旅も中盤にさしかかり、さすがに疲労はあるのだが、なんとか早起きをして、ヴェネツィアの夜明けを観に行く。といっても、まだ7時半ちょっと前ぐらい。この日の日の出は7時17分。まだあたりは薄暗い。宿から出て数十メートル歩いたところで、ちょうど朝陽が昇ってくるのに出くわす。幅の広いジュデッカ運河に客船が煙を吐きながら進んでいく。海辺の街灯の形が素敵である。気温が低く、さすがに外に長居は出来ず(防寒着をあまり持ってこなかったのだ)、早々に宿屋に引き上げる。朝食はコンチネンタルスタイルで楽しみにしていたビュッフェタイプではない。トーストされたパンにイチゴのジャムをつけて食べ、珈琲を飲む。
新国立劇場/シュトラウス「サロメ」
行って参りました。サロメ@新国立劇場。
結論。面白かったですが、初日と言うこともあって、さすがにすこしこなれない感じはしました。
ウシャコワさんは、初のサロメ役ということもあって、少し硬くなっていたでしょうか。出端は少し緊張して居たのかもしれません。にもかかわらずパワフルな歌でしたし、中盤以降は少しずつ盛り返してきたかな、と言う感じ。レパートリーとしては、ミミ、蝶々夫人、リュー、ヴィオレッタ、デスデモーナという感じですので、サロメはご本人にとっても、性格的に新たなる境地と言うところなのではないでしょうか。さすがに難しいのでしょう。
ちなみに、七つのベールの踊りも以前みたものとくらべて格段に良かったですね。さすがにオペラグラスで見るのは憚られました。オペラグラスでみていたら、下卑た男だと思われてしまいそう。それぐらい扇情的な場面もあったのでした。
ヨカナーンのヴェーグナーさんも良かったですね。ヴォータン歌いなのだそうですが、さすがの歌唱力。途中で歌詞をロストした様な気がして、聴いている方も動揺するぐらいだったのですが、その後は安定した歌唱を披露。ああいう声は西欧人しか出せないのだろうなあ、と思うぐらい。
一番良かったのがヘロデ王を歌ったヴォルフガング・シュミットさんで、ヘロデ王の神経質な性格をよく歌い出していて、しかも歌も安定していて、舞台を引き締めていたと思います。
オケは良かったと思います。こちらも出端は勢いが感じられず、少し心配になりましたが、中盤以降がよかったです。レヒナーさんの指揮はやはりテンポコントロールをしっかり取っていた演奏でしたね。
二週連続でシュトラウスのオペラを見ると言うことが出来るという僥倖に恵まれました。これは本当に感謝ですね。
次のオペラ予定は少しあいて、4月13日に新国立劇場で「魔弾の射手」を観る予定。またそろりと予習を始めようと思います。
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 演出==アウグスト・エファーディング
- 指揮==トーマス・レスナー
- 管弦楽==東京交響楽団
- ヘロデ==ヴォルフガング・シュミット
- ヘロディアス==小山由美
- サロメ==ナターリア・ウシャコワ
- ヨカナーン==ジョン・ヴェーグナー
- ナラボート==水口聡
- 日時==2008/02/03
- 場所==新国立劇場大劇場
ウェルカム・フラワーは、昨週とは違うものに変わっていましたね。おしゃれすぎ。これから新国に行ったら毎回写真撮ろう!
雪の降りしきる中の新国立劇場。
「オペラ・パレス」とはちと言いにくいですね、さすがに。面映ゆい。
いよいよ新国立劇場のサロメへ!
いよいよ今日は新国立劇場のサロメです。
ナターリア・ウシャコワさんの略歴が、新国立劇場から送られてくるThe Atreに載っているので見てみたのですが、やっぱりこの人も工業大学で物理学専攻だったそうで、ベルリンへ物理学のために留学しようか、と言うところまで行ったそうです。クライバーもそうでしたが、やっぱり音楽には理系の頭も必要なのですね……。
現在はウズベキスタンに属しているタシケントで育ったそうで、歌自体は、小さい頃からオペラが好きだったとのこと。それで、物理学をから音楽に転身してサンクト・ペテルブルク音楽院へ留学。ネトレプコと三年間同じ部屋に住んでいたのだとか。
ウシャコワさんの冷徹なサロメの性格分析が興味深い。ウシャコワさんによれば、サロメはただのわがまま娘で、ほしがるものは何でも与えられていた「子供」なのであって、初めて「ノー」と行ったのはヨカナーンで、首を切られたヨカナーンの唇に血の味を感じたとき、自分の望んだことの意味を知るのである、という解釈。なるほど、ですね。
ただ、個人的には、どうしてサロメがヨカナーンの唇を欲したのか、というところがどうにも難しくて仕方がない。ヨカナーンのことを悪し様に言っておきながらも、唇を欲するとは如何にも猟奇的でなのであって、わがまま娘だからというだけではなく、頽廃的な欲求がそこに隠れているに違いないのです。それは、人類誕生からあった心の闇の部分なのであって、おそらくは皆が皆、多少の違いはあれ持っているものなのであり、それをオペラで見せつけられるときに、自ら持つ闇が揺り動かされ、感興が生じるのです。
今日の東京地方は雪ですね。明け方から静かに降り続いています。電車が止まらずに無事に新国立劇場に行けますように!
サロメのスコアが届きました。
ちなみに、楽譜も届きました。正解は以下の譜面の通り。三連符でしたか。だから、頭とか裏とか分からなかったのですね。未熟でした。しかし、言い訳を言わせて貰うと、その後、拍子が変則になって、4/4→(3/4→3/3)×3回→5/4→3/4と、一小節ごとに拍子が変わっている。変拍子です。これじゃあ全くとれなくてもやむなしだなあ。指揮者はどうやって振るんだろう?
シュテンメ/シュトラウス「サロメ」より終幕部
相変わらずサロメ漬な一日。先だって購入したシュテンメさんのアルバムに、サロメの終幕部が入っているのを思い出して早速と聞きなおしてみる。うわー、凄い。シュテンメさんの芯のある声が昂ぶるサロメを凄い迫力で表現している。もちろん酔いしれるサロメの妖しい静けさもいいです。ビブラートが少し強調されているようにも聞こえるのですが、綺麗なので問題ないです。
パッパーノさんの演奏も良いのですよ。テンポをコントロールしていて、的確に歌い回している。オケも巧いです。録音も良。iPod+クワイエットコンフォート2で聴いても大丈夫です。
聴いてみて思ったのは、実はマルシャリンよりもサロメほうがシュテンメさんらしさが出ているのではないでしょうか、ということ。だからイゾルデも良かったんだなあ、と。ライナーによれば、ジークリンデ、ゼンタなども歌っておられるようですね。ヴォイツェックのマリーも歌っているとは。聴いてみたいですね。
- ソプラノ==ニーナ・シュテンメ
- 指揮==アントニオ・パッパーノ
- 管弦楽==コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
- 録音==2006/09/01
- 場所==Studio No.1 Abbey Road, London
カラヤン/シュトラウス「サロメ」
今週はサロメばかり聴いていて頭の中が、サロメのフレーズでぐちゃぐちゃになっています。シノポリ盤のチュリル・スティユーダさん、ベーム盤のグィネス・ジョーンズさん、カラヤン盤のヒルデガルト・ベーレンスさん、三人のサロメが頭の中でぐるぐる回っている感じです。しかも、聴いても聴いても飽きが来ないのが恐ろしい。今日もこれからまたサロメを何度も聞くことになりそうです。
ベーレンスさんのサロメは強力ですね。ベーレンスさんというと、個人的にはブリュンヒルデのイメージが強くて、サロメもなんだか女傑のような強い英雄的女性に聞こえてしまいます。すこしビブラートがきつい気もしますが、豊潤な響きを持つ声ですね。エレクトラも聴いてみたいなあ、と思いました。
カラヤンの指揮は、テンポを大きなシーケンスで動かすことが多くて、意外とテンポを遅くして歌わせている部分が多いですね。それがカラヤンらしさの要素なのだ、と改めて思いました。ですが、七つのヴェールのおどりの部分意外と鈍重に聞こえてしまう感じ。シノポリ盤のほうがしっくり来た感じです。
それから、オケの響きは少しデッドですが、これは録音場所や録音自体、それから僕の再生機器の問題でもあると思います。そう言う意味では、録音の比較的新しいシノポリ盤が一番有利ですね。
ちなみに、第一のユダヤ人は、ハインツ・ツェドニクさんで、2004年に新国立劇場でサロメを見たときにヘロデ王を歌っておられた方です。クライバーのばらの騎士ではバルツァッキを歌っておられましたね。第二の兵士のクルト・リドルさんは、先だってのドレスデン国立歌劇場日本公演でオックス男爵を歌っておられた方ですね。録音された1977年といえばもう30年前になりますので、当時はこういった感じでキャリアを積み重ねていらした時代なのでしょう。
サロメの楽譜は本日か明日には届く予定。こちらも愉しみ。そして本番は2月3日の新国立劇場。あと三日です。
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 指揮==ヘルベルト・フォン・カラヤン
- 管弦楽==ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
- サロメ==ヒルデガルト・ベーレンス
- ヘロデ==カール=ワルター・ベーム
- ヘロディアス==アグネス・バルツァ
- ヨカナーン==ホセ・ファン・ダム
- ナラボート==ヴィエスワ・オフマン
- ヘロディアスの小姓==ヘデヤ・アンゲルボ
- 第一のユダヤ人==ハインツ・ツェドニク
- 第二の兵士==クルト・リドル
- 録音==1977年5月、1978年5月
- 場所==Sophiensaal, Viennna
シノポリ/シュトラウス「サロメ」 その2
今日もサロメの話題。シノポリさんのサロメを中心に聴いています。シノポリさんのシュトラウス作品で言うと、エレクトラとこのサロメ、それから影のない女を聴いています。シノポリさんはシュトラウス作品と相性が良いのではないか、という感想を持っていますが、このサロメでもやはり素晴らしい演奏を聴かせてくれていて、とても都会的なスマートな演奏でありながらも壮烈なサロメを聴かせてくれると思います。
サロメの楽曲で言いますと、サロメが、ヨカナーンとキスをしたいIch will deinen Mund küssen, Jochanaan.と叫ぶフレーズが印象的です。スコアがないので、耳でコピーしたんですが、まずその部分の拍子が分からず、表と裏が頻繁に塗り変わっているように聞こえてしまい、巧くとれませんでしたが、こんな感じでしょうか?
どういう譜面になっているのか知りたくて、Amazonで譜面を注文してしまいました……。譜面が届いたら更新します。少し脱線しますが、しかし、難しいんでしょうけれど、なんとか読めるようになりたいですね。最初にシュトラウスから読み始めるのはあり得ないですね。モーツァルトあたりから入ればいいのかなあ、とおもいますし、最初は弦楽四重奏などから読んだ方が良いのかもしれません。
サロメに戻りますと、ベーム盤も持っています。ヨカナーンがディースカウさんの盤ですが、こちらも素晴らしいですね。カラヤン盤もなぜか持っておりまして、こちらは、サロメがヒルデガルト・ベーレンスさんです。こちらも今日iPodに入れましたので、聴いてみようと思っています。
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 指揮==ジュゼペ・シノポリ
- 管弦楽==ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
- ヘロデ==ホルスト・ヒーターマン
- ヘロデヤ==レオニー・リザネク
- サロメ==チュリル・ステューダ
- ヨカナーン==ブライアン・ターフェル
- ナラボート==クレメンス・ビーバー
- 録音日時==1990年12月
- 録音場所==ベルリン・イエス・キリスト教会
シノポリ/シュトラウス「サロメ」
今週末は、今度は新国立劇場の通常公演なのですが、シュトラウスの「サロメ」を聴きに行きます。ということで予習を実施中。シノポリさんのサロメです。久々に聞くサロメは新鮮で刺激的です。シノポリ盤の演奏やサロメについて思うことは明日。
新国でのサロメは二回目になります。前回はエヴァ・ヨハンソンさんのサロメでしたが、今回はナターリア・ウシャコワさんでして、美人さんですね。近年、ロシア・東欧の優秀な歌い手さんがたくさん出てきていらっしゃいますので、期待ですね。とはいえ、色眼鏡をなるべくかけずに(そうとはいえ、色眼鏡はかけているものなのですが)聞いてきたいと思います。
本日は取り急ぎ。
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 指揮==ジュゼペ・シノポリ
- 管弦楽==ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
- ヘロデ==ホルスト・ヒーターマン
- ヘロデヤ==レオニー・リザネク
- サロメ==チュリル・ステューダ
- ヨカナーン==ブライアン・ターフェル
- ナラボート==クレメンス・ビーバー
- 録音日時==1990年12月
- 録音場所==ベルリン・イエス・キリスト教会
飯守泰次郎、関西二期会/シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」
平成19年度新国立劇場地域招聘公演、関西二期会公演「ナクソス島のアリアドネ」に行って参りました。
中劇場では2004年に「インテルメッツォ」を見たのですが、今日もまたシュトラウス作品を愉しむことが出来ました。いろいろと勉強になって良かったです。
全体に感じられたのは女性陣が頑張っておられて、特に印象的だったのが、作曲家を演じた福原寿美枝さんで、歌い出し、歌い終わりの効果に稀に違和感を感じたのですが、本当に豊かな声で声量もしっかりしていて、とても良かったです。迫力をもって、作曲家の揺れ動く心を歌っておられたと思います。カーテンコールでも喝采を浴びておられていたのですが、なぜか硬い表情をなさっていたのが印象に残っています。緊張していらしたのでしょうか?
それから、このオペラといえば、ツェルビネッタのコロラトゥーラが楽しみなわけですが、日紫喜恵美さんが本当によく歌っておられて、稀にピッチが揺らいだり、最高音域の声質が平べったくなったり以外は、予想以上に巧い方だな、と思いました。ツェルビネッタのすこし軽薄な面やそれでいて男心をくすぐるような雰囲気をよく出しておられたと思います。関西にもこんなに巧い方がいらっしゃるのだなあ、と嬉しくなりました。曲の途中でも喝采を浴びていらっしゃいましたし、カーテンコールでは涙ぐむ姿も。東京にいらして大きな緊張を強いられていて、感極まって、という感じでしょうか。
それにしても、リヒャルト・シュトラウスのオペラは良いものですね。バッカスが現れてフィナーレへと向かう上り階段はどこまで続くんだろう? というぐらい感動的です。このオペラでは随所にシュトラウスの別作品のフレーズや響きが聞こえてきますね。ばらの騎士、影のない女、インテルメッツォなどが聞こえてきました。
観客は終始好意的で(指揮者にブーイングした一名は除く)、良い雰囲気だったのではないでしょうか?
- 作曲==リヒャルト・シュトラウス
- 演出==松本重孝
- 指揮==飯守泰次郎
- 音楽教師==萩原寛明
- 作曲家==福原寿美枝
- テノール/バッカス==竹田昌弘
- チェルビネッタ==日紫喜恵美
- アリアドネ==畑田弘美
- 管弦楽==関西フィルハーモニー管弦楽団
- 日時==2008/01/27
- 場所==新国立劇場中劇場
次は来週「サロメ」に行ってきます。
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ちなみに、東京は、天気も良く、素晴らしい一日でした。オペラシティも陽の光に映えて綺麗でした。
神田明神参拝
どうも近頃、仕事が上手くいかない。といっても、個人的に困っているわけではなく、メンバーが不具合に悩まされ続けているのです。
というわけで、神田明神に参拝してきました。というのも、神田明神には「IT情報安全守り」があるんですよ。いまから四年前に弟に買ってきて貰いましたが、その後二年間は無事故でした。そういう霊験あらたかなお守りなのです。
ところが、さすがに四年も前だと御利益も薄れて来るというもの。そのせいで、立て続けに不具合が発生しているように思えてなりません。
神田明神に参拝するのは初めて。門構えも立派です。なにより天気が良かったですね。
本殿です。建物自体は新しいです。お祀りしているのはあの平将門公です。平安以降初めて天皇にかわる政権を作ろうとして、「新皇」を名乗った人物です。江戸初頭に、江戸城の鬼門にあたる現在の場所に移され、明治初頭まで将門公もまつられていました。これは江戸幕府が朝廷の逆賊である将門公を祀ることで朝廷への牽制をしめそうとしたとか。明治維新になると、今度は「逆賊」が東京の鎮守で祀られるのはまずかろうということで、祭神から外されました。再び祀られるようになったのは、時代がもっと下って、昭和59年からなのだそうです。意外と最近なのですね。
これがITお守り。これで仕事の無事を祈りました。