Classical,Richard Strauss

R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき
R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき
  • アーチスト: ブロムシュテット(ヘルベルト)
  • レーベル: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 価格: ¥ 1,050
  • 発売日: 2002/06/21
  • 売上ランキング: 86
  • おすすめ度 5.0

ブロムシュテットが振るドレスデン・シュターツカペレで「ツァラトゥストラはかく語りき」を。

冒頭の金管の絢爛さに息を呑む。そして弦楽器の透き通った冷たい水で喉を潤すような清涼感。速度は中庸で4曲目「喜びと情熱について」の弦楽器の疾走感と分厚い金管部のコントラスト感がたまらない。6曲目「学問について」はじっとりとした足運びでコントラバスが唸りはじめる。やや抑え気味のテンポを途中で速いテンポに切り替える素早さたるや。手堅いです、ブロムシュテットさん。本当に「流れ」で演奏してないというのが分るんですよね。全権掌握しています、という感じ。

録音も良い感じです。ドレスデンのルカ教会ですので、クライバーの「トリスタンとイゾルデ」と同じ場所ですね。

  1. Einleitung (導入部)
  2. Von den Hinterweltlern (現世に背を向ける人々について)
  3. Von der großen sehnsucht (大いなる憧れについて)
  4. Von der Freuden und Leidenschaften (歓喜と情熱について)
  5. Das Grablied (埋葬の歌)
  6. Von der Wissenschaft (科学について)
  7. Der Genesende (病より癒え行く者)
  8. Das Tanzlied (舞踏の歌)
  9. Nachtwandlerlied (夜の流離い人の歌)

Opera

昨日は、新年の記念に、ということで、 NHKニューイヤー・オペラ・コンサートに行ってまいりました。教育テレビでも生放送されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

全体的な感想ですが、歌のほうはといえば、うまい方もいらっしゃれば、残念ながらそうでない方もいらっしゃる。逆に言うと、うまい方というのがどういう方なのか、どういう歌がうまいと感じるのか、ということを学んだ、と言うことだと思います。ともかく、いろいろな曲を聴けたのはとても楽しかったですし、素晴らしい歌唱を披露された歌手の方も少なくなかったので、思った以上に良かったです。

感じたことですが、うまい方は、大げさなビブラートをかけないでも、ちゃんとピッチが安定しているのがわかります。逆に、ビブラートがかかりすぎている方、つまりビブラートのピッチ幅、つまり音程の高低が大きかったりすると、かえって音が濁ってしまいますし、ロングトーンのピッチコントロールが出来ていないのではないか、という疑いを持ってしまうのです。これは、僕が昔吹いていたサクソフォーンの演奏をしたり、自分の演奏を聴いたりして感じていたことで、もちろんほかの管楽器の方も同じだと思うのです。ビブラートが悪いというわけではなく、かけ方の問題だと思うのです。

ちなみに、森麻季さんも出ておられましたが、僕としては、森さんは本当に巧い方なんだなあ、という印象でした。ピッチのずれもあまり感じませんでしたし、ビブラートもそんなに耳につくこともありませんでした。連れは、すこし声が小さいのでは、という印象を持ったようでしたが、僕はそれはあまり気になりませんでした。

などと、多少つっこんだ意見を書いてしまいました。歌うと言うことがどれほど難しいことなのか、ということは分かっていますし、ステージに立っておられた方々がどんなに優秀な方々なのかと言うことも分かっているのです。ごめんなさい。

昨日の生放送をビデオに撮っておきましたので、今日明日にでも見てみようと思います。また違う発見があるかもしれません。

曲目は、こちらのNHKのページをご覧ください。

Miscellaneous

NewYear

Museum::Shushi Bisに関連する今年の目標を立ててみました。

  1. 今年も年間100冊本を読む
    ジャンルを選ばず、むさぼるように読みたいと思います。少なくとも100冊にはなんらかのかたちでタッチしたいですね。本だけではなく雑誌もです。ともかく活字を浴びるように読みたいです。もちろん、熟読する本だけではなく、必要なところだけ読む本もあるでしょう。仕事で使う本もあるでしょう。なので、全てこのBlogで紹介できるとは限りません。
  2. 辻邦生師の本を20冊読む
    こちらは、できるだけ熟読したいと思います。また新しい発見をしていきたいと思います。
  3. 岡本かの子全集を読みはじめる
    昨年ちくま文庫版の全集を入手しましたので、少しずつ読み始めたいと思います。月に一度は紹介したいですね。
  4. プルーストを再開する
    いまさらですが、プルースト「失われた時を求めて」を再開しようと思っています。長い本なので息を長くして読んでいかなければならないわけですが、ちょっと間が開きすぎました。「ソドムとゴモラ」まで行っているのですが、今年こそ再開しなければ、と思います。
  5. Museumu::Shushi Bisのほぼ毎日更新
    昨年はほぼ毎日更新できたのではないかと思います(まとめて投稿したこともありましたが)。今年も「ピアニストがピアノを弾くように、文章を書く」ことができるようになるべく、頑張ろうと思っています。
  6. 月に一度はコンサートかオペラに行って、感想をきちんと書く
    これは昨年の継続です。やはり演奏会を聴きに行かないと行けませんね。
  7. 月に4枚以上は新しいCDを聞いて、感想をきちんと書く
    これは今年から。買ったり借りたりしたCDについてきちんと感想を書けるようにしたいです。音楽を聴くのは楽しみでもあるのですが、楽しみの中にも計画性がなくてはならず、さらに計画を実現するための強い意志が必要である、と思った次第なのでした。
    音楽の感想を書くのは本当に難しいことなのだ、ということを昨年は改めて思い知った一年になりました。既存の色眼鏡をかけずに、あるいは色眼鏡をかけていることを自覚しながらできるだけ誠実に自分の思ったことや考えたことを書けるようになりたいです。本当は音楽理論の勉強もしたいのですが、そこまで手が回るかどうか、というところです。
  8. 3ヶ月に2回(つまり年間8回)は山歩きに出かける
    体力を付けましょう。何をやるにも体が資本です。
  9. 痩せる!(60キロ台まで痩せよう!)
    病気罹患リスクを下げましょう。見た目も爽やかに! 上に同じく何をやるにも体が資本です。
  10. 健康管理の重視
    実は昨日(1月2日)に熱を出して寝込んでしまいました。気をつけていたはずなのですが、思い起こせば寒さに対する対策がきちんとできていなかったような……。細かい点もおろそかにせず、健康には気を遣っていきたいと思います。

さて、今年も頑張ることに致しましょう

Italy2007

Italy2007

船上では若者達のグループが、船員達と話をしている。若者グループの一人で、サングラスをかけた金髪の男が、船員に手を合わせて懇願している。どうやら、警察を呼ばないで欲しいと頼んでいるらしい。僕らは浮き桟橋で船上の様子を見守る。浮き桟橋には、ヴァポレットが停泊したままなので、後続のヴァポレットが浮き桟橋に接岸できないでいて、カナルに停泊しているのだが、状況を理解したらしく、通り過ぎていってしまう。通り過ぎたヴァポレットに載るつもりだった老婦人がなにやら船員に文句を言っている。

そうこうしているうちにモーターボートが近づいてくる。青い船体にはPOLIZIAの文字が。とうとう警官が来てしまったのだ。警察のボートはヴァポレットの右舷に乗り付けて、警官がヴァポレットに乗り込んでくる。若者達は必死に懇願しているのだが、一番ヤバそうで、ラリっている若者、その若者は手から血を流しているのだが、その彼を三人がかりヴァポレットから引きずりおろして、怒声と共に壁に押しつけて拘束しようとしている。若者は必死に抵抗している。乗客達が一斉にヴァポレットに乗り込む。僕たちも一緒に。

満員のヴァポレットは運河を進んでゆく。それでも騒いでいる若者達。ヴァポレットは30分遅れで、僕らの目的地、ザッテッレに到着。ヴェネツィア到着早々のトラブルで疲れてしまった。

Miscellaneous,Music

New Year

いよいよ年が明けて2008年となりました。今年も辻邦生師のことや音楽のことなどを書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

写真はヴェネツィアの夜明けです。


昨夜は紅白歌合戦を22時頃まで見て眠ってしまいました。後半は見られませんでしたが、前半で気になる歌手を2人見つけました。

寺尾聡さんの「ルビーの指環」では、寺尾聡さんのスタイルの格好良さと、秀逸なアレンジ、安定したバックバンドに支えられて、スタイリッシュで大人なサウンドを繰り広げていました。

それから布施明さんは、ひとときに比べて多少歌唱力は落ちているのですが、それでも迫力或る曲芸のようなピッチコントロールを見せてくれました。声の美しさ、張り、音域は出演していたどの歌手と比べても絶品でした。もし往年の若き布施明がテノール歌手としてデビューしていたら、という見果てぬ夢。ロドルフォとか、カラフとか、ピンカートンなどプッチーニのテノールをを歌ってもらいたいなあ、と思うのでした。

Classical

J.S.バッハ:ブランデルブルク協奏曲(全曲)
J.S.バッハ:ブランデルブルク協奏曲(全曲)
  • アーチスト: ゲーベル(ラインハルト)
  • レーベル: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 価格: ¥ 2,160 (10% OFF)
  • 発売日: 2000/05/24
  • 売上ランキング: 1209
  • おすすめ度 5.0

ブランデンブルク協奏曲第三番を、ラインハルト・ゲーベル指揮のムジカ・アンテイクゥワ・ケルンの演奏にて。強烈なのが第三番の終曲のAllegro。ここまで速い演奏は聴いたことがありませんでした。いくらAllegroと言ったって、ここまで速いのは想定外です。しかもうますぎる。ぴったりそろった演奏。人数が少ないからあいやすいというのもあるのでしょうけれど。先だって聴いたカラヤン盤だってここまで速くはありませんでした。

そういえば、この前図書館から借りてきたクイケンさんの盤も速かったなあ、と。ピリオド系の方の方がテンポをあげるのでしょうか、などと思いました。


これで、今年のブログの更新は終ります。今年もいろいろ試行錯誤をしながら、なんとか毎日とまではいきませんでしたが、8割ぐらいの日にちはかけたのではないか、と思っています。

辻邦生師は「ピアニストがピアノを毎日弾くように、毎日毎日かいて、書くことを意識せずとも書くことが出来るようにならなければならない」といったことをおっしゃっているのですが、まさに「書くこと」を自分に課する場として、このブログを書くことに大きな意味をみているところです。何はともあれ、読んでくださっている皆様のおかげでここまで書くことが出来ているのだ、と思っております。大変感謝しております。

また、今年はブログのプラットホームを、FC2からMovable Typeに変更致しました(※昨年も変更したのですが……)。ご不便をお掛けしてしまった点もあるかと思いますが、どうかご了承ください。

また来年も書きつづって参りますので、どうか暖かくお見守りくだされば、と存じます。良いお年をお迎えください。

Italy2007

Italy2007

駅前広場は、同じユーロスターで到着した旅行客であふれかえっている感じ。イタリア語はよく分らないのだが、なんとか市内交通チケット売り場を見つけて、72時間券を購入し、旅行前に穴が開くほど眺めたヴァポレット(ヴェネツィアの水上バス)の路線図の指示通り、51番のヴァポレットが着く黄色い箱形の浮き桟橋の列に並ぶ。

このときから、何かがおかしいな、と感じていたのだった。サングラスをかけた短髪のブロンドの若者が、仲間とおぼしき黒髪の若者と握手をしている。若者の仲間が何人かいるらしく、知り合い同士大声で話をしている感じ。もちろん何を話しているのか分らない。そんなこんなで、51番のヴァポレットに乗ろうとする人々は浮き桟橋に入りきらずに長い列を作っている。

到着時間になったというのに、なかなかヴァポレットが現れず、気をもんでいると、ようやくとオレンジ色の電光掲示に51番を表示させる象牙色のヴァポレットが到着。この時点で、待合い客であふれかえっていて、ヴァポレットに全員乗れるかどうか分らない状態。次の便は20分後だったので、待っても良かったのだけれど(後から思えばだが……)、早くホテルについて落ち着きたかったので、重いスーツケースを引きずりながら満員のヴァポレットに乗り込むことになる。

この時点で、待合い客に圧迫されて、連れとはぐれてしまう。まあ、おそらく乗れただろうと思い、甲板から一段下がった船室に降りてしまう。なんとかスペースを確保する。階段の横に設えられた一人分の座席には、黒いアタッシュケースを持った銀髪の初老のビジネスマンが座っていて、彼と眼が合ったのでニッコリ笑って挨拶。

ヴァポレットはようやく動き出すのだが、何か騒がしい。さっきの若者達が甲板の船室の間を言ったり来たりしている。そうこうしているうちに、船室の後ろの方で、若者達が天井を叩きながらわめき出す。何かの歌を歌っているらしい。これは、サッカーファンなのか? いわゆるフーリガン的な若者達なのではないか、これはちょっと嫌な連中と一緒になってしまった、と思う。さっきのビジネスマンが、手招きして、こっちの方が空いているよ、と彼の座席前に入ってくるように勧めてくれたので、若者達から待避するような格好で、ビジネスマンの座席前に移動。

次の停留所に到着。降りる乗客、乗る乗客でヴァポレットはごった返す。若者達、降りてくれないかな、とおもうのだが、まだ騒いでいる。船室内へと入っていく乗客達は、若者が騒いでいることなど全く知らぬまま。舫綱を解いて、ヴァポレット出発。

ここからだった。騒ぎは大きくなる。麻薬をやっているからなのか、酒に酔っているからなのか、よく分らないが、完全にラリっている若者二人が船客に絡み始めている。そのうち一人は、手から血を流していて、手のひらは血糊でドロドロになっている。その血がどうやら、船客の服を汚したらしい。怒った船客が、甲板にあがって、操舵室の船長になにかを訴えている。

ラリっている若者が、僕の目の前に立つ。眼があったので、ニッコリと笑ってやる。なにか呆けたような目つきをしていて、これは常人じゃないな、と思う。だが、全然恐怖感なし。驚くぐらい冷静だった。若者は、初老のビジネスマンになにやら話しかける。厳しい顔をしていたビジネスマンも、ニッコリと微笑みながら若者を睨んでいる。ものすごく格好がよい。映画の一シーンを観ているような錯覚に陥る。あの落ち着きを払った微笑みは賞賛に値する。一生忘れないと思う。

ヴァポレットは次の停留所に舫をかける。そのまま動かない。起こった船客が船長に捲し立てている。ヴァポレットは動かない。何かが起こったのだ。そのうちに乗客が浮き桟橋に移動しはじめる。ビジネスマンもやはり船を降りていく。これは、なにかがあったな、ということで、スーツケースを担いで一旦、ヴァポレットを下りる。ここで連れと再会。連れはおびえきっている。

Tsuji Kunio

辻邦生全集〈1〉
辻邦生全集〈1〉
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 7,350
  • 発売日: 2004/06

昨日に引き続き今年のまとめ。今回は、今年読んだ辻邦生師の本です。

  • 嵯峨野明月記
  • モンマルトル日記
  • 詩と永遠
  • 小説への序章
  • 江戸切絵図貼交屏風
  • 黄昏の古都物語
  • 言葉の箱
  • 小説への序章
  • サラマンカの手帖から
  • 春の戴冠(上)
  • 春の戴冠(下)
  • 美しい夏の行方
  • サラマンカの手帖から
  • 春の風 駆けて
  • 言葉の箱
  • 夏の光 満ちて
  • 雲の宴(上)
  • 雲の宴(下)
  • 夏の砦(再読中)
  • 樂興の時(再読中)

初めて読んだ本は「黄昏の古都物語」、「春の風駆けて」「夏の光満ちて」の三冊で、それ以外は全て再読ですが、読む度に新しい発見があって刺激的です。辻邦生さんの文学の大きなテーマに、イデアールとリアルの狭間をいかに埋めるか、というものがあると思うのですが、もちろん答えが出る問題ではなく、考え続けることが重要なわけで、そうした契機や示唆を特に数多く受けた一年間だったと思います。

特に、今年はフィレンツェに旅行に行けたと言うこともあり、「春の戴冠」が最も印象的でした。サンドロ・ボッティチェッリの美を求める飽くなき追求と、ロレンツォ・ディ・メディチの理想と現実の狭間に立つ苦悩に満ちた生涯は、フィクションとノンフィクションの溶け合った歴史小説の中の物語の構成要素と言うだけではなく、アクチュアルな意味を持って立上がってきているのだと思います。

辻邦生さんが亡くなったのは1999年7月29日ですので、亡くなられてもう9年も経つのですね。その間に社会は様々な変化を遂げてきました。9.11以降においては、世界はガラリとその様相を加え、温暖化の影響と思われる天変地異もますます増えてきて、日本の社会も厳しさを増しています。

ただ、いつの時代、どんな時代にあっても、この先、事態を解決するのだ、という強い意志をもって生きる必要があるのは同じです。「春の戴冠」のロレンツォ・ディ・メディチを見習わなければなりません。そう言うことも辻邦生師の文学の中でのテーマの一つであると思います。それを辻邦生師は「戦闘的オプティミズム」と言っておられたと思います。

来年もまた難しい年になりそうですが、「戦闘的オプティミズム」を実践しながら、いろいろ取り組んでいきたいと思っています。

以下のリンク先に、今年読んだ本をまとめておきました。機会があれば是非どうぞ。
辻邦生師の文学

Classical,Opera

Concert Hall

今年見に行ったオペラ・コンサートをまとめてみました。

  • 2月10日;ダフネ(若杉弘、二期会)
  • 3月4日;さまよえるオランダ人(ボーダー、新国立劇場)
  • 3月24日;運命の力(バルバチーニ、新国立劇場)
  • 3月31日;蝶々夫人(若杉弘、新国立劇場)
  • 4月21日;西部の娘(シルマー、新国立劇場)
  • 6月9日;ばらの騎士(シュナイダー、新国立劇場)
  • 7月4日;森麻季さんリサイタル
  • 9月2日;ばらの騎士(ウェルザー=メスト、チューリヒ歌劇場)
  • 10月14日;トリスタンとイゾルデ(バレンボイム、ベルリン国立歌劇場)
  • 11月3日;ブルックナー交響曲第5番(ティーレマン、ミュンヘンフィル)
  • 11月23日;ばらの騎士(ルイジ、ドレスデン国立歌劇場)
  • 12月;ドレスデン室内管弦楽団、森麻季
  • 12月22日;くるみ割り人形(新国立劇場)

今年はやっぱり、新国立劇場の「ばらの騎士」と「蝶々夫人」が圧倒的でした。あそこまで涙したのは初めてでした。歳を重ねて涙腺がゆるんでいるのかな。

辛かったのは「トリスタン」で、風邪で熱出した状態で6時間缶詰になったのはさすがにヘトヘトでした。でも良かったのですけれど。

今年は結構行ってますね。行き過ぎかも。その分CDの購入は押さえています。最近は生演奏を聞くことの意味がよく分ってきた気がしますので、来年も時間的、経済的な面をクリアできれば、引き続き行きたいと思っています。

来年は、1月に関西二期会の「ナクソス島のアリアドネ」、2月に新国立劇場で「サロメ」、4月に同じく新国立劇場で「魔弾の射手」を観に行く予定。それから2008/2009年の新国立劇場も注目ですね。トゥーランドットに、ラインの黄金、ワルキューレなど話題の公演が既に発表されています。特にトゥーランドットは是が非でも観に行きたいです。

Italy2007

 フィレンツェからヴェネツィアへは、イタリア国鉄のユーロスターにて。フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅へは列車出発の30分前には到着する。構内は旅客で混雑していて、高い天井のロビーに人々の声がこだましている。プラットホームへ続くガラス扉の上に発着案内板が掲げられていて、確かにヴェネツィアへ向かう列車は表示されているのだが、 到着ホームの表示は空欄で、どのホームで待てばいいのかわからない。構内放送はしきりにミュンヘン行きのユーロシティが遅延することをわびているだけで、ヴェネツィア行きのユーロスーターについて言及する気配さえない。構内放送を聞き漏らすまい、と必死に耳をそばだてる。

Italy2007

そういえば、今年のGWにみた「踊れ!トスカーナ」でフィレンツェ駅が出てきたことを思い出す。確かに、映画そのままである。

出発予定時刻寸前になって、ようやく構内放送と案内板が、9番線へ到着することをつけるや否や、大勢の旅客が9番線へと移動を始める。流れに遅れまいと9番線へ急ぐのだが、いったいわれわれの乗る7号車がホームのどこに着くのかがわからない。日本の鉄道ならば、号車番号をホームに表示するのが常なのだが、そういった心遣いをする風潮はないようだ。

Italy2007
灰色のユーロスターが到着する。すばやく号車番号を見抜いて、トランクを引きずりながらホームを駆けて、目的の7号車に到着。いよいよと乗り込む。今回は、日本でチケットレスで予約と決済を済ませているけれど、ダブルブッキングがないか、などと不安に思う。座席は四人がテーブルを挟んで向かい合って座るスタイル。窓側に連れと向かい合って座り、通路側にはフィレンツェ在住の老夫婦が座る。連れが「隣が席に着いたら笑顔で挨拶するのよ」と言うので、座席に着いた老夫婦に笑顔で「ボンジョルノ」と挨拶を交わす。

列車はゆっくり動き出す。ダブルブッキングはなかったようで一安心。車掌の改札時には、ネットで予約をしたときに送られてくるPDFを印刷したペーパーを渡す。車掌は二次元バーコードを端末で読み取って決済状況、予約状況を確認する。当然問題ない。イタリアのチケットレス列車予約はよく出来ているものだ。

車窓はフィレンツェ市街を抜けてオリーブ畑のなかを進む。僕の隣に座る老婦人がSposare? と指輪を見せながら聴いてくる。辞書で調べるとmarryの意味とわかった。つまり、僕らが結婚しているのか、という問いだったらしい。Si Siと応える。それからしばし英語とイタリア語のちゃんぽんで老夫婦と話をする。ご夫婦はフィレンツェ在住だそうで(うらやましい!)、ヴェネツィアから客船に乗ってギリシアクルーズへ出かけるところだと言う。かろうじてRodiという単語を聞き取る。ロードス島だろう。物静かな旦那さんと、上品に着飾った奥様で、実に気持の良い時間を過すことが出来る。

列車は、ボローニャ、ロヴィーゴ、パドヴァ、フェラーラ、メストレとイタリア半島を北東へと進んで行く。メストレを出るとラグーナをわたる長大な橋。その向こうがわにヴェネツィアのサンタ・クローチェ駅がある。ほぼ定刻どおりに到着。隣の老夫婦と別れの挨拶をして、駅前広場へ出る。

ところが、このあと、とんでもない事件がわれわれを待っていたのだった。