ふたたび、ジョン・D・マクドナルドの作品「シンデレラの銃弾」を。
これも悪役の描き方が見事。
おそらくは朝鮮戦争で捕虜となったタル・ハワードが、捕虜仲間のティミーが故郷に隠していた大金を探そうとする。わかっていることは、隠し場所を「シンディが知っている」と言ったことだけ。ティミーの故郷で待っていたのは同じ捕虜仲間のフィッツマーティン。フィッツマーティンも、どうやらティミーが隠した大金を奪おうと嗅ぎ回っていたのだ。フィッツマーティンは乱暴者で情の一つもない男。ティミーが来るずっと前に街で大金を探しているというわけだった。フィッツマーティンの妨害を受けながらも、タルはシンディを探そうと、ティミーの友人たちと会いはじめるのだが……。
「濃紺のさよなら」とプロットの構図は似ている。戦争から帰ってきた男が、宝を探す。そして残忍で非情な男が妨害者となって現れる……。「濃紺のさよなら」のアレンも相当な悪だったが、フィッツマーティンもそれに負けず劣らずの悪者。手に汗を握る場面がいくつもあって、あっという間に読み終わってしまったというところでした。