印象的場面──新国立劇場の「ピーター・グライムス」が感動的な件 その3

明日も新国立劇場で公演がありますね。

14時からですので、会社勤めの方には辛いですが、かえってすいているかもしれません。

 

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今日も、新国立劇場「ピーター・グライムス」の凄かった演出の一部を書き留めておきたいと思います。

 

第三幕の最終部分。

ここで、エレンがみせる仕草が凄かった、という話。

 

村人達が教会の座席のように並んだ椅子に座っていて、全員が紙を顔の前に掲げて、前を向いて歌を歌っているわけです。

これが先日書いた通り、「群生相」のもと行動しているという証です。

ピーター・グライムスの船が沈んでいく知らせを、皆が知らん振りをしています。

 

心を痛めているのはエレンだけ。

 

でも、村人達の白い目に耐えかねるようにエレンも最後には座席について、他の村人と同じく紙で顔の前に掲げるところで、ちょうど幕が下りるという演出でした。

 

エレンも、最後にはやはり、ピーターを死に追いやった村人達の中に戻っていかなければならなかったわけです。生きるために。

エレンの心の中が見通せるような気がして、心臓をわしづかみされてしまいました。

悔しさとか無力感とか虚しさとか、そういう気分が入り交じった複雑な心境なんだろうなあ。

あるいは、エレンもピーターを愛していたはずで、大きな喪失感があったはず。それからピーターを裏切っているという背徳の感情もあったのでしょう。

 

あれは、我々社会に生きる人間が、生きるためにやっていることなんだよなあ、なんて思ったりしました。

一番観ていて辛くて、印象深い場面でした。