妙薬たるパヴァロッテイの「愛の妙薬」
4月の新国立劇場は「愛の妙薬」。三種類ほど音源を用意したんですが、パヴァロッティとサザーランドのコンビがすばらしいです。予習盤ランク一位は今のところこのパヴァロッティ盤です。
三大テノール
パヴァロッティは本当に偉大。おそらく、人によっては好き嫌いがあると思います。私も最初はちょっと受け付けられなかったのですが、5年ほど前から、かなりいいと思えるようになって来ました。
三大テノールのうち誰が最も好きか、という議論はよくある議論です。オペラを聴き始めたころは文句なしにドミンゴでした。カラヤン盤トゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」に陥落という感じ。
パヴァロッティは、これもカラヤン盤「ボエーム」で聴いたのが最初だったと思いますが、なんだか自然さにかけるような気がしていたのです。
カレーラスはこれもカラヤン盤「トスカ」で聴いたのが最初でした。迫力はあるのですが、こちらも少し力に寄りかかった感じで自然さにかけた気がしていました。
パヴァロッティ開眼
それで、いろいろ聴くようになるうちに、パヴァロッティの株が僕の中で急激に上昇し始めました。
何が原因なのか?
おそらくはパヴァロッティのライヴ盤(ハイド・パーク)や、イタリア歌謡集を聴いてからではないか、と。あの南国的地中海的悦楽の表現は聴くだけで元気付けられます。それから、私はヴェルディ作品が苦手なのですが、その中でも「アイーダ」については、その重い扉を開けてくれたのがパヴァロッティでした。
4年前のトリノ五輪の口パク問題とか、スコア(総譜)読めないんじゃないの? 的な議論とか、まあ、いろいろあるみたいですけれど、イタリア的なイタリア人ですので、許せちゃう。
やっぱり行きます。
実は、仕事が忙しくて、今月の「愛の妙薬」はパスろうかと思ったのですが、パヴァロッティ盤を聴いて考えを変えました。やっぱりいきますです。私は本当にヴェリズモ以前のイタリアオペラ(この中には残念ながらモーツァルトも含まれるのですけれど)は苦手ですので、なおさら勉強のためにも。
あー、イタリア行きてー。でも行く時間ないっす。悲しみ。
愛の妙薬
しかし、このオペラ、実に罪のないストーリです。ヴァーグナーの毒々しさとか暗鬱とした大洋のうねりのようなものはない。こんなに楽しそうなオペラを見聞きするのは何時ぶりだろう? 「オテロ」、「魔笛」、「ヴォツェック」、「トスカ」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」、「パルジファル」と続いてきた今年の僕のオペラ生活において「愛の妙薬」ほど単純で愉快なプロットはありませんでした。たぶん「 チェネレントラ 」以来だと思います。
きっと良い思い出になるはず。楽しみです。
もっとも、単純に見れば、だとも思うのです。やっぱり解釈の面白さは存在します。愛の妙薬と「トリスタンとイゾルデ」の関係とか、「ヴォツェック」との関係とか。これは、実際に見てから書いてみましょう。
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