Opera

 1日遅れのエントリーになりましたが、昨日は、新国にて「オテロ」を観てきました。

いやあ、ルチオ・ガッロさんは、凄いですわ。この方は、2007年の「西部の娘」で新国に初登場し、その後2008年のドン・ジョヴァンニで再登場。そして今回のオテロでは、イアーゴ役。この方、まずは声が素晴らしくて、ぬらりと光るつややかなバリトンなのです。ピッチが安定しているのは当然として、さらに声量がある。なにより、悪役としての確固たる存在感でして、イアーゴ役としては申し分ない世界クラスです。東京でこうした方のパフォーマンスを観ることができるとは、本当に良い時代だと思いました。私はこの方のスカルピアを聴いてみたいです。

オテロ役のステファン・グールド氏も、ドラマチックで正確無比な歌でした。声量がもう少し欲しいかなあ、と言う気がいたしましたが、そんなに大きな問題ではないかと。デスデーモナは、たしかノルマ・ファンティーニが当初予定されていたキャストでしたが、タマール・イヴェーリさんに交代。この方、若いと思うのですが、全く問題を感じさせません。若々しく明るい美しい声。デズデーモナのイメージにぴったり。

演出的には、舞台設定がキプロスであるにもかかわらず、ヴェネツィアの風景が基底にある感じ。運河あり、太鼓橋あり。しばし郷愁を感じました。運河には水が張ってありまして、キャストが浅い運河に足を踏み入れる場面も。それから、水面に光を当てることで、舞台全体に水面の反射するゆらめきが現れて、これがまた美しい。良かったです。

私は、イアーゴが酒を飲みながら独唱する1幕のところで、ルチオ・ガッロさんの素晴らしいパフォーマンスに涙が止まらなかったですよ。別段泣くような悲しい場面ではないのですが。あの瞬間、私にとっては大きな美的な理念が立ち現れていたように思います。こうした瞬間を味わえるのもオペラならではかと。カタルシスとも言えましょうが。

次のオペラは11月の「魔笛」。10月には、N響定期でプレヴィンの家庭交響曲と、カプリッチョ終幕を聴く予定。