いやあ、久々にびっくりしました。昨日の通勤往路の後半から、ふと思い立って、バーンスタインのブラ1を聴いてみたのですよ。先日バーンスタインのブラ3を聴いたときにはレヴァイン盤のほうがいいなあ、などと思っていたので、あまり期待などせずに、リラックスした気持ちで、です。
第一楽章はなんだか、もっさりしている感じで、あまり気持ちも乗らなかったのですが、第二楽章以降、あれ、この演奏すごいかも、と思ったのです。バーンスタインのテンポ取りが伸縮自在で、全体のテンポは遅めと言っても良いのですが、各所への目配りがきちんとなされていて、その時点時点のテンポが必然性を持って迫ってくるのです。この感じは、昨年聞いたバーンスタインの「トリスタンとイゾルデ」でも感じたことです。そうかあ、これがバーンスタインの音作りなのか、といまさらながら改めて感じ入っています。
特に良かったのは第二楽章。ここでバーンスタインに開眼したのです。膨らみのある静謐さで、ブルックナーの緩徐楽章のような雄大さをも感じます。弦楽器が本当によく歌っているのですよ。すばらしいですね。ヴァイオリンの独奏が出てくるあたりのゆったりとした雰囲気、たまらないです。第三楽章のゆったりとした舞曲調のアンニュイな気分。クラリネットがいいなあ。第二主題のバロック建築的な構成美。大きく心を揺さぶられて溶けてしまいそう。第四楽章の気迫、それも巨大な客船が波をわけて大洋を渡っているような安定感と幸福感。 コーダーに至る躍動感と言ったら、言葉になりません。
それで、第一楽章を昼休みに聴きなおしているのですが、もっさりした演奏、だなんてえらそうなことを言って申し訳ありません、という気持ちでいっぱいになりました。私の中で何か変化が起きたらしく、第一楽章にもやはり感動したのでした。
思い出したのですが、25年ほど前かもしれませんが、吉田秀和さんは、バーンスタインがウィーンフィルを振ったベートーヴェンの田園交響曲を「恍惚とした美しさ」と表現したのでした。まさに、このブラームスにも恍惚とした感じを感じずにはいられないのでした。
それから、随所に聞こえるバーンスタインの低いくぐもった歌声。録音に混ざっているのですね。キース・ジャレット状態です。
今更ながら、バーンスタインのことが分かるようになった気分です。本当に嬉しいですね、こういう瞬間は。音楽聴いていて良かったです
- 作曲==ヨハネス・ブラームス
- 指揮==レナード・バーンスタイン
- 管弦楽==ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
- 録音==1981/10
- 場所==ウィーン楽友協会大ホール