Movie

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面白い映画でした。

音楽家のための老人ホーム。存続資金を得るためのガラコンサートを、老いた音楽家たちが企画している。そんな時に、ホームに入ってきた老ソプラノ歌手は、ガラコンサートに出演する老歌手のかつての妻だったのだが…。

というストーリー。

一番驚いたのは、あのグィネス・ジョーンズが出演していたことです。エンドロールで気づいて、本当に驚きました。物語の中で、年を重ねてもなお歌うことを恐れる、という主題が出てくるのですが、グィネス・ジョーンズは、映画のなかで、実際にその恐れを克服している、あるいは感じていないかのようにおもいます。 
実際、グィネス・ジョーンズと同じく、高名な演奏家が出演していて、演奏を披露してくれます。リアルです。

今日はこちら。

Salome

Salome

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グィネス・ジョーンズの豊潤をサロメを聞くことができます。フィッシャー=ディースカウのヨカナーンも最高。
それでは、おやすみなさい。

Apple Music

Photo

近所の公園。最近この公園のヘビーユーザになっていて、よく出かけます。なんだか、池があると心が休まります。水が持つ、無限性のようなものではないかと思います。流れ行く水は、一定ではなく、無限の可能性を持っている、という観点。

なかなか難しい状況に陥っている、私のApple MusicとiCloudミュージックライブラリですが、以下のような状況なのです。

先日報告の通り、iCloudミュージックライブラリが10万曲に拡大されたということで、私のiTuneライブラリをiCloudミュージックライブラリに接続し、マッチングを行いました。その後、iPhone側で、iCloudミュージックライブラリを一度オフにしたのちに、もう一度オンにするという操作を行い、iCloudライブラリとの接続を行いました。結果として、iTuneライブラリの内容がマイミュージックに反映し、iPhoneでiTunesライブラリの曲目が表示されるようになりました。

その後、色々と不可解なことが起こり始めました。

まずは、先日も少し書きましたが、iTunesライブラリにあった曲が、iPhone上ではオフラインモードになっており、勝手にダウンロードが始まってしまったというものです。この事象は、iCloudミュージックライブラリをオンオフするという操作で回避したかに思えました。

ですが、完全に回避できたわけではなく、多くのアルバムは、オフラインモードのまま残ってしまったのです。

その後、ミュージックアプリの挙動がおかしくなりました。まずは高頻度でフリーズするようになりました。あるいは、操作がもたつくようになりました。

その後、iCloudミュージックライブラリとの接続のオンオフを試みたのですが、ライブラリとの同期でフリーズするようになってしまいました。なすすべなく音楽が聴けない状況になったわけです。

やむなく、iCloudミュージックライブラリをオフにしようと試みたのですが、残念ながら、オフにならないという事象に陥り、嘆息した次第。iPhoneを再起動することで、やっとiCloudミュージックライブラリをオフにすることに成功し、胸をなでおろしている、というところです。

このドタバタぶりは、なんなんでしょうか。一部にバグの報告もあるようですが、そもそもiOS9.2はバグ解消が素晴らしい、というのがネット上の評判らしく、ちょっと意外な気がしています。

ちなみに、iCloudミュージックライブラリをオフにしたとしても、Apple Musicは使えていますので、さしあたりはそちらを楽しむことにしようと思っています。

私だけの特異な事象かもしれませんが、一応みなさまには報告しておきます。

Johannes Brahms,Movie

Photo

先日、風の強い日に噴水が強風に煽られ波立っていたので撮ってみました。石で固められた都会にあって、こういう池や噴水の水にはホッとします。

今日は一日中フルスピードで頭を動かして、仕事場を出てからも、とあるインターネットプロバイダーに苦情を言いながら契約を更新するなどしたもので、なかなかヘビーでありました。

帰宅の電車では、こちらを観ているところです。前から見たいと思っていましたが、Amazonプライムビデオに入っていたということで、通勤電車でも見られるようになったという感じ。

まだ見ている途中ですが、設定としては、ビーチャムハウス、という、おいた音楽家のための老人ホームが舞台です。これ、ヴェルディの作った老人ホームにインスパイアされているんだろうなあ。

老オペラ歌手が、オペラについての講義を学生たちにしている場面があるのですが、本当にいいことを言っているなあ、と。曰く、かつてはオペラはぶっ飛んだ若者がやっていたものだが、いつしか、上流階級のものとなり魂を奪われた。それは、まさにラップと同じく、言葉に乗せて人生の痛みを語るものなのである、みたいな感じだったか、と。ちょっと翻意が入っていますけれど。

老オペラ歌手が、黒人の若い男性にラップを歌わせるシーンは、ちょっとジーンときます。

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映画は、90分から120分の間に、プロットをギュッと詰めますので、とても勉強になりますね。人生勉強にも文学の勉強にも。

今日はこちら。今日、感銘を受けたのは、第一楽章最後のティンパニーの打撃。あの加速度的な破壊力は本当に何かがほとばしっています。それから、第四楽章。これも、鋭さを持ちながら、厚みのある音作りで、何か民族的なものを思わせる悲しみに満ちたテーマが、絶妙なテンポ感で料理されていくさまは本当に圧巻です。クライバーは本当にすごい指揮者です。

ブラームス:交響曲第4番
ブラームス:交響曲第4番

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クライバー(カルロス)
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まあ、こう考えると、先日書いた、以下の引用が身にしみていて、それを今更やっているんだと思います。

たくさんの本を読め 、できるだけたくさんの映画を見よ 、せいいっぱい音楽を聴け 、たくさんの人に会え 、多くの経験を積め 、そして空想の羽ばたきに身をゆだねよ !自由を楽しめ !

で、若さは相対的概念である、という点も含めて。頑張らないと。

ではおやすみなさい。グーテナハトです。

Apple Music

はじめに

昨日ですね、小田和正の《自己ベスト》と云うアルバムを入手して、iTuensに取り込みました。その後、いつものように手動でiCloudにアップロードしようとしたのですが、なぜかiCloudに同期するためのコマンドが表示されませんでした。

あれ、おかしいな、と思ったのですが、一旦そのままに。

今日、iPhoneでミュージックを開くと、小田和正の《自己ベスト》が表示されていました。この、勝手にiCloudミュージックライブラリにアップロードされている、という事例は、前にもあったと記憶していたので、あまり驚かなかったのですが、虫の知らせなのか、以下のリンク先を見てみたところ、あ、10万曲に制限が変わっているでは! と気付いたのです!

Subscribe to iTunes Match

Subscribe_to_iTunes_Match_-_Apple_Support

なんということでしょうか。

いつから?

それで、これはいつ頃から起きていたのかを調べてみると、12月7日付で以下の記事が書かれていることを確認しました。

Apple bumps iTunes Match and Apple Music upload limit to 100,000 songs

さらに辿ると、あのMacRumorsで、12月5日づけで、リミットが10万曲になったという情報がユーザーからよされれた、とあります。

Apple Raises iTunes Match and Apple Music Library Matching Limits to 100,000 Tracks

一週間情報のキャッチが遅れました。全く。MacRumorは毎日読まないと。

検証

それはそうと、検証してみました。私はAppleMusicでiCloudライブラリを使っており、iTuneMatchは使っていません。ですが、おそらく、iTuneMatchもAppleMusicにおけるiCloudライブラリも同じだと思われるからです。

私の、メインのiTunesライブラリの曲数は、今日時点で、33,836曲で、かつての25,000曲時代は、曲数オーバーでエラーが発生しました。

スクリーンショット 2015-12-13 22.00.49

ですが、今回はマッチングが行われています。

スクリーンショット 2015-12-13 21.41.02

で、33,836件のマッチングが終わり、17,938曲がマッチしないということで、アップロードが始まりました。

スクリーンショット 2015-12-13 22.01.31

これで、すべての私のライブラリがiCloudに乗ることになったのです。

注意!

ただ、お気をつけください。iPhoneのミュージックアプリが変な挙動をしています。曲のダウンロードを勝手に始めているようなのです。マークをしているのが、勝手に付けられたオフライン設定で、これが付いていると、ダウンロードが始まります。先日の悪夢を思い出します。

すべての写真-3376

このアルバム、おそらく、iTunesストアとマッチしないので、アップロードしている対象になるのですが、ご覧のように何もしていないのに勝手にオフラインで聴く設定になっていて、放っておくと、勝手にダウンロードが始まります。というか、始まっていたので、慌ててダウンロードを停止しました。

調べてみると、どうやら、iOS9.2のバグのようです。

iOS 9.2アプデ後のApple Musicに不具合。オフライン再生用の曲が消える、勝手にダウンロードなど

で、嫌なので、一旦iPhoneのiCloudミュージックライブラリをオフにして、ミュージックアプリを再起動し、もう一度iCloudミュージックライブラリをオンにしてみました。

すべての写真-3377

おー、戻りました。オフラインマークが消えました。どうやら、このiCloudミュージックライブラリのオンオフという操作が有効のようです。

(ただ、翌日もう一度見てみると、別の少なくないアルバムはやはり勝手にオフラインマークが付いていました。抜本解決にはなっていないようです)

すべての写真-3378

終わりに

iCloudeミュージックライブラリですが、バグもいろいろありますが、仕組みとしては、画期的です。これで、iPhoneの容量を音楽以外の写真、動画、映画などに振り分けることができるようになりました。

もちろん、いろいろな問題はあります。AppleMusicだけでは、音源をダウンロードしてもDRMフリーにはなりませんので、サードパーティの音質の良いアプリを使うことができない、といった問題もそうですし、そもそもオンラインを前提とした仕組みです。また、マッチしない楽曲のアップロードは相当時間がかかります。

とはいえ、この必要な時に必要なだけダウンロードするという仕組みは、これまでの「所有」の概念が崩れているという文脈においては、とてもわかりやすいものですし、合理的でもあります。

まあ、こうやってApple経済圏に埋め込まれていく、ということなんだなあ、とも思いますけれど。

というわけで、今日はこの辺りで。おやすみなさい。グーテナハトです。

Fauré, Gabriel Urbain

Photo

きっと今年最後の紅葉です。他の木々はずいぶん葉を落としました。いよいよ冬も本番でしょうかね。

フォーレ:レクイエム/ペレアスとメリザンド
モントリオール交響楽団 デュトワ(シャルル) モントリオール交響合唱団 ミルンズ(シェリル) テ・カナワ(キリ)
ユニバーサル ミュージック クラシック (2009-05-20)
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家族が寝静まったあとの一人の時間に、蒸留酒を飲みながら、フォーレ《レクエイム》と《ペレアスとメリザンド》を、デュトワ&モントリオール交響楽団の演奏で。

《レクイエム》よりも後半の《ペレアスとメリザンド》の方が本当に印象的。伸びやかで、ゆったりとした演奏。大きくて優しく柔らかい演奏。それでいて切迫する感情の迫力のようなものも感じます。私はもっと先鋭的な演奏を想像していたのですが、この演奏の素晴らしさにとても驚きました。

私のデフォルト音源はミシェル・プラッソンの盤なんですが、デュトワのねっとりとした、官能的とも言える演奏は、この劇の持つ、幻想的な妖しさのようなものを一層引き立てる気がします。

===

ところで、将来記憶を呼び起こすためには、日記を書いたり写真を撮ったりします。今日は先だって親から送られてきた若い頃のアルバムをざっと見直してみました。ほとんど覚えているような気がしますが、一部覚えていない記憶もあり、少し驚きました。

今から見返すと、様々なことを反芻して思い出すわけで、まるで牛が反芻して記憶を消化しているようなものなのかもしれず、ある意味においては、催眠療法のような効果があると考えています。先だって見たテレビで、中井貴一が真剣な顔つきで、「自分の演技は、10年ぐらい経たないと、見返せない」みたいなことを言っていた気がします。こう言う反芻もやっぱり10年ぐらいスパンでやらないと逆効果なのかもしれない、などと思ったり。

そういえば、10年前に書いた文章が先日突然MacのFinderに表示されて、中身を見ると、めちゃいいこと書いてあって、恐ろしくなったりして。でも、今の自分が書いたわけじゃないので、今さらどうこうすることもできず、みたいな。

というか、こう言うことを考えるようになったというのは、齢を重ねた、ということなんですね、みたいな。

それではまた。おやすみなさい。グーテナハトです。

Miscellaneous

悲しみは人を強くするのでしょうけれど、そうは言っても、辛いものはありますね。

人は生きれば生きるほど悔恨を抱えるものです。それが、大人になるということなんだなあ、と思ったのが、ちょうど大学生の頃だったように思います。が、それでもなお、悔恨を作り続けるのはなぜかか、ということなんでしょうね。

今日もがっつりと仕事をしましたが、折に触れて、物思いにふけってしまったり。あるいは、仕事場の窓から見えた壮絶な夕陽を見て、この夕陽をかつて別の場所で見たものだ、ということを思い出し、別の場所でも同じ方角に夕陽は沈むのだ、ということに気づいて、仕事場の窓から見える風景の奥に、あの時のあの場所の夕陽を重ね合わせて見たり。

結局は、生きるということは記憶を重ねていくことに他ならないわけで、記憶こそが人生だったりするわけですが、ということは、記憶こそが真実とならないでしょうか、という、かなり経験論的なことさえ考えてしまうわけです。逆に言うと、現在経験できないことであっても、かつて経験した記憶がしっかり残っていれば、それでもう事足りる、ということも言えるのではないか、と思うわけです。

記憶こそが全て。

だから、あの時の記憶さえあれば、良い、ともいえるわけです。私が学生時代に住んだ学生寮は、先日出かけてみると、マンションに建て替わっていましたが、結局のところ、今自分の記憶の中で、綿密に再現できるわけですから、私にとっては、まだ、今そこにある、ということさえ言えるのではないか、と思います。

記憶は、記憶の中で、もう一度生きることすらできるもの。ということは、あの時の記憶があれば、良いわけです。たとえ、誰かに会えなくとも、会った時の記憶さえあれば、何度でも語り合うことができるのだ。なんてことを思っています。

で、今日もやはりこちら。

二楽章のしんみりくる感じは、やはり今の気分にぴったりです。しかし、よくこんな曲作ったなあ、と感心することしきりです。

Poeme De L'Extase / Piano Concerto / Promethee
Chicago Symphony Orchestra
Deutsche Grammophon (1999-07-20)
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では、おやすみなさい。グーテナハト。

Movie

今日はこちらを観終わりました。

大統領の料理人 [DVD]

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フランス大統領ミッテランの希望により、大統領官邸エリゼ宮の料理人となった女料理人の物語。

誇大なキャッチフレーズにはなれているからいいですが、これは、まさに、権威と真実の戦いの物語。料理人である主人公はもちろん、権威のトップの大統領でさえ、その権威の網から逃れられない。権威はすべてを動かす。料理人をスカウトするためさえ、列車の発車を遅らせるわけほどの力を持ちます。

それは、とかく、権威の長、つまり大統領や社長よりも強大な力を持つわけです。劇中、ミッテランは、自分はいじめられている、とこぼすわけですが、権威が権威の長をも支配する、トイう類例でしょう。

この、灰色の巨大なアノニムな権威は、崩れることなく、過去から綿々と続いているのですね。

ルイ・フィリップの時代から使っているという銅の鍋の話はそれを物語るし、衛兵はローマ時代のデザインの兜を今もなおかぶっている。大統領は、エリゼ宮というかつての王宮に住み、家臣は、フランス国王に対するような受け答えを今でもしています。

2000年にも及ぶ権威はそうそう崩れることはなく、真実や個々人は常に敗北します。自由と革命の国フランスにあってもなお。

そういう物語だと私は解釈しました。

今朝方、尊敬する伯父が亡くなりました。

人生というものは、失敗と悔恨でできている、と言っても過言ではありません。

======

伯父とは、もう10年も会っていませんでした。それが悔恨というもの。

ですが、私の記憶の中には、ずっと元気でいてくれています。私のエピソード記憶は半端なものではないのです。

学生時代は、毎年夏に行って、一緒に海水浴をしたものです。真っ赤に背中を焼いたあの夏の日々はもう帰りません。海岸沿いを伯父と二人で走り回った日々も戻りません。奈良に出かけて、昼間から日本酒を飲んだ日々も戻りません。

今思えば、伯父の生活スタイルが、遠い日に見た私の理想の生活スタイルなんだろうなあ、と思います。

人生の中でも、ずいぶん短い間しか会っていないような気がするのですが、若い頃に受けた影響というのは、本当に強く、その後の人生を左右するものなのです。

私は、それもこれも全部覚えていますから、伯父とは何度も何度もいつでも会うことができるでのだ、と思います。

おやすみなさい。グーテナハト。

Jazz

Photo

先日も似たようなことを書きました。思うのですが、これって秋の風景であって、冬の風景ではないですよね、なんて。

温暖化で季節がずれているのか、なんてことを思ったり。

今日は、何かと気配りな必要な場面が多い一日でした。思うように時間も使えず。ただ、電車の中で映画を見たりはしましたけれど。

今日の一枚。

Cultural Survival
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David Sanchez
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先日、とある方に教えていただいたデイビッド・サンチェスのアルバムを何枚か聞いてみたのですが、そのうちの一枚。プエルト・リコ出身のサクソフォーン奏者で、もともとはディジー・ガレスピーのバンドに入っていた方です。グラミー賞もとっている実力派です。激しい感じかと勝手に想像していましたが、何か、内省的なかっこよさを感じました。

Apple Musicだとライナーが読めないので、アルバムの情報が今ひとつ把握できていませんが、こういう新しい方がいるのだなあ、と改めて安心しました。と言いながら、デビューは20年前だったりして、私が知らなかっただけ、という状態ではあります。

大学の先輩も、ジャムセッションでご一緒するみなさんも、たまたまかもしれませんが、新しい最近のジャズよりもそれ以前のジャズをよく聞いていて、うまく最近のジャズに周波数を合わせられない感覚です。

明日から、完了直前のプロジェクトに急遽放り込まれます。困りました。

ではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Movie

今日はこちら。

世界にひとつのプレイブック Blu-rayコレクターズ・エディション
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まるで、ストラヴィンスキーの《プルチネッラ》のような作品だと思います。つまり、非常にシンプルなストーリーの映画なんですが、何かバランスが悪いところがあって、引っかかりを覚えるのですが、それでもなお、その引っかかりさえも許すことができるぐらいに、面白い、というものです。

引っかかりというのは、ひとつは、主人公たちのエキセントリックな振る舞いに代表されるような、ストーリーの中で意図したと思われる味付けでしょう。さすがに躁鬱病患者の振る舞いは、さすがに、ある種の感情を呼び起こします。

もう一つの引っかかりは、ストーリーの中にある幾つかの恣意的とも思える展開です。ですが、いくら恣意的であろうとも、全体のバランスの中では、一つの味付けとして楽しめるわけで、むしろ、そうした恣意的な要素ですら、包括して、いい映画だ、と思えるものなのです。

おそらくは、ストーリーというのは、よく言われるように旧約聖書で出尽くしたと言われていますので、それ以降は、それでもなお、芸術であるためにはどうすべきか、というのを考えたのが、物語芸術だったと思いますが、この映画を見て思ったのは、まるでストラヴィンスキーが新古典主義においてやった、古い音楽に不協和音をつけて解釈したのと同じように、使い古されたストーリーに様々な不協和音を載せることで新たな解釈を提示した作品だったなあ、ということです。

アカデミー賞にノミネートされまくっていて、その中で主演女優賞をジェリファー・ローレンスが撮っています。それほど、映画界で受け入れられた作品のようですが、私は、なんだか、ストラヴィンスキーを思い出しながら見ていました。

もちろん、最後まで目を離せないことは言うまでもないですし、これもまた定石とも言える終幕部に置いて、俳優の方々の素晴らしい演技、これはまるで《プルチネッラ》を素晴らしく演奏をする演奏者のようだとも言えるのですが、そうした演技も含めて、とてもいい映画だったなあ、というのが私の印象です。

ちなみに、最後のシーンは、素晴らしかったので、4回ほど繰り返し見てしまいました。何度見ても心が打たれます。

今日の一枚。

この映画の最後、Mistyが流れるんですが、古いアレンジでとても良かったのです。Apple Musicで探しましたが、見つからず、雰囲気の似ているシナトラを聞いていました。

しかし、シナトラにも弱点あり、というのを見つけ、驚きましたが、それを超えて余りあるエンタティナーぶりに脱帽しました。

Seduction: Sinatra Sings of Love (Dlx)
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それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Tsuji Kunio

Photo

またウィークデーが始まりました。

それにしても、小説を読んでいると、自分の中で、小説の舞台を創り上げていくことになるわけでして、私の場合だと、本当に行ったことはなくとも、サラマンカなんかは、辻邦生の「サラマンカにて」を何度も何度も読みましたので、勝手にサラマンカの風景のようなものが軽背されてしまっています。

それは、どうも脂っこい揚げ物の匂いが立ち込める狭い路地があるような街で、あの、主人公二人が泊まったホテルが、白熱灯に照らされて、静かに佇んでいるような感じ、に思えます。夕食どきなのに人がいない閑散とした街並み。でも、街は、煌々と白熱灯の琥珀色の光に照らされていて、あのホテル<エル・アルコ>のレストランは、アイロンのかかった白いテーブルクロスがかけられたテーブルがいくつも並んでいる。天井にはシーリングファンがゆったりと回っている。そんな感じです。

これはもう、本当のサラマンカでもなく、辻作品の中に出てくるサラマンカでもなく、勝手に私が作り上げた「サラマンカ」であるに過ぎず、そうした「サラマンカ」が、きっと読み手の数だけあるに違いない、と思うわけです。小説は、そこに生じる形あるものはないだけに、読者側の努力のようなものも必要とされます。そういう交感の芸術であるということは、まあ言うまでもありません。多分、これは、音楽と近いものがあるのかもしれませんが、音楽の方がより演奏者からのベクトルは強いので、単純に同じとも言えそうになく…、なんてことを考えるには少し夜遅くなっているようですのでこの辺りでやめます。

で、この実在する町の名前なんだけれども全く違うイメージというのは、これもみなさまにも経験があるかもしれませんが、夢の中では、実在の街が、全く違う街になって現れることが私の場合よくあります。池袋、高田馬場、あるいは、中学生の頃住んでいた高槻などという街が、まったく違う街となって、夢に現れるのですが、それは夢の中では正しく、池袋であり、高田馬場であり、高槻である、という具合です。

私が数年前に見た池袋は、屋外に巨大なエスカレータを要する大きなデパートのような商業施設がある、実に洒落た街になってました。実在の池袋も面白い街ですが、それとは全く違うものでしたから。

それもこれも、こちらの小説から生まれたのかも。このリンク先の新潮文庫は私は持ってないですね。。と思って本棚に行ったら、いやいや、持っていました。1992年の春に大阪駅近くの古本屋で購入したはず。たくさん付箋が付いていましたので、ずいぶん読み込んだようです。これも夢か?

サラマンカの手帖から (新潮文庫)
辻 邦生
新潮社
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ではみなさま、よい夢を。おやすみなさい。グーテナハトです。