今年の読書まとめ
本来は、100冊ぐらい「タッチ」するはずだった今年ですが、まあ、そううまくいくわけはありません。「タッチ」と言っているのは、立花隆の教えでして、完読しなくても良い、というものです。曰く、本は必要なところだけ読むのが、たくさん知識を得るコツであり、気に入らなかったすぐに投げ出しても良い、というものだと(勝手に)理解しているからです。
ただ、融通がきかない性格のせいか、ついつい全部読まないと、と思っているので、罪悪感を抱えつつ、という感じです。
で、数えてみると、60冊程度にはタッチしていたみたいで、まあ、割りにしたら少なかったなあ、と思うわけです。
もっとも、雑誌やらウェブは常に読んでいます。昔と違い、読書とはすなわち本を読む、というものでもなくなってきているようにも思います。
で、辻邦生の本以外で、今年印象に残った5冊を。こうして並べてみると、そこに繋がるものが見えてきてしまうのが怖いところです。
ジョージ・オーウェル「1984年」
早川書房
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古典&再読ではありますが、強烈でした。
ライフハッカーで紹介されていた、コリイ・ドクトロウの仕事ぶりに興味を持って、読んだ「リトル・ブラザー」が「1984」から影響を受けているということで、「1984」を改めて読み直してみて、背筋を凍る経験をしたというところです。
「1984」はいつ成就するのか? そういうことを考えましたが、実際にはひたひたと水位は上がっているのかも、なんてことを思いました。
この本に書かれる「ダブルスピーク」に感染してしまうと、人の言っていることを字義通り捉えることができなくなります。ゲフェールリッヒな本でした。
コリイ・ドクトロウ「リトル・ブラザー」
こちらのコリイ・ドクトロウの本はなんとかハッピーエンドなので、元気が出ますし、気分だけでも若返ります。そして無性にプログラミングがしたくなります。ただ、「1984」のような背筋が凍る思いもするでしょう。
重田園枝「ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む」
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もっと早く読んでおけばよかったフーコー。食わず嫌い&何かしらの反感があって、ずっとフランス現代思想に背を向けていたのを後悔したのでした。まあ、学生時代サボって楽器ばかり吹いていた、ということなのでしょうけれど。
フーコーは原典で読む勇気と時間がないので、二次文献を何冊か読みました。いずれも面白いのですが、特にこの本は強烈で、これもやはり背筋を凍る思いにとらわれます。つまるところ、全てが知らないところで作られている、ということ。
私が今ここで書くことができないことが、この本には書かれていて、NHKの夜のニュースを見ることすら怖くなります。理由は、ぜひ読んで体感してみてください。
現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義
現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義 (講談社現代新書)
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これも本当に衝撃的な本でした。池内恵さんの本で、普遍価値の脆弱さを思い知らされます。やはり、人間はわかりあうことができない、ということ。その前提に立って話さなければならない、ということを痛感します。世界は広く深く寒い。そういうことが解る本です。
リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください–井上達夫の法哲学入門
リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください–井上達夫の法哲学入門
毎日新聞出版
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これも、時代の中で読んでみてよかった本。池内恵さんオススメの本。デモクラシーの難しさを感じます。本当のリベラルとは何か。それは、きっと「リベラル」ではない、ということ。前述のように、世界は広く深く寒いわけで、そこで生きるためには何ができるのか、ということが、冷静に語られているわけです。
終わりに
先に触れたように、ここに小説がニ冊しか登場しない、ということに驚いています。小説の持つ力は強いものなのですが、私は現代において、そういう小説をあまりうまく見つけられていないようです。
では、みなさまグーテナハトです。
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