Tsuji Kunio

20年前、週刊朝日百科は「世界の文学」として全121巻の冊子が毎週毎週刊行されていました。創刊号を買って以来、毎週取り寄せていました。すべてを読んだというわけではありませんが、文字通り「世界」の文学を一望できるという意味ではとても貴重な資料でした。内容も、文章だけではなく、関連する写真や映画などビジュアル面で充実していました。

もちろん辻邦生も世界の文学のなかに位置付けられていまして、第100巻において菅野昭正さんが「本の小説、小説の本の」という辻邦生論を展開しています。

https://museum.projectmnh.com/2016/03/21225416.php

そして、また辻邦生も執筆者の一人として登場していました。第20巻「映画と文学」で「小説、芝居、そして映画へ」というテーマで「映画的イデー」について語っている小論です。

この小論が掲載された朝日百科第20号「テーマ編 映画と文学」は、1999年11月28日付けで発刊されています。発売日でいうとおそらく11月15日だったようです。辻先生が亡くなられたのは1999年7月29日ですので、なくなってから4ヶ月ほどあとに活字になったと言うことになります。

ところが、この小論について、辻邦生全集第20巻の著作年表をみると、記載がないのですね……。1999年9月12日に日本経済新聞に掲載された「青い魚の家」が最後の著作となっているのです。

全集20巻の著作年表を10年ほど遡りましたが、該当する文章の記録は見つからず、これはもしかして、幻の遺稿?などと色めき立ってしまいました。

もしかすると旧い小論をあらためて取り上げたのかしら、などと思ったりもしているのですが、あるいは、私が著作年表を見落としたかもしれず、とはいえ、Google先生にも聞いてみたのですが、答えはなく、もし本当に記録されていない最後の出版物だとしたら、なにかのお役に立てばよいのですが、と思っています。

今日は予定を変えてこちらをご紹介しました。タイトルはあおりすぎですかね……。

それではみなさま、よい夜を。

おやすみなさい。グーテナハトです。