Richard Wagner

今日はこちら。カルロス・クライバー盤です。

ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲
コロ(ルネ) ライプツィヒ放送合唱団 プライス(マーガレット) ファスベンダー(ブリギッテ) モル(クルト) フィッシャー=ディースカウ(デートリッヒ) ゲッソ(ベルナー)
ポリドール (2000-03-01)
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この盤はもう語りつくせないものがあります。何度も書いている気もしますし、と思って調べてみると、あまり書いてないですね。9年ほど前に書いた記事が出てきたぐらい。

バレンボイムの重みのある演奏を聞いた後に、クライバーを聞くと、切れ味のいいナイフで紙を切るような感覚を覚えます。こう言う洒脱さというのは、本当に天才のセンスなんだろうなあ、と思います。聴いている方が、何かトリスタンとイゾルデの、切迫した気分に染まってしまうような気がします。恐ろしいことです。

ちなみに、iCloudミュージックライブリで聞いていたのですが、マッチングがおかしいものを見つけてしまいました。私はこのCDを持っていますが、Apple Musicにも収録されているので、別のMacで聞き時には、マッチしたApple Musicの音源をストリーミングで聞くことになるのですが、驚いたことに2枚目を聴いても1枚目が流れるという不思議さなのです。

iCloudミュージックライブラリの方は、もう少し使い勝手が良くなるといいですね。

人生いろいろだなあ、と思った1日でした。このいろいろな人生の波にうまく乗っていかないと、と思ったり。

それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Book,Miscellaneous

双生児(上) (ハヤカワ文庫FT)
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双生児(下) (ハヤカワ文庫FT)
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昨日取り上げた「双生児」を書いたクリストファー・プリーストを調べていくと「信頼できない語り手」という言葉にたどり着きました。

なんだか、フーコーの議論を思い出して、とても興味深かったのですね。

語られていることが、実は真実ではないということで、一人称小説や、精神疾患を患う語り手などが、一貫性のない非論理的で物語世界においても誤った言説を取る、というものと理解しました。

まあ、「双生児」においても、事故などが原因となって、一人称の語りが大きく揺らぐ場面が多々あるわけですが、これが「信頼できない語り手」ということになるわけでしょう。

私が最近思っている、文学における「ズレ」あるいは「不協和音」のような構造・言説が、この「信頼的ない語り手」ということになるのか、と思いました。

かつては、真実を語るべきテクストが、真実を語ることはない、という、古くて新しい出来事が現れている、ということなんだと思います。

これが、多分旧約聖書で出尽くしたと言われる類型的な物語を昇華する仕組みなんだと思います。

それは、まるで、オペラの演出のようなものに思えてなりません。知られたオペラの筋書きをスコアに基づいて読み替えるという営為は、おそらくはいかにも知られた「よくある筋書き」のようなものに、新たな意味を加えるということです。

まあ、少し話は戻りますが、主観というのは本当に何を思うのかわかりませんから、誰しもが信頼できない語り手とも言えるわけで、真実なんてものはどこにもない、という状況の中で、信頼できる語り手こそが、信頼できない、という状況に陥りそうです。

歴史も文学も、真実ではなく解釈ですから、なんてことを思います。かなり悲観的な見方ですけれど。

本当は、フーコーのことなど書いてみようと思いましたが、それはまたにします。

今日はそろそろ休みます。おやすみなさい。グーテナハトです。

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いや、本当に面白かったです。私はどうも文学というものの最新動向をまったくおさえていないという状況なのですが、ともかく、この本は、物語の面白さとともに物語構造の面白さの双方を兼ね備えていて、ストーリーとストラクチャーの両方で、読者を引き込むというものなのだ、と思いました。昔ながらの論理だったストーリーであれば、その牽引力はストーリー自体が持っているのですが、この「双生児」においては、物語構造それ自体が読者を引き込む力を持っていて、次はどうなるのか、という高揚感を、構造自体が産み出しているように思います。

私は、かつて見た《ラン・ローラ・ラン》という映画や、J・P・ホーガンの「プロテウス・オペレーション」を思い出しながら読みました。

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あまり書くとネタバレになりますので書きませんが、もしこれから読まれる方がいらっしゃるとしたら、以下の点に注意された方が良いかと思います。

一つ目は、短期間で集中的に読まれることをお勧めします。私は、ずいぶん長いことかかって読んでしまいましたので、構造の持つ仕掛けのようなものに気づかないことがあったのです。もし短期間に、可能であれば、集中して一気に読んでいれば、そうした面白さをもっと感じられたのではないか、と思っています。

二つ目は、ぜひ第二次大戦における欧州戦線の歴史的経緯や、ナチスドイツに関する基礎的知識は持っておいたほうがよさそうです。そうすると、実際の歴史と、物語の関係性をより楽しむことができるでしょう。もっとも、歴史とはそれ自体物語です。ドイツ語でいうと歴史も物語も同じ言葉です。そうしたことも何か思い出しながら楽しむことができるでしょう。

三つ目は、解説を読むタイミングです。さすがに解説は素晴らしいのですが、解説もやはりそれは一つの解釈です。私も解説に助けられて、長期間にわたって読んでしまったディスアドバンテージを補うことができました。ただ、ついつい興味本位で安易に解説へのページをめくってしまったというった方がよさそうです。そうではなく、解説の前に自分なりの解釈を文字に落とすなどして、解説との知恵比べをするぐらいの方がよさそうです。

個人的には、本当に示唆に富んだ気づきをもらいました。それも大きな示唆をもらった気がします。

今日も、《トリスタンとイゾルデ》を聴いて過ごしました。酔いますね、これは。

というわけで、今日はこの辺りで。おやすみなさい。グーテナハトです。

Opera,Richard Wagner

Tristan Und Isolde

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なんか、急に重い《トリスタンとイゾルデ》を聴きたくなりました。重くて甘いのはバーンスタイン盤ですが、あいにくApple music で聴くことができないので、別の思い演奏を、と思い、バレンボイム盤を。

そういえば、私、バレンボイムの来日公演で《トリスタン》を聴いているんですが、あまり記憶がないわけでして、覚えているのは、ルネ・パぺの素晴らしいマルケ王のことばかりでした。ひたすらに、NHKホールのSprawl な会場のシートに身を沈め、聴いたのですが、それはそれは体調が悪かったなあ、と…。

ワーグナーは聴く人の体調を要求するなあ、と。誰しもが思うことですが、あれは修行に他ならないです。

でこの演奏もやはり、重い。フルボトルの重く濃密なワイン。酒石の結晶を含んだ濃厚なワインのような。この演奏、多分、聴きすぎると二日酔いするほどのもの。その場は甘美だか、少しずつ少しずつ、高揚と引き換えに理性を奪われ身体を明け渡していく。そんな感じ。危険。それが、人間の本性だとしたら、極めて危険。だが、そうだからこそ、この曲は、後世を二日酔いにして、まだ、そこから醒さない。酔った男は数多。

そんな演奏に思います。

ただ、こうした音楽に対する感想というものは、どうしても主観的で、必ずしもわかりあうことができないものなのではないか、という疑いを感じずに入られません。定量化のできない、まさに個々人に取っても主観的な判断であり、その時々の体調によっても左右されるような、そんなゆらぎはかない判断を書くことに何の意味があるのでか。確かに、反省的に考えると、バレンボイムが重い、というのはもしかすると私の臆見かもしれません。バレンボイムの弟子であるエティンガーの降った《こうもり》の重さの記憶があるからです。

ですが、それにしても、さらに演奏に耳をすますと、このテンポの緩め方は本当に重厚なものです。ひどく重い感覚を呼び起こすのです。まるで、足かせをはめて歩くような。ですがこの重みこそ、何か重いものを持ち上げたり、あるいは重いものの上に横たわったりするときに感じる安心感のようなものをさえ感じるわけです。それは恍惚としたもののような高揚で、繰り返すのも憚られるものの、それでも繰り返すとすれば、それは、明らかに静かで深く重い酩酊でしょう。深く重い酩酊。そのまま眠りにつけば、そこで命を奪われるような。

なんか変な感じになってしまいましたが、つまるところすごい演奏でした、ということです。しばらく《トリスタン》を色々聴き比べてみたいなあ、と思いました。

酔って書いているわけではありませんが、長々とすいません。おやすみなさい。グーテナハトです。

Apple Music

今月もこちらの振り返り。そろそろ平均的なデータ量がわかってきた感じかもしれませんが、またかいてみます。

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12月のモバイルデータ通信量は4.0GBでした。11月は夏休みがありましたが、今月はずいぶん外出したからというのがその理由だと思います。まあ、7GBに対して余裕です。

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ミュージックも1.8GBでした。19日間仕事場に行きつつ、1日だけ休みでしたが丸一日AppleMusicを使っていましたので、全部で20日ずいぶんと使った計算です。そうすると、やはり1日あたり80MBで、先月の1日あたり80MBと同程度、という計算になってしまいました。仕事場へは1日往復3時間かけていますので、私の聞き方だと1時間27MB程度という計算になり、これは全く変わりません。

今日はこちら。

双生児(下) (ハヤカワ文庫FT)
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これも2ヶ月ほどかけてローテーションしながら読んでいます。パラレルワールドもので、他のパラレルワールドとどう違うか、最後まで読まないとわからない状況。ストーリとストラクチャーの両方を味わう、という趣向なんだと思います。

明日は早起きしないと。正月明けですので、準備をして早々に寝ます。

ではお休みなさい。グーテナハトです。

Apple Music

Photo
甘い蜜のような太陽の光を浴びる雑木林の木々。本当に、太陽の光を狂ったように浴びたいです。

さて、今日もiTune Match≒iCloudミュージックライブラリが10万曲に拡大されてからのこと。私のライブラリは33,836曲でした。そのうち、17,938曲がApple Musicとマッチせず、17,938曲がのアップロードが始まったわけです。

ですが、このアップロードは大変に時間がかかります。おそらくは、エンコーディングをし直しているのではないかと想像しています。

こちらの記事が本当に参考になります。素晴らしい記事です。

【検証】iTunesから「iCloudミュージックライブラリ」にアップロードされた曲がどう変換されるのか確認してみた

それで、このアップロード作業ですが、開始したのが12月13日でしたが、ようやく12月27日に完了しました。この間の数日間は(あまり褒められた話ではありませんが)、Macを立ち上げたままとして、ただひたすらアップロードに専念してもらった結果です。ですので、普通に使用しながらアップロード、というスタイルをとっていたら、まだ終わっていなかったと思っています。

アップロードが終わり、別のMacでiTunesを開くと、以下のように自分の持っている楽曲の中どれがマッチしてApple Musicの音源を使っていて、どれがアップロードされたのか、ということがわかります。

スクリーンショット 2016-01-02 23.15.23

ざっと見てみると、幾つか取りこぼしがあるようなので、もう一度アップデートはしないといけないと思いますが、そのほとんどを、なんとか私の複数のAppleデバイスでアクセスできうる、という体制を整えたということになります。

ただ、先日も書いたように、どうもiOS9.2にアップロードしたところ、不審な挙動が現れているので、私はiOSからはiCloudミュージックラオブラリを使わない運用にしています。

iOSできちんと使えるようになれば、私が2年前に書いたこちらの記事が、いろいろな課題はあるにせよ、解決への道ができた、ということになると思います。

iTunes Match 登場でiPod Classicは終焉し、オペラリスナーは困惑するか。

楽曲の多いオペラファンでも、10万曲以下の楽曲数のiTuneライブラリであれば、必要な時に必要なだけ楽曲をオンデマンドでストリーミング再生できる、ということです。

昔は、160GBのiPod Classicの容量が無限に思えたものですが、現行ではそこに収まらない状況だったわけで、そこをクラウドを使って容量が10万曲まで増えるということがひとつの回答になる、ということになりそうです。

正月休み、休めましたが、少し体力的にはきついかも。それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Jazz

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

なかなか難しい時代になりました。これまでも難しい時代でしたが、難しさが変わったというということなのだと思いますが。

今年もきっと難しい問題がたくさん起きるのでしょう。世界は均一でもなく、ムラがあるのですから、というようなことを考えながら過ごしました。アンテナをきちんと張っていかないと、と思います。

今日はこちら。

Virtuoso (OJC Remaster)
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ウェスを聞いた後にサジェストされたので聞いてみたんですが、ソロ・ギターでこういうのをやるのって、きっとほとんどのジャズギタリストが憧れることなんだろうなあ、と思ったりしました。

どうも、サックスを吹いていたので、他の楽器のアルバムを聴くだけの経済的時間的余裕のようなものはなかったのですが、Apple MusicやAmazonのプライムミュージックである種簡便に聞くことができるようになりました。おそらくはこのアルバムは、ベーシックなアルバムなんだと思いますが、聴けるようになったのはこうしたサービスのおかげです。

それでは、みなさまおやすみなさい。グーテナハトです。

Miscellaneous

Photo

大晦日。

今年は、大変なこともありましたが、とはいえ、いろいろと充実した一年であったと言わざるをえません。詳しくはここには書けませんが、ともかく、これまでの10年とは違う状況へと移行した一年だったと言えるでしょう。いろいろ迷いもありましたが、自分のやるべきことが見え始めたという点においても画期的な一年でした。

ちなみに、少し穴は開いていますが、9月22日からは、ほとんど毎日更新を続けているつもりです。穴が空いたのは、4日ほどでしょうか。本業関連で都合がつかない日以外は、書いたつもりです。

何時ぞや書いたかもしれませんが、まずは量を充実させることであり、質は後からついていくる、というのをモットーに書き連ねてきましたが、結果としてどうだったのか、というのは神のみぞ知る、で私にはまだよくわかりません。ただ、いらっしゃってくださるみなさまは、10月以降これまでよりも多いという統計結果が出ておりまして、やはり書き続けることが重要なのだ、ということを改めて理解しました。

私の尊敬する辻邦生は「ピアニストが弾くように、文章を書け」と言っており、小説家になるとか、そういう気があるかないかはともかく、辻邦生の学徒(自称)で、文章を愛する一人の人間として、辻邦生のようにかけるように、日々意識を向けていた、ということは言えると思います。

まあ、うまくはいかないのですが。

とはいえ、一年を振り返ってみると、約32000回表示されたようで、特に、こちらの記事群が最もご覧いただけたようです。

辻邦生──西行花伝展 その1

辻邦生──西行花伝展 その2 自筆の日記を読んで

辻邦生──西行花伝展 その3 フォニイ論争を顧みながら

辻邦生──西行花伝展 その4 おわりに

また、こちらの記事もたくさん読んでいただいたようです。色々批判はありますが、2002年から13年間にわたって使ってきたiPodとiTunesのシステムが、Apple Musicという形で進化した今年は、やはり感慨深いもので、これからもより使いやすく、進化してくれることを願っているのですが、どうでしょうか。

iTunes Matchの制限曲数は10万曲になるのか?

さて、来年はどうなるでしょうか、というか、どうしたいか、ということなんですが、まあ、来年は「叩かれる」ぐらい頑張らないとね、ということなんだと思います。結局は、何かをやろうとする人というのは、少なからず批判を受けるわけで、私も今年はずいぶん仕事場で突き上げを食らったりしたものです。しかし、どんな人も、何かをやる時というものは、批判されるもので、批判されるぐらいでなければ、何をもなしえない、ということなんでしょうね、と思いました。打たれているうちが、出る杭も華なんだ、ということみたいです。

というわけで、みなさま良いお年をお迎えください。グーテナハトです。

Book

本来は、100冊ぐらい「タッチ」するはずだった今年ですが、まあ、そううまくいくわけはありません。「タッチ」と言っているのは、立花隆の教えでして、完読しなくても良い、というものです。曰く、本は必要なところだけ読むのが、たくさん知識を得るコツであり、気に入らなかったすぐに投げ出しても良い、というものだと(勝手に)理解しているからです。

ただ、融通がきかない性格のせいか、ついつい全部読まないと、と思っているので、罪悪感を抱えつつ、という感じです。

で、数えてみると、60冊程度にはタッチしていたみたいで、まあ、割りにしたら少なかったなあ、と思うわけです。

もっとも、雑誌やらウェブは常に読んでいます。昔と違い、読書とはすなわち本を読む、というものでもなくなってきているようにも思います。

で、辻邦生の本以外で、今年印象に残った5冊を。こうして並べてみると、そこに繋がるものが見えてきてしまうのが怖いところです。

ジョージ・オーウェル「1984年」

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
ジョージ・オーウェル
早川書房
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古典&再読ではありますが、強烈でした。

ライフハッカーで紹介されていた、コリイ・ドクトロウの仕事ぶりに興味を持って、読んだ「リトル・ブラザー」が「1984」から影響を受けているということで、「1984」を改めて読み直してみて、背筋を凍る経験をしたというところです。

「1984」はいつ成就するのか? そういうことを考えましたが、実際にはひたひたと水位は上がっているのかも、なんてことを思いました。

この本に書かれる「ダブルスピーク」に感染してしまうと、人の言っていることを字義通り捉えることができなくなります。ゲフェールリッヒな本でした。

コリイ・ドクトロウ「リトル・ブラザー」

リトル・ブラザー

リトル・ブラザー

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コリイ・ドクトロウ
早川書房
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こちらのコリイ・ドクトロウの本はなんとかハッピーエンドなので、元気が出ますし、気分だけでも若返ります。そして無性にプログラミングがしたくなります。ただ、「1984」のような背筋が凍る思いもするでしょう。

重田園枝「ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む」

ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む (ちくま新書)
筑摩書房 (2014-01-31)
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もっと早く読んでおけばよかったフーコー。食わず嫌い&何かしらの反感があって、ずっとフランス現代思想に背を向けていたのを後悔したのでした。まあ、学生時代サボって楽器ばかり吹いていた、ということなのでしょうけれど。

フーコーは原典で読む勇気と時間がないので、二次文献を何冊か読みました。いずれも面白いのですが、特にこの本は強烈で、これもやはり背筋を凍る思いにとらわれます。つまるところ、全てが知らないところで作られている、ということ。

私が今ここで書くことができないことが、この本には書かれていて、NHKの夜のニュースを見ることすら怖くなります。理由は、ぜひ読んで体感してみてください。

現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義

現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義 (講談社現代新書)
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これも本当に衝撃的な本でした。池内恵さんの本で、普遍価値の脆弱さを思い知らされます。やはり、人間はわかりあうことができない、ということ。その前提に立って話さなければならない、ということを痛感します。世界は広く深く寒い。そういうことが解る本です。

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください–井上達夫の法哲学入門

これも、時代の中で読んでみてよかった本。池内恵さんオススメの本。デモクラシーの難しさを感じます。本当のリベラルとは何か。それは、きっと「リベラル」ではない、ということ。前述のように、世界は広く深く寒いわけで、そこで生きるためには何ができるのか、ということが、冷静に語られているわけです。

終わりに

先に触れたように、ここに小説がニ冊しか登場しない、ということに驚いています。小説の持つ力は強いものなのですが、私は現代において、そういう小説をあまりうまく見つけられていないようです。

では、みなさまグーテナハトです。

Movie

最高の人生のつくり方 [DVD]
アメイジングD.C. (2015-06-03)
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この映画も面白かったですね。少し時機を逸しましたが、ディケンズの「クリスマス・キャロル」を思い出しました。

偏屈な老不動産屋の元に、その存在すら知らなかった孫娘が現れたことで生じる化学反応、というのがあらすじです。

とても安心してみていられる映画でした。

それで、何より凄かったのが、ダイアン・キートンの歌ですかね。最終部分で、「いそしぎ」を歌うのですが、いや、めちゃかっこいいです。まあ少しばかりの傷はあるにせよ、いい雰囲気でした。演出もいいんですよね。聞いている老紳士が、ダイアン・キートンのトークや歌に徐々に引き込まれていく姿が描かれているんですが、その老紳士はあくまで背景なのでピンがあっていないという状況で、ピンが合わなくても、そういう心情が伝わるということとは、その俳優さんの演技の素晴らしさと、演出の妙なんだろうなあ、と思いました。

あれ、「いそしぎ」を調べたんですが、この映画「いそしぎ」の最後は、怪我をした鳥を空に羽ばたかせる映画なんだそうです。この「最高の人生の作り方」も最後鳥を飛び立たせるなあ、と。意図しているとも見れそうです。

あともう一息で2015年も終わりです。

では、おやすみなさい。グーテナハトです。