2012/2013シーズン,Benjamin Britten,NNTT:新国立劇場,Opera

明日も新国立劇場で公演がありますね。

14時からですので、会社勤めの方には辛いですが、かえってすいているかもしれません。

 

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今日も、新国立劇場「ピーター・グライムス」の凄かった演出の一部を書き留めておきたいと思います。

 

第三幕の最終部分。

ここで、エレンがみせる仕草が凄かった、という話。

 

村人達が教会の座席のように並んだ椅子に座っていて、全員が紙を顔の前に掲げて、前を向いて歌を歌っているわけです。

これが先日書いた通り、「群生相」のもと行動しているという証です。

ピーター・グライムスの船が沈んでいく知らせを、皆が知らん振りをしています。

 

心を痛めているのはエレンだけ。

 

でも、村人達の白い目に耐えかねるようにエレンも最後には座席について、他の村人と同じく紙で顔の前に掲げるところで、ちょうど幕が下りるという演出でした。

 

エレンも、最後にはやはり、ピーターを死に追いやった村人達の中に戻っていかなければならなかったわけです。生きるために。

エレンの心の中が見通せるような気がして、心臓をわしづかみされてしまいました。

悔しさとか無力感とか虚しさとか、そういう気分が入り交じった複雑な心境なんだろうなあ。

あるいは、エレンもピーターを愛していたはずで、大きな喪失感があったはず。それからピーターを裏切っているという背徳の感情もあったのでしょう。

 

あれは、我々社会に生きる人間が、生きるためにやっていることなんだよなあ、なんて思ったりしました。

一番観ていて辛くて、印象深い場面でした。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

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私の愛する新国立劇場。片思いですけれど。建築的にも大好きです。

昨日に続き、ピーター・グライムスが感動的だった件の第二回目です。

デッカーの演出について

非常にシンプルな舞台構成でした。八百屋舞台になっていて、遠近感のあるボックス構造の舞台装置を使って、テーブルや椅子を配置することで、酒場、教会、ピーターの部屋を作り出していまにテーブルや椅子を出して舞台を作っていく格好でした。

舞台装置としては新鮮さはあまりありませんでしたが、物語と音楽との緊密さは抜群で、効果的な様々な所作や仕掛けが素晴らしかったと思います。

演出の話とストーリーの話が混ざりますが、考えたことをいくつか書いてみます。

集団の動物的で残忍な性質

この物語のテーマは、集団の残忍であまりに動物的な性質と、個の対立と言って良いと思います。それは相当に古く根深いものでしょう。

トノサマバッタは、普通は緑色をしていますが、大量発生をすると茶色に変色し、その能力も変化します。これを「群生相」と言い、肉食性が強まり、気が荒く攻撃的になります。

どうやら人間も同じようです。

一人一人は善人でも、寄り集まると、残酷になって異質なものを追い出そうとするわけです。

これは、生物であればいずれも同じです。あるいは、生物の細胞レベルでやっていることと同じ。

だとすれば、これは動物的であって人間的ではないのかも。

人間性の本質が理性にあるとすれば、の話です。

こうした、集団がもつ動物性は、今回の演出の随所に現れていた気がします。

証拠がなく、思い込みから、ピーター・グライムスを糾弾し、裁判で無罪となりながらも、ピーター・グライムスが殺人を犯したと思い、証拠なく糾弾を始めたり、集団の中に入りきれないエレンをにらみつけたり。。

あるいは、酒場の騒ぎでは、人々は鶏や豚などの動物の仮面をかぶっているシーンも。すこしありがちですが、効果的でした。

いつもは真っ黒な洋服を着ている村の女性達が、真っ赤なドレスに着替えてダンスに興じるという趣向でした。

日頃は抑圧している自らの野生の欲望は、赦されれば集団の中において奔放に解放されるということなのでしょう。

一人一人は「弱い」けれど、集団になると強く残忍です。デモの破壊行為や、戦争の残酷さがそれを物語っている気がします。

 

さて、もう少し書きたいことがあるのです。下書きはあるのでまた明日。

 

今日も、サー・コリン・デイヴィス盤を聞き返しているんですが、感動がよみがえってきます。ここだけの話、ブリテン自身の盤より好きかもしれません。。

ではまた明日。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

初台の新国立劇場で、ブリテンのオペラ「ピーター・グライムス」観てきました。
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これまでになく感動して、しばらく涙がとまらないぐらいでした。
これは、なかなかない機会。本当によい体験で、人生変わったぐらい衝撃的でした。
まずは歌手の方々を中心に。
席は最前列でした。指揮のアームストロングが低い声で唸りながら指揮をする姿を直ぐ側で眺められるという贅沢な位置でした。歌手の声が直接伝わってきて直接心臓が響く感じでした。ただ、オケの音が意外と聞こえないのがちょっと残念。オケが見えないのも残念。
ピーター・グライムスを歌ったのはスチュアート・スケルトンでした。不器用で傷つきやすく、神経質で病的なピーターを演じきっていました。
第三幕二場のピーター・グライムスのモノローグのところが圧巻でした。
「ピーター・グライムス!」と歌う合唱が舞台裏から聞こえるんですが、ピーターの幻聴に他ならないわけで、それに苦しみ身もだえながら、独白するところは、本当に圧巻で、あれはもう私の中では最高レベルの体験でした。
本当に涙がとまらんですよ。。
エレンを歌ったスーザン・グリットンもよかったですよ。
当然ながら完璧な歌唱で、ピーターに同情しながらもピーターを救えない無力感にさいなまれ、最後には集団にやむなく従ってしまうエレンの心境を見事に演じていました。最後の幕切れのシーンについては次回書きますが、滂沱でした。
バルストロードを歌ったジョナサン・サマーズ。私はこういう役柄の方が大好きです。
こういう方が安定感をもってアンサンブルを支えてるからこそ、全体が引き締まるわけです。あとは、こればかりは欧州文化圏出身者ならではとなる軽妙な挙措がいいのですよ。第一幕の最後の酒場で、皆が輪唱を始めるところ、あそこの歌い出しと軽妙な演技がすばらしく、なぜかあんなシーンなのに深く感動してしまいました。
あとは、望月さんです。この方も最近新国の常連になりつつある感があります。巧くてカッコイイのですよね。絶対に外さない安定感が素晴らしいです。
あとは合唱が今回も素晴らしかったです。たしか、「さまよえるオランダ人」あたりから、合唱が格段になってきた記憶があります。今回も予想に違わず素晴らしかったです。

個人的な件

昨日の夕方から今朝まで色々あって、仕事でした。もう、ほとんど、行けないんじゃないか、とあきらめていたんですが、今朝、三時間ほど仮眠して、気合いで初台に行ったわけです。挫けなくて本当によかったです。この体験を逃すのは人生の一大事でした。
もちろんしっかりレッドブルでドーピングしました。
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続きます。明日も。
※ 公演は11日と14日にもありますよ。是非!