端を渡り路地をぬけるとザッテレ地区で、このあたりにスーパーマーケットがあると目星を付けていた。確かに、スーパのレジ袋をもってあるく女性とすれ違ったから、このあたりにあるのは間違いないのだろうが、派手な看板など景観保護上の理由からまったく望めないから、なかなか見つからない。やむなく、子供を遊ばせている、ヴェネツィア人とおぼしき若い女性に尋ねてみると、実に親切にスーパーマーケットの場所を英語で教えてくれる。教えて貰ったおかげで難なくスーパーに到着。旅を安くするには、夕食はレストランで取るのではなく、スーパーで買った食材を部屋で食べるのがコツだ。とはいえ、イタリアのスーパーに入ると、日本にはないものがたくさん売っているからついつい買い込みすぎるのが痛い。生ハムとサラダワインを購入。それでも2000円ぐらいのもので、レストランより全然安い。
スーパーはザッテレ運河に面していて、赤い夕陽の甘い色に染め上げられている。ビルよりも大きな巨大な客船が、タグボートに牽かれて運河を外海へと向かっている。男と女が抱き合っていて、年配の女性がベンチに腰掛け夕陽を眺めている。現実とは思えない幻想的風景に体も心も溶けてしまう感じ。
イタリア紀行2007 その36 夕陽
ベーム/シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」
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ナクソス島のアリアドネ、今週末観に行くのですが、予習ということで、ベームが振っているDVDを購入しました。理由は、ヤノヴィッツさんのアリアドネとコロさんのバッカスを聞きたかったからです。
とりあえずは音だけ聞いているのですが、アリアドネのヤノヴィッツさんの澄み切った声でうっとりです。バッカスのコロさんは力強いのですが、ピッチが少し不安定だな、と感じました。この曲は、いつもシノポリ盤で聴いているのですが、このベーム盤はそれよりテンポが落とされた演奏です。(聴きなおしてみると冒頭部は遅いですが、ほかはシノポリ盤より極端に遅いと言うことはありませんでした)。音作りはやはりシノポリとは違っていて、重量感のある演奏に聞こえます。グルベローヴァさんのツェルビネッタも重みのある迫力あるコロラトゥーラです。映像みたらもっと楽しそうです。
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 指揮==カール・ベーム
- プリマドンナ/アリアドネ==グンドラ・ヤノヴィッツ
- テノール/バッカス==ルネ・コロ
- ツェルビネッタ==エディタ・グルベローヴァ
- 作曲家==トルゥデリーゼ・シュミット
- 音楽教師==ワルター・ベリー
- 録音==1977年10月~11月
ケンペ/シュトラウス「メタモルフォーゼン」
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昨日から、シュトラウスの「メタモルフォーゼン」を聴いています。手元にあったケンペ指揮のドレスデン・シュターツカペレ盤をきいております。クラシックCD好きのホルン吹きニョッキさんのブログでブロムシュテット盤が紹介されていたのに触発されて、何度も何度も執拗に聞いています。難しい曲ですが、とても勉強になります。
この曲が作曲されたのは、第二次大戦末期で、ワイマールのゲーテハウス、ドレスデンのゼンパーオーパー、ミュンヘンのオーパー、ウィーンのオーパーが連合国により破壊されたことへの悲嘆と寂寥、去りゆくかつての「ドイツ」への追悼の為に書かれた曲です。ワイマールは若いシュトラウスが劇場指揮者だったところですし、ドレスデン、ミュンヘン、ウィーンがシュトラウスにとって重要な街であったことは言うまでもありません。
23人の弦楽奏者(ヴァイオリン10、ヴィオラ5、チェロ5、コントラバス3)は、弦楽合奏のような五部構成ではなく、23人がそれぞれ異なったパートとして独立して動くいており従って譜面は23段となります。
以下の譜例が主要なテーマですが、それがいつの間にか、ベートーヴェンの英雄交響曲の葬送行進曲に変化していくわけで、葬送行進曲は曲の最終部でコントラバスによって提示されますが、そこに至るまでに、以下のテーマが幾重もの波のように打ち寄せてきて、それもあらぬ方向から(あらぬ調性から)おとずれるわけで、無調的なたゆたう波間に揺すぶられる快感を感じることが出来ます。
弦楽合奏と言うこともありますので、シュトラウス「カプリッチョ」の冒頭の六重奏を思い出したり、あるいはマーラーのアダージェットを思い出したりしながら聴いていました。
ケンペ盤は少々録音に翳りが生じていて(私のiPodとクワイエット・コンフォートの特性かもしれませんが)、違和感を感じることもあるのですが、十二分に勉強することが出来ました。
- 指揮==ルドルフ・ケンペ
- 管弦楽==ドレスデン・シュターツカペレ
- 録音日==記載なし
- 録音場所==記載なし
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新国立劇場オペラ・セット券
新国立劇場の会員サービス「クラブ・ジ・アトレ」に入りますと、オペラの年間シートを優先予約することが出来ます。日曜日にメールで2008年/2009年シリーズのラインナップ決定の通知が来ましたが、早速昨日には年間シート=オペラ・セット券の申込書が送られてきました。
いろいろ種類はあるのですが、会社勤めの選択肢としては「ホリデー(全演目休日で固めたセット)」か、「ホリデーA(10演目の内前半5演目のセット)」、「ホリデーB(10演目の内後半5演目のセット)」の三種類しかないのですが、そのなかから選んで買うべきかどうか、を決めなければなりません。
座席のランクはS席、Sサイド席、A席のみ。B席以下のランクをセット券で取ることは出来ませんので、自然と値段が張ることになります。「ホリデー」の場合、会員割引の10%オフが適用になるとはいえ、10万円を優に超えてしまいます。「ホリデーA」「ホリデーB」もやはり10万円には届きませんが、それでもうならなければならない値段ととなります。
値段に対する感想はあくまで主観的なものですので、たとえば年収1億円の方々にとって見れば、どうと言うことはない数字なのかもしれませんが、会社勤めにはちと辛い。
セット券を頼まなくても、結局は毎公演毎に送られてくる優先購入申込書を使えば、極端な人気演目でなければ見られることが多いのです。しかも、B席を取ることだって出来る。優先購入で毎回B席を取れれば、オペラ・セット券よりリーズナブルな料金で観ることが出来ます。
オペラセット券のA席って、本当に良い座席なんですよね。二階1列14番とか15番とか、ほぼS席に間近い席で観られるわけです。良い場所で観るのは大事なのですが、値段が……。悩みどころで困っています。財務大臣ともう一度相談してみようと思います。
イタリア紀行2007 その35 カンツォーネとアフリカの男達
天気に恵まれた一日も終ろうとしていた。サンマルコ広場から路地に入って、ザッテルレ地区まで歩いて帰ろうと、入り組んだ細い路地をグラン・カナルをわたるアカデミア橋まで向かう。所々で路地は小さな水路様なカナルにぶつかるのだが、観光客を乗せたゴンドラが往来していて、漕ぎ手がカンツォーネを歌いながら船を動かしているのに出くわす。バリトンの歌声は立ち並ぶ石造りの建物に反響して思いのほか美しいリヴァーブ感を醸成しているのだが、もっと驚くのはその声の美しさで、歌を職業とする日本人でも絶対に出ないような甘さと豊かな倍音を持つ。つややかな声で、ゴンドラが遠ざかるに連れ歌声も反響の中に隠れていく。僕はこの歌声を聞いて感心すると同時に絶望感をも覚えてしまう。市井の男でさえ持つこの歌声の美しさ。やはり西欧の歌は西欧人にしか歌えないのではないか、という思い……。
アカデミア橋は、グランカナルにかかる木造の太鼓橋だが、橋上では黒い肌のアフリカの男達がブランドもののカバンや絵画を売っていて、警察が来ればすぐに逃げられるためだろうか、手に持てるだけのバックをもって、通りすがりの観光客に愛想笑いを振りまいている。イタリアに来てからこの手の男達を何度見ただろう。フィレンツェにもいたこの男達の売っているものは何故か同じだ。観光客の持つ気怠い雰囲気のなかに、生活のために働く男達、それもきっと違法な商売なのだ。ヨーロッパの繁栄の裏側には収奪されたアフリカの大地が横たわっているということなのだ。
ばらの騎士再び。そして来シーズンの新国立劇場は?
新日本フィルの定期公演で「ばらの騎士」がラインナップに入っています。
http://www.njp.or.jp/njp/information/pdf/2008-2009_program.pdf
- マルシャリン==ナンシー・グスタフソン
- オクタヴィアン==藤村実穂子
- オックス==ビャーニ・トール・クリスティンソン
- ゾフィー==森麻季
- 指揮==クリスティアン・アルミンク
2008年9月25日(木)と27日(土)の二回の公演です。行くべきか行かぬべきか、と言う問題。
ちなみに、新国立劇場の2008年/2009年公演のラインナップも発表になりました。
- ☆新制作『トゥーランドット』プッチーニ 2008年10/1~15
- ☆『リゴレット』ヴェルディ 2008年10/25~11/3
- ☆新制作『ドン・ジョヴァンニ』モーツァルト 2008年12/5~12/15
- ☆『蝶々夫人』プッチーニ 2009年1/12~24
- ☆『こうもり』J.シュトラウスⅡ世 2009年1/27~2/1
- ☆『ラインの黄金』ワーグナー 2009年3/7~18
- ☆『ワルキューレ』ワーグナー 2009年4/3~15
- ☆新制作『ムツェンスク郡のマクベス夫人』ショスタコーヴィチ 2009年5/1~10
- ☆新制作『チェネレントラ』ロッシーニ 2009年6/7~20
- ☆新制作『修禅寺物語』清水脩 2009年6/25~28 中劇場
ラインナップ的には、プッチーニの二本ははずせないですし、ワーグナーもはずせない。こうもりも見たことないんですよね。だから行きたい。ドン・ジョヴァンニにもチェネレントラにも惹かれます。詳しくはこちらにて。
http://www.nntt.jac.go.jp/cgi-bin/cms/kouen_list01.cgi#season2
ちなみに、6月には、コンサート形式で、ドビッシューの「ペレアスとメリザンド」が聴けるようです。こちらにも行きたいですね。
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000077_opera.html
財布が幾らあってもたりません。CD我慢するしか……。ちなみに、来週の日曜日には関西二期会の「ナクソス島のアリアドネ」を聴きに行きます。予習しないと。
お詫び
この一週間、頂いていたコメントですが、コメントの新着通知が私宛のメールで届かないという事象により、コメントにお返事できませんでした。申し訳ありません。rudolf2006さまのご指摘で判明致しました。ご迷惑をお掛け致しまして申し訳ありません。遅くなりますが、これからお返事させて頂きます。
申し訳ありませんでした。
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原因が判明しました。受け先となっているGMAILで、コメント通知メールがなぜかスパムメールに判定され、コメント通知が届いておりませんでした。申し訳ありませんでした。
静謐な休日その1──バルシャイ/ショスタコーヴィチ交響曲第10番
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何年か前に吉田秀和さんが絶賛されていたバルシャイのショスタコーヴィチの交響曲全集から、9番と10番のカップリングを聴きました。吉田さんが絶賛されたのはかなり前だと思うのですが、まだまだCDショップでは扱っている模様です。値上がりしているようですが。一番安いのはHMVのようですね。
どうしても耳慣れた10番の方を聴きたくなってしまいます。端正なショスタコーヴィチで、ロジェストヴェンスキーのような爆発や咆哮はないけれど、抑制された透徹とした美しさを湛えています。テンポは中庸、と書くと、面白みがないように思えるけれど、丁度良いテンポという意味。あまりテンポを動かさないで、不動の精神で曲の中央へと斬り込んで行っています。木管が強力で、特にフルート、ピッコロ群がかん高い狂気じみた音を出していてとても効果的。弦楽器も美しいです。
第二楽章の突破力は速いテンポも相俟って激烈、鋭利な刃物に触れるような空恐ろしさを感じますね。個人的に大好きなのは第一楽章。第二楽章は別格ですが。特に第一楽章の中盤で盛り上がりを見せるところのトランペットソロが良いですね。
ショスタコーヴィチと言うことで言うと、今週の頭にロジェストヴェンスキーの8番を聴いたわけですが、木管の使い方が素晴らしい作曲家なのですね。演奏される木管の方は大変だと思いますけれど、クラリネットのハイトーン(あってます?)とか、美しいソロフレーズが満載です。もし僕がサックスではなくクラリネットやオーボエをやっていたら、是非吹いてみたい、吹けたらいいな、と思います。
- 指揮==ルドルフ・バルシャイ
- 演奏==WDR交響楽団(ケルン放送交響楽団)
- 録音==1996年10月
- 録音場所==Philharmonie, Köln
寒さの厳しい一日でしたが、静謐な休日でした。起きたのはいつものように3時半過ぎ。それから、仕事を始めたのですが、なかなかはかどらず、呻吟。朝食を取って、少し休んでから、いつものカフェへ。8時半過ぎから12時までみっちり。おかげではかどりました。帰宅してから音楽を聴いてWeblogを書いたり。静かな休日でした。明日は天気が落ち込んで夜には雪が降るとか。明後日の通勤は大丈夫かな。電車止まったら面倒だな、などなど。
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ステークホルダーと久々に対立した ──ドミンゴ、シュテンメ、パッパーノ/ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
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このCDを買ったのは、ドミンゴのトリスタンって、どういう感じなんだろう?という理由から。期せずしてシュテンメのイゾルデを聴くことが出来たというわけです。なんともかんとも。
マルケ王の、ルネ・パペは、昨年10月に見に行ったバレンボイム指揮のベルリン州立歌劇場でも聴きましたが、やっぱり昨年のライヴのほうが感動しました。やはりクライバー盤のクルト・モルと比べてしまいます。
シュテンメは女傑的イゾルデで力強い。イゾルデの孤高の強さを感じます。聴いていて本当に安心できます。ドミンゴとの二重唱では勝利しています。やはりドミンゴは年齢でしょうか。さすがに往時の艶のある甘みは望めません。録音当時は63歳ぐらいでしょうか。しかし、随所に若い頃の面影が現れるのが楽しかったです。
通勤時間に聴いたので、1幕と2幕を中心にシュテンメの登場シーンを愉しみました。
- トリスタン==プラシド・ドミンゴ
- イゾルデ==ニーナ・シュテンメ
- ブランゲーネ==藤村実穂子
- マルケ王==ルネ・パペ
- クルヴェナール==オラフ・ベール
- 管弦楽==コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
- 指揮==アントニオ・パッパーノ
- 録音==2004年11月~2005年1月
- 場所=アビーロードスタジオ1
今日は、久々に、相手と対立。どうも折り合いがつかない。どうも僕の交渉手法が良くなかったみたいですね。ここまで対立したのは久々で、少々疲れました。まあ、そんなことは仕事やる上では、当たり前のことですから、別に落ち込んだりはしませんけれど。落ち着くところに落ち着くでしょうから、気を楽にして来週も交渉します。しかし、ステークホルダーが多すぎるので、調整が面倒だなあ。組織での仕事はこれだから面倒です。かといって、一人の仕事のほうが楽かと言われれば、そんなこと全くないんでしょうけれど。まあ、気長に気長に。
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辻邦生「春の風 駆けて」その3 終らせること
- 春の風駆けて―パリの時
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- 発売元: 中央公論社
- 発売日: 1986/02
- 売上ランキング: 1013849
昨年読んだ「春の風 駆けて」のメモがはらりと出てきた。今回で最終回。
辻邦生さんが、小説を書いているときのこと。とにかく、小説を書くこと。それも、いつまでに何枚書く、と言うような功利主義的な書き方ではなく、毎日少しずつ時間を気にせずに書いていき、気づいたらできあがっている、と言うのが理想的なのである、という。
思ったこと。現代は、何でもスケジュール化、タスク化されていて、時間やノルマに追われて仕事をするのだけれど、そうじゃない視点もある。ともかく、作品(仕事でも、小説でも、プログラムでも、ウェブもそうだが)を完成させること。形にすることが第一義的に重要なのだ。才能がある、才能がない、というのは関係ない。ただ、継続して何かを作り続け、完成に導き続けること。これしかない。