Tsuji Kunio

風雅集

風雅集

posted with amazlet at 16.05.26
辻 邦生
世界文化社
売り上げランキング: 735,599

先日よんだ辻邦生の「風雅集」。

これも、「日本的なもの」の一環であらためて手に取ったということだと思います。

冒頭の東歌を廻る旅行のエッセイはなかなかのものでした。万葉の昔の古風な歌なのですが、辻邦生がそこから描き出す描写は、万葉の人間の息遣いや情念が横溢していて、なにか唸ってしまいました。なんとなしに読める歌が、今も昔も変わらない人間の愛欲のようなものに溢れているわけですから。

それで思い出したのが「風越峠にて」という辻邦生の中編小説です。これもやはり万葉集を題材にしながら、戦中の暗い時代に息づいた恋愛模様を描くものでした。この「風越峠にて」でもやはり、短歌の解釈が本当に生き生きとしていて、そこまで膨らませることができるのか、というぐらい見事で魅力的な解釈を書いていたように思います。

見知らぬ町にて (新潮文庫)
辻 邦生
新潮社
売り上げランキング: 1,195,176

(新潮文庫だと、この「見知らぬ町にて」に所収されています)

さて、にしても、なんだか刺激のない毎日が刻々と過ぎている感じ。それはそれで意味があることなのですが、こうやって人間は牙を抜かれていくのか、という思いもあります。

ではみなさまおやすみなさい。

 

 

 

Miscellaneous

Photo最近、日本的なものへの関心が増えています。

まあ、良いのか悪いのかはわかりませんが、日本文化にどっぷりとはまって生きているわけで、どんなに足掻こうとも、最終的には神社にお参りをしてしまうわけですから。

いや、日本的というよりも、近所の郷土史などを、調べたり、先日も書いた司馬遼太郎「この国のかたち」を読んだり、ということによるのかもしれません。

なぜか。最近、家族とサイクリングということで、近所をいろいろ走り回っているのですが、古い日本の風情があちらこちらに残っていて、なんだか新鮮な気分だったりします。初夏の白い日差しに灼かれたアスファルトとか、草原に吹きすさぶ甘い風とか、咲き誇るシロツメクサなどを見ると、なにか幸福な気分になるわけです。理由はわからないのですが、おそらくは、原体験のようなものを幼い頃にしていて、それを追体験しているからなのではないかと思います。そしてなお、これもまたおそらくはなのですが、幼い頃ほど幸福な時はない、ということも言えるわけで、原体験の追想は、あるいは人を幸福にするものではないか、ということも言えるのだと思います。だから、幼い子には、ぜひたくさんんのよい経験をさせてあげて、齢を重ねたあとでも、こうやって追体験をすることで幸福を感じてもらえるようにするのが大人の義務なのではないか、とも思います。

先日から、エルガーを聞き続け、その後ヴォーン=ウィリアムズへと駒を進めました。でも、やはり音楽は実演も必要なんだなあ、ということを常々思っています。幼い頃の夢は、NHK交響楽団の定期会員になることでしたが、その夢はまだかないません(かわりに新国立劇場の年間券を買っています)。

こちらはシノポリのエルガー。1番も2番もいい曲です。2番は別の演奏(ディビスだったか。。)を聴いたことがありますが、シノポリ盤ののびやかなところがいいなあ、と思いました。

Symphonies Nos. 1 & 2 / Pomp & Circumstances
Philharmonia Orchestra
Dg Imports (1997-10-01)
売り上げランキング: 55,644

なにか、この初夏の風情に、イギリス音楽が似合うような気がしてなりません。日本の音楽だとという音楽が似合うのでしょうか。もっとも、こうした風景自体が、原日本的な風景ではない、という考えもありますけれど。

ではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

 

Miscellaneous

この国のかたち〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋
売り上げランキング: 1,037

数ヶ月前に、NHKスペシャルで「この国のかたち」というシリーズが放送されました。いろいろと興味深く、特に、東国武士団は、開拓農民だったという史観には随分納得したり驚いたりしたものです。

それで、改めて本を買って読み始めたという次第です。日本の歴史は学生時代に一通りは抑えてはいるのですが、「日本人とは?」とか「この国とは?」という問いを立ててみたことはありませんでしたので、興味深いですね。
image
さて、今日、家族でサイクリングをしていました。河川敷の運動場横を自転車で通ったのですが、中学生か高校生かの野球チームとすれ違いました。目が会うと、彼らは、体の向きを変えて、帽子を取って私らに「今日は!」と挨拶するわけです。それが、何か「この国のかたち」に出てきた薩摩の郷中のような質実剛健な清々しさを感じました。

ですが、本当にそうなのかな、とも。きっとチームのメンバーや顧問がいる前なので、決められた作法を守っているだけに過ぎず、役割を果たしているに過ぎないのではないか、とも。

こういうところを考えるのが大事なんだろうな、と思いました。

とはいえ、何かいい気分にさせてくれるひとときでした。それが本当であろうと、作られたものであろうと、事実が大切だなあ、とも思います。

さしあたり、昨今考えていることはこんなことなのかもしれません。揺れ動く世界の中で、どうあるべきなのか、ということを考える義務がある、ということなんだと思います。

それではみなさま、おやすみなさい。

Miscellaneous

Photo
最近、いろいろありまして、なかなか以前のように書けなくなってきている感じかも。

  1. 休日に時間が取れなくなり、オペラやコンサートに行けなくなってしまった。サックスはもとより、オーボエも吹けず。
  2. 以前にも書いたかもしれませんが、3月初旬に休みなく20日ぐらい働いたのですが、その後遺症に悩まされています。ここで、ブログの連続更新が途切れました。
  3. 最近の文学的関心領域が歴史文学になっているのですが、そうするとなにか書きづらくなった。

などでしょうか。まあ、3番目の理由が最も大きい気がします。

人生総決算みたいな安易なことは意味がないので、少しずつ粘り強く変えていかないと、物事はうまく進みませんね。

そんな中で、何ができるのかしら、と。ただただデューティを守り続け、身体をメンテナンスすることなんだろうなあ、と。

でも、今日もトラブルで夜中に帰宅中。

さて、今日はこちら。

Essential Herbie Hancock
Essential Herbie Hancock

posted with amazlet at 16.05.16
Herbie Hancock
Sony (2006-02-28)
売り上げランキング: 132,279

ハービーのオムニバスなんですが、そもそも私はオムニバスがあまり好きではありません。アルバム制作の意図が見えにくいので、というのが理由。あとは、選曲者の主観に縛られるような気がして。
でも、Apple Musicで聴けるButterflyはこのアルバムだけです。ハービーのけだるいかっこよさを満喫しました。

ではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Miscellaneous

 

Space Xのファルコン9が、ふたたび軟着陸に成功だそうです。

なんだかなあ。ほんとうにアメリカはすごいなあ、と。初号機が打ち上げられたのが2010年。すでに24機打ち上げているそうです。1年に4機のハイペースですか。あっという間です。

やはり、どんなに国の齢が重なっているとはいえ、アメリカはまだまだ若い国なんだなあ、と思います。こればかりは本当に羨ましいですね。

若さというのはいろいろありますが、新しいものを受容できる柔軟性とか、未来に向けて拡大発展できる可能性といった意味があるとおもいますが。まだまだそうした性質を失わないでいられるのは羨ましいですね。

ただ、それが何とトレードオフでなりたっているのか、ということは、いつも考えておかないといけないです。

それにしても、音楽を聴く余裕なんてまったくない毎日。じょじょに干あがる湖。

それではみなさま、おやすみなさい。

 

Miscellaneous

IMG_1173.JPG

近所の神社。昨日の写真ですが、今日も昨日と同じくいい天気でした。近所を回るのが最近の日課ですが、なかなか風情ある風景がいくつもありました。まだ江戸期や明治期の風情が感じられます。これも時間や季節によって表情を変えるのだと思います。

今日は、こちらを少しずつ。でもまだモーツァルトを聴いていたい感じかも。

String Quartets
String Quartets

posted with amazlet at 16.05.05
Beethoven Amadeus String Quartet
Deutsche Grammophon (2000-10-10)
売り上げランキング: 14,055

明日は仕事場へ。朝早いです。
それではみなさまおやすみなさい。

Literature

IMG_1166.JPG
今日は本当に初夏の風情です。太陽高度、日の出日の入りは8月と同じですので、空気感はまさに夏と同じです。今日、二時間ほど自転車に乗りましたが、腕が真っ赤に日焼けしてしまいました。

岩波講座 文学〈1〉テクストとは何か
岩波書店
売り上げランキング: 725,384

先日から少しずつ読んでいる岩波講座文学。第1巻の冒頭部分からして本当に興味深く、気づきがたくさんあります。

藤原定家が土佐日記や源氏物語の写本を作る際の出来事が語られているのいですが、いわゆるオリジナルと思われる紀貫之のテキストを、写本を作る過程で定家が何かしらの付け加えをしていたようです。本文の改変、あるいは漢字をあてる、などが見られるようです。

また、源氏物語の写本を作るにあたって、定家は日記に、その底本が何かしらの改変がなされているということを指摘している、という内容でした。

その後、そもそも物語というものは、口伝の中で徐々に変質していくということも物語の性質なのではないか、とされています。

物語テクストは容易に読者の声の介入を許容しただろう。それは今日から見れば改作ないしは改ざんという行為だが、しかし改作や改ざんの前提となる本文という認識が、そもそも物語テクストには希薄だったはずなのだ。

兵藤裕己 (2003). 「はじめに」 小森 陽一,富山 太佳夫,沼野 充義,兵藤 裕己,松浦 寿輝 岩波講座 文学1 テクストとは何か 岩波書店 7ページ

私は、オリジナルと解釈、という文脈が、実に興味深いものだと思います。音楽における楽譜の変遷とか、オペラ演出とか。明日以降さらに続けようと思います。

明日も良い天気のようです。皆様、良い休日を。

おやすみなさい。

 

 

Miscellaneous,Wolfgang Amadeus Mozart

それにしても、最近いろいろと定まることが定まり、決めることも決め、やることも少しずつ始まり、という感じです。問題は、時間がないのと腰を痛めて動きにくい、ということ。まったく。。昔はあんなに重い荷物を持ってもビクともしなかったのに、最近は立っているだけでも辛いという状況だったりして。

そういう面では、若いうちに動き始めるアドバンテージというのはあるよなあ、とも思ったりします。私も腰を壊す前にもう少しいろいろできればとよかったなあ、と思います。

でも、若いときはうまく動けないことも多いです。頭の良い人、要領の良い人はさっさとやっちゃうんだろうと思いますが、なまじっか悩んだりすると、若いときによくいるとんがっている人になってしまいます。

今でもたまにとんがっている人に会うことがありますが、羨ましいと思いながらも、あれやると辛いんだよなあ、と思ったりもいます。とんがると結局損しますので、別のやり方でやらないといけないんだけど、そうした知恵がないといけないわけです。

もっとも、とんがって損するという環境自体がダメなのかもしれませんけれどね。。なんてことも思います。

今日はこちら。

String Quartets
String Quartets

posted with amazlet at 16.05.03
Amadeus Qt
Dg Imports (1990-10-25)
売り上げランキング: 26,421

1773の作品ととされるモーツァルトの弦楽四重奏曲第13番。この曲だけはどうしても気になってしまいます。短調ということもあると思いますし、昨日も触れたように最終楽章のフーガは本当に立派です。作曲したのは17歳ですか。きっととんがっていた頃なんだろうなあ。どうも映画の印象が強いです。本当にいい曲ですね。でも、きっと今でも、これぐらいの才能を持っている人はたくさんいるんだろうなあ。モーツァルトの時代は世界に出られる人は一握りでしたが、今はトンがっている人は、誰もが世界に出られる時代なのかも。

ではおやすみなさい。グーテナハトです。

 

 

 

Wolfgang Amadeus Mozart

今日は帰宅してから、仕事場の方とビデオチャットやSlackなどを使っていろいろ相談。グローバルなワークスタイルは、どんどんすすんでいるというのに、それをつかえず、それでよしとしている世界もあるんだなあ、とあらためて。

今日もモーツァルトの弦楽四重奏曲を聞き続ける感じです。何も考えにで聞くと、BGMになってしまいますが、結構堅牢な曲などがあって、驚きます。

今日はこちら。というか、モーツァルトの弦楽四重奏は面白いですね! はまりそうです。。

Mozart String Quartets

Mozart String Quartets

posted with amazlet at 16.05.02
Mozart Hagen Quartet
Deutsche Grammophon (2006-10-10)
売り上げランキング: 10,087

例えば、第13番の最終楽章は本当に立派なフーガですね。なんだか、バッハを聴いているかと思ってしまいます。「音楽の捧げ物」を思い起こさせる、構築美とその中に含まれるなにか心を刺す痛みのようなものを感じる音楽です。美しいものにはおそらくは触れてはいけない毒のようなものがあって、というよくある寓話のようなものを思い出してしまう音楽でした。
たぶんですが、この弦楽四重奏曲第13番はあまり聴いた記憶がないのです。
今日はハーゲン弦楽四重奏団。アマデウス弦楽四重奏団と対比的な硬質な演奏ですね。こういう聴き比べができるのもApple Musicのおかげです。

明日からまた3連休です。その後、また1日仕事場に行き、また2連休です。まだまだ家でやることはたくさんありますので頑張ります。

それではみなさま、おやすみなさい。グーテナハトです。

Wolfgang Amadeus Mozart

ゴールデンウィークの前半が終了。仕事場で消耗しつつ働かせていただいておりましたので、金曜日と土曜日はただただ休息し、今日やっと体が動き始めたので溜まっていた家事をはかせるという実に実践的なゴールデンウィークを過ごしました。明後日からの中盤の三日間も溜まっていた家事に勤しむ日々になるはず。

そんな中で聞いていたのがこちら。Apple Musicで聴いたアマデウス弦楽四重奏団のモーツァルトの弦楽四重奏曲集です。

String Quartets
String Quartets

posted with amazlet at 16.05.01
Amadeus Qt
Dg Imports (1990-10-25)
売り上げランキング: 24,510

モーツァルトの弦楽四重奏曲は、アルバン・ベルク弦楽四重奏団でよく聞いていましたが、アマデウス弦楽四重奏団は、ある種ダイナミックで重みのある演奏だなあ、と思います。厚みのある音色は実に豊かでありました。ネットでいくらか見てみると、私が感じたものと同じような評価がみられました。

それにしても、こうしてアマデウス弦楽四重奏団のモーツァルトの弦楽四重奏曲全集をApple Musicで聴くことができるというのは本当に幸せなことです。

最近の幸せはそうしたものに限られるのかも。

今日も、所用あって近所の図書館の書架のあいだを歩き回り、ボルヘスの講演集を手に取ったりしたのですが、なにか本当に遠い世界の出来事のようです。どこか間違ったところに来てしまっているような気がしてなりません。

それではみなさま、おやすみなさい。