European Literature

ウォーターシップ・ダウンのウサギたち〈上〉
ウォーターシップ・ダウンのウサギたち〈上〉
  • 発売元: 評論社
  • レーベル: 評論社
  • スタジオ: 評論社
  • メーカー: 評論社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2006/09
  • 売上ランキング: 20854
  • おすすめ度 5.0
ウォーターシップ・ダウンのウサギたち〈下〉
ウォーターシップ・ダウンのウサギたち〈下〉
  • 発売元: 評論社
  • レーベル: 評論社
  • スタジオ: 評論社
  • メーカー: 評論社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2006/09
  • 売上ランキング: 8354
ウォーターシップダウンのうさぎたち コレクターズ・エディション
ウォーターシップダウンのうさぎたち コレクターズ・エディション
  • 発売元: ジェネオン エンタテインメント
  • レーベル: ジェネオン エンタテインメント
  • スタジオ: ジェネオン エンタテインメント
  • メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 価格: ¥ 3,990
  • 発売日: 2006/07/21
  • 売上ランキング: 16643
  • おすすめ度 4.0

「ウォーターシップ・ダウンのウサギたち」を読みました。

  • 小学生時代に読んでおきたかったなあ、と真っ先に思う。残念。
  • 各章の冒頭に記される引用が的確で味わい深い。
  • 作者は否定しているようだが、現実世界のメタファーに富んだ作品に読むことができる。ヘイズルの泰然とした振舞、ピグウィグの勇気と剛気、ウードワードの権力欲など。人間世界の縮図を見ているようで、面白い。ヘイズルのような優れたリーダの元で働いてみたいものだ。ないしは、ヘイズルのようなリーダーになりたいものだ。
  • 細緻な描写や説明もすぐれていて、矛盾点は見つからない。「細部に神は宿る」という言葉がぴったり当てはまる。
  • 冒頭部から物語はどんどん展開していく。章立てはそれぞれ短く、テーマが細分化されている。だらだらとストーリーが展開していくのではなく、リズムをもってきびきびと展開していくのでとても読みやすい。
  • それにしても、ウサギの視点で、舗装された道路、自動車、鉄道、橋、舟などを描写するのは骨が折れるだろうな、と思う。そして、どれもきちんと描写されていて舌を巻く。
  • 物語はこれぐらい面白くないといけないし、完成度が高くないといけないな、と思う。
  • DVDも出ている。機会があったら是非見てみたい。
  • この本は、本当に読んで良かった。

American Literature

回想のビュイック8〈上〉
スティーヴン キング Stephen King 白石 朗
新潮社 (2005/08)
売り上げランキング: 197876
回想のビュイック8〈下〉
スティーヴン キング Stephen King 白石 朗
新潮社 (2005/08)
売り上げランキング: 196930

読み終わりました。以下感想。

  • 以前も書きましたが、謎のクルマ、をモティーフにしてよくぞここまで引っ張ったなあ、というのが第一印象。その筆力に驚嘆するばかり。
  • しかし、謎は最後まで謎のままなのは残念。余韻はあるのですが、もうすこし本当のことが知りたかったです。
  • D分署という閉鎖された空間で大人たちのなかで秘密にされていた謎を、青年(少年というには歳を取っていると思うのだが)が徐々に知っていくというあたり、青年が徐々に世間ずれしていくメタファーになっているのかな、と思ったりする。
  • 凄惨な描写を読んでいたら、清廉な風景に逃げ込みたくなって、なぜか、かつて赴いた北欧の風景が思い浮かびました。

すこしホラー/ミステリーに疲れたので、次はもうすこし心休まる本を読もうと思っています。

American Literature

回想のビュイック8〈上〉 回想のビュイック8〈上〉
スティーヴン キング (2005/08)
新潮社

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今日から読み始めたのですが、これで物語を展開するのはどだい無理じゃないか? とおもうような設定でここまでぐいぐいと物語を引っ張ることのできるキング氏の才能に舌を巻いています。さすがです。うーん、結末が気になってしかたがないです。どこに落としどころを持ってくるんだろう……。

Tsuji Kunio

ラジオドラマCD 西行花伝 ラジオドラマCD 西行花伝
(2006/06)
エニー

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会社の帰りにラジオドラマ版西行花伝を聞きました。原作の幽玄な雰囲気をうまく表現していると思います。
今日は最初の小一時間ほどを聞いたのですが、特に印象的だったのは待賢門院との感動的な出会いの場面。西行役の竹本住大夫さんの語りの静かな迫力にただただ舌を巻くばかり。微妙に関西方言のイントネーションが混ざっていて、ああ、これは本当に西行が語っているのだ、と思わずにはいられませんでした。
その後、西行と待賢門院が二人きりになって桜を見るところでいったん今日はヘッドホンを置きました。CD四枚組でので、まだ先は長いようです。続きは木曜日に引き続き聞く予定。

Japanese Literature

拷問蔵―公事宿事件書留帳〈3〉 拷問蔵―公事宿事件書留帳〈3〉
澤田 ふじ子 (2001/02)
幻冬舎

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公事宿事件書留帳シリーズ第3巻「拷問蔵」です。
NHKのドラマ「はんなり菊太郎」は先週終ってしまいましたが、本は5巻までありますからね。まだまだ楽しめそうです。澤田ふじ子さん、文章も巧いですし、構成も巧みです。主人公の田村菊太郎さん、相変わらずスーパーヒーロー的立居振舞で、読者の心を鷲掴みです。前にも書いたと思いますが、女性だからこそ書ける理想の男性、だと思います。時代考証や、時折あらわれる蘊蓄もばっちり。興味をそそられるものばかり。隙がありません。

Japanese Literature

会社帰りに途中駅のカフェで読みかけの本を読みました。とても面白い本。ストーリー展開が妙で、ページをめくる速度がついつい速くなってしまいます。

それで、読み終わりました。分厚い上下巻本でしたので、読み応えも十分。 よくぞここまでの長編を完成させたなあ、という大きな感歎。

しかし、なぜかその後襲ってくる虚無感。なんなんだ、これは! と言う感じ。

確かにストーリー運びは巧いし、史実を紹介しながら展開していくので、興味をひかずにはおられない。描いているテーマも大きいもの。理想を求めて変革しようとする若者達の辛苦に満ちた試みとその挫折が描かれています。 しかし、何かが物足りない。

そう自問自答しながら、雨に吹きさらされて帰ってきました。

辻邦生さんの文学も、理想と現実の隔絶や、それを乗り越えようとする意志、そして乗り越えられない現実を突きつけると言う感じで、構造としては似ているのですが……。

やはり、辻文学にくらべると、描写にムラがありました。また、現実と明らかに乖離している部分、誤っている部分が分かってしまうのでした。

これだけの長さのものを完成させるのは並大抵ではないです。しかし、それを一分の隙もなく完成させるのはもっと難しい。そう言う意味では、辻文学はより完成に近づいているなあ、とあらためて思うのでした。

Japanese Literature

最近、読書の話題がないのですが、本を読んでいないというわけではありません。
先週は、文芸誌を図書館から借りて読みふけっていました。辻邦生さんの本ばかり読むのも少々偏っているかな、と思ったと言うのもあります。
文芸誌自体、読むのは久しぶり。大学の頃ちらりちらりと読んでいたとき以来ですね。
オペラで言ったら、ガラ・コンサートみたいなもので、沢山の作家さんの色とりどりな小説を読むことが出来るというのは刺激的でした。そういえば、あの芥川賞作家もあの直木賞作家も読んだことなかったなあ、と言う感じで、新鮮な感動が沢山でした。松本清張や井上靖の短篇もたまたま読むことが出来て、読む愉しみを堪能することが出来ました。
今週は後半に本に戻ってきました。それについては明日書くことにいたしましょう。

Japanese Literature

Verdi: La forza del destino Verdi: La forza del destino
Giuseppe Verdi、 他 ()
Emi Classics

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 今日も会社の行き帰りにオペラの予習をしました。ムーティが振る「運命の力」です。強力ですね、ムーティ氏。序曲だけでもうお腹一杯という感じ。力を入れるところ、抜くところがしっかりしていて、何を言いたいのかがよく分かります。まずは聞き込んで旋律を暗記しないといけません。
 

木戸の椿―公事宿事件書留帳〈2〉 木戸の椿―公事宿事件書留帳〈2〉
澤田 ふじ子 (2000/12)
幻冬舎

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 先日もご紹介した澤田ふじ子さん「公事宿事件書留帳の二巻「木戸の椿」を読んでいます。澤田さんのプロットは独特です。起承転結ではなく、起承転……という感じで、結を仄めかしたり、読者の想像に任せたりという感じで、不思議な余韻を感じさせてくれます。主人公の田村菊太郎は、頭も切れて、腕っ節もあって、それでいて浪人もので気ままに居候などを決め込んでいる、男性から見ても女性から見ても理想的な男性です。女性だからこそ描けるヒーローなのかもしれません。それでいて平板さや冗長さがないのには驚きます。もっとも、男性が作者なら少し弱点を持ったヒーローにするのではないでしょうか……。舞台は京都なので、京言葉が台詞に登場しますが、これがまた良い味を出しています。昔京都に住んでいたものとしては懐かしい限りです。女性が京言葉を話すときの婀娜っぽさと言ったら! と言う感じです。

Japanese Literature

さぶ さぶ
山本 周五郎 (1965/12)
新潮社

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闇の掟―公事宿事件書留帳〈1〉 闇の掟―公事宿事件書留帳〈1〉
澤田 ふじ子 (2000/12)
幻冬舎

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「江戸切絵図貼交屏風」を読んでからと言うものの、時代物小説に少しく興味が湧いてきています。澤田ふじ子「公事宿事件書留帳」シリーズは、NHKの木曜時代劇で放映していることもあって読んでみることに。まずは第一巻「闇の掟」。京都弁が洒脱で、読んでいる最中は、会社で関西弁使っていました。プロットの作りも申し分なし。面白い。
それから古典である山本周五郎「さぶ」を再読。いやあ、こんな話だったかなあ、と言う新鮮な驚きと感歎。これはビルドゥングスロマンですね。今も昔も変わることのない人間社会を、透徹としたまなざしで見遣るあたりが凄い。歳をとってから読むと若いときと違う思いを抱くものですね。

Tsuji Kunio

黄昏の古都物語 黄昏の古都物語
辻 邦生 (1992/07/31)
有学書林

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「黄昏の古都物語」を読みました。前奏曲、間奏曲、終曲と題された掌編と五つの幻想的な短篇の世界です。この短篇は、「芸術新潮1984年9月号」でアール・ヌーボー特集が組まれた際に、田原柱一氏の写真と並べて掲載されたとのことです(あとがきより)。
幻想的な作風は、「天使の鼓笛隊」を想い出させます。それにしても、「幻想特急」が牧草地の真ん中に、レマン湖畔に、セーヌの河底に停車している姿が美しすぎて言葉になりません。正直言って、ヤラレた!と心のなかで叫んでしまったほどです。全編に通底するアール・ヌーボーの愁いを帯びた気怠い美しさの表現や、揺らいだ時間の表現が実に見事です。

美に魅入られるとは、その奴隷になることです。でも、それは、官能の甘い酩酊ゆえに、すべてを売り払った疚しさに似た気持を感じさせます

辻邦生「黄昏の古都物語」有学書林、1992年、214頁

「詩人というのは二重の存在さ、生れつきね。曖昧なところがあるから、健全な人たちには煙たがられる。ところが、詩人ときたら、大人のくせに子供。知っていて、何も知らない。泣いていて、笑っている」

辻邦生「黄昏の古都物語」有学書林、1992年、258頁
それにしても、セーヌの河底に列車を沈めるとは、なんという想像力なのでしょうか! 感歎してやみません。
それから、この短編集に収められた「サラマンカの手帖から」は、何十回と読み直している短篇ですが、今日もまた読んでしまいました。いつ読んでも、思うところがあります。僕にとって理想の短篇と言ってもいいと思います。「サラマンカの手帖から」については、また書いてみたいと思います。