「トスカ」の舞台となった1800年6月の時点で、ローマはナポリ王国の勢力下にあった。
当時のナポリ王国はフェルディナント四世の治世下にあった。が、フェルディナント四世は狩りやスポーツに明け暮れた男で国政には興味をしめさなかった。
代わりに国政を切り盛りしていたのは王妃であるマリア・カロリーナである。
マリア・カロリーナは、オーストリア女帝マリア・テレジアの娘であり、マリー・アントワネットの姉に当たる人物である。
母親のマリア・テレジアがオーストリア帝国の政治を動かしたのと同じように、ナポリ王国を夫フェルディナントに代わって統治した。これは婚姻に際して「息子が生まれたら摂政になる」という特約がついていたからである。
さて、この王妃は「トスカ」のなかにも登場している。
第二幕に、スカルピアに追い詰められたトスカが、王妃に嘆願しようとするシーンがあるが、このときの王妃がマリア・カローリナである。
第二幕では、ファルネーゼ宮殿のスカルピアの執務室が舞台となるが、前半部分でトスカの歌声が響いてくるシーンがある。これは、マリア・カロリーナが出席している戦勝パーティーでトスカが歌を披露しているというシーンになっている。
その後、実はマレンゴの戦いで、ナポレオンが勝利し、オーストリア軍が敗れたという報がとどくと、マリア・カロリーナは卒倒してしまう、という設定になっている。
つづく
次回は「トスカの前歴はいかに?」です。
(追記:カヴァラドッシより先にトスカの前歴を紹介することにしました)
※ 新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日です。