ベルリン国立歌劇場「トリスタンとイゾルデ」に行ってまいりました。14時半にNHKホールに着いて、それから6時間にわたってNHKホール内に、至福の時と共に拘禁(笑)されました。私事ながら、風邪を患い、頭が朦朧としている状態で聞いたものですから、判断能力が鈍っていることは否定できないのですが、それでもすばらしい演奏で、ビックリしました。
それにしても強力な弦楽部で、波打つうねりのような音が大迫力でした。さすが本場だけあってパワーが違いますね。それから、マルケ王を歌ったルネ・パペさんはすごかったです。ツヤにある声。忠臣に裏切られた思いを哀切に歌っている感じ。客席からの拍手も一段と大きいものがあったように思えます。僕の席からは確認できませんでしたが、バレンボイム氏は暗譜で振っていたらしいです。どんな頭の構造なんでしょう?トリスタンのクリスティアン・フランツさんも、イゾルデのワルトラウト。マイヤーさんも強力。圧倒的パワーに押しまくられてしまいました。それから、曲を聴いていて、マーラーの交響曲のフレーズが聞こえてびっくりしました。
でも、このオペラは考えさせられるなあ。購入したプログラム(3000円!)にも書いてありましたが、夜の世界でしか本来の自分を出せない二人。昼の世界では、忠義深い廷臣や、貞節な妻を演じ、夜の世界では、お互いの真実の愛を確かめ合うとは。本当の自分に戻れるのは夜だけ。これじゃあ、まるでサラリーマンと同じじゃないか、と思ったりもしました。
NHKホールはあまり音がよくないということを聞いたことがあるのですが、確かにオケのバランスが悪かったと思います。やけに金管が目立って聞こえていたりしました。けれども、オペラを「見る」という点においてはいいかもしれません。今回3Fの右のほうの席だったのですが、舞台はほとんど見えました。新国立劇場だと、舞台奥まで見えないこともありますので、そういう意味ではよかったです。
指揮:ダニエル・バレンボイム
演出:ハリー・クプファー
トリスタン:クリスティアン・フランツ
マルケ王:ルネ・パペ
イゾルデ:ワルトラウト・マイヤー
クルヴェナル:ロマン・トレケル
管弦楽:ベルリン・シュターツカペレ
ベルリン国立歌劇場「トリスタンとイゾルデ」