新国立劇場/モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」

 いって参りました、新国立劇場の「ドン・ジョヴァンニ」。忘れないうちに印象をエントリーします。久しぶりに箇条書きにて。

  • ドン・ジョヴァンニ役のルチオ・ガッロ氏は精悍な印象。「シャンパンの歌」も颯爽と歌いのける技巧。演技もクールで格好良くて、すばらしかったです。
  • レポレロ役のアンドレア・コンチェッテイ氏は、レポレロの喜劇的な役柄を難なくこなしていらっしゃる。歌も良いですが、演技的にもすばらしくて、客席の笑いを誘っていました。
  • 一番楽しみだったドンナ・エルヴィーラのアリアを聴かせてくださったのが、アガ・ミコライさん。アグネス・バルツァさんのような透徹とした感じというわけではありませんでしたが、中音域の倍音に下支えされた高音は美しかったです。
  • ツェルリーナの高橋薫子さんが大健闘だったと思うのは私だけでしょうか。ツェルリーナの田舎娘的純朴さをうまく出しておられて、ピッチも安定していましたし、声も美しかった。私的には大変すばらしいと思いました。
  • コンスタンティン・トリンクス氏の指揮ですが、先日のオペラ・トークで話されていたように、定跡を大きく逸脱しない演奏でしたが、かなりテンポを落として歌わせるようなところもあっておもしろかったです。

というわけで、とても楽しめた三時間半でした。

それにしても、ドン・ジョヴァンニはかなりキワドイ話です。その中でも一番キワドイのが意外にもツェルリーナでして、ドン・ジョヴァンニに籠絡される場面はいいとして、マゼットに「私をぶって」と頼んだり(かなりMなんじゃないか、と……)、「薬局では調合できない薬を持っているのよ」なんて意味ありげなことを言ってみたり……。マゼットは完全にツェルリーナに振り回されている。一番恐ろしい女は、ドンナ・アンナでも、ドンナ・エルヴィーラでもなく、ツェルリーナです。間違いない。

それにしても、ドンナ・アンナも身勝手な感じ。オッターヴィオとの結婚を一年延ばすだなんて、意味不明。父親が亡くなって、ドン・ジョヴァンニに振り回されて、それを理由に結婚は一年待ってほしいとは。オッターヴィオは、自分がドンナ・アンナの父親役になるんだ! と意思表示しているのに。

いろいろ考えるとおもしろいです。