでしょうか?
  • ディック・ジョンソンは赤いチェックのシャツにジーンズ、モスグリーンのザックを持って登場。いかにもアメリカ人らしい格好です。
  • ランスは、保安官なのですが、黒い制服にブーツといた出で立ちで、現在の警察の制服を着ています。
  • ホモキ氏の解釈。ディック・ジョンソンは個人主義的(いい意味でだと思いますが)な人間で、自分の運命を切り開いていこうとしている。父親から盗賊団を受け継いでいることをあまり良く思っていなくて、本当はもっと違う人生を送りたいと思っているのです。ミニーとできれば所帯を持って堅気に生きていきたいと思っているわけです。でも、盗賊団の首領としてのレッテルを貼られ、盗みはいいものの、殺人犯にまで仕立て上げられていく……。現実世界も同じですよね。皆が皆レッテルを貼りあって、真実を見ることを忘れてしまう。
  • 最後には、ディックとミニーは男達に見送られながら去っていくわけです。ディックもミニーも、新しい生活へと一歩を踏み出していきます。ところが残された男達の生活は変わらない。男達は炭坑夫ですから厳しい生活を送っている。だが、そこから抜け出すこともできないし、抜け出すことを考えることすら出来ない。辛い毎日が待っている。ただ経済的な理由のため、生活のため……。
  • そう考えると、まるで会社を去る人、残る人、と構造がにているんじゃないか、と思ってしまいました。毎年春になると会社を去って新しい道へと進んでいく人々がいます。つい先だっての3月末もそうでした。
  • でもその先は? マノン・レスコーのようにならなければよいのに、と少し心配してみたりして……。そんな心配するから、まだ会社に残っているのか、僕は……、という感じでしょうかね……。

演奏について

  • 冒頭の短いプロローグから強烈な迫力。これはもうたまりません。さすがシルマー氏です。キビキビとしたスタイリッシュな音を作り出していて、フォルティシモのパワーが強力。東京フィルハーモニー交響楽団もがんばっていたと思います。
  • それにしても、ランス役のルチオ・ガッロ氏は好演でした。スカルピア的悪役ぶりを遺憾なく発揮していました。
  • もっとも印象的だったのは、第二幕のミニーとディック・ジョンソンの愛の二重唱、ミニーとランスの対決の場面、勝負に勝ったミニーの勝どきをあげるところ、でしょうか。
  • ミニーとランスのポーカー対決、コントラバスがリズムを刻む中で、二人が台詞を言い合うのですが、すごい緊迫感。双眼鏡でずっと観ていたのですが、迫真の演技でした。
  • ミニーの勝どきの場面もすごかった。オケのパワーが遺憾なく発揮されていました。すごかったです。
  • プッチーニは本当に流麗な旋律を創るものです。すばらしい。
  • しかも、このオペラは当時の最先端の音楽を研究して作ったと言うこともあって、ボエームなんかと比べると、格段に和声が複雑になっているのを感じます。

というわけで、愉しんだ3時間でした。やはりオペラはいいですね。プッチーニ様、シルマーさん、キャストの皆さん本当にありがとうございます。

※ 少々体調が悪かったのが悔やまれます。オペラを観るためには結構体力がいります。次回は6月の「ばらの騎士」なのですが、体調を万全にして行きたいと思います。

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