うーん、やっぱり辻邦生は素敵だ。
大河小説「春の戴冠」の中の一節です。
「時は去りて帰らず、言祝げよ、このよき時を」
全集138ページ
この大河物語のヒロインであるシモネッタが、ヴェスプッチ家へ嫁いだ婚礼の場面で、仮面をかぶったロレンツォ・メディチが歌う歌詞です。
現代日本において、こんな言葉を持ち出すなんて、ほんとうにきれい事なんでしょうけれど、それを忘れてしまったらおしまいだと思いました。
辻邦生が亡くなったときに、盟友の菅野昭正がこう言ったのを思い出しました。
その小説があまりに理想主義的だという人があるとすれば、それは日本の文学に理想主義が薄弱すぎるからである。
(日経新聞 1999年7月31日)
しばしの夢を見た気がします。
明日からまた戦場へ。