Classical

Kumesen

昨夜は友人が遊びに来ました。それでまあ家で飲んだわけですが、お酒を飲むこと自体久しぶりなことでして、少々飲み過ぎてしまいました。ビールは良いとして、その後の泡盛がいけませんでしたね。つい先だって閉店セールをしていたスーパーで買ってきた久米仙、少々飲み過ぎて、朝までアルコールがぬけなかった感じでした。ですが、お昼頃まで休んだらすっきり。やはり蒸留酒は悪い酔い方はしないようですね。とはいえ飲み過ぎたのは事実なので反省しております。まあ、このところほとんど飲んでいませんでしたから、良かったかな、と。

吉田秀和作曲家論集〈1〉ブルックナー、マーラー
吉田 秀和
音楽之友社 (2001/09/01)
売り上げランキング: 170462

それで、午後には吉田秀和さんの「吉田秀和作曲家論集(1)ブルックナー・マーラー」をぱらぱらとめくっていたのですが、それだけでもうショックを受けてしまう。どうしてこんなに透徹で正直で論理的で詩的な文章を書くことが出来るのでしょうか。心酔してしまいそうです。しかしやはりこここでも僕が楽譜を読めないと言うことが障害になるのでした。今はタスクが多すぎて、そこまで手が回らないだろうというのは分かっているのですが。しばらくこちらも我慢しましょう。

マーラーの交響曲で言えば、レヴァイン盤を勧めておられました。ポリフォニックな新しいマーラーの響きを聴くことが出来るということでした。反してテンシュテット盤はロマン派的マーラーなのだそうです。両方のマーラー全集を聴きたいのはやまやまなのですが、小遣い帳はとっくに赤算ですので、まだちょっと我慢しなければなりません。

先日から聴いているシノポリ氏の振るマーラー9番ですが、どうも切り口が見あたらなくて困っています。遅いテンポでタメを効かせて歌っている演奏だとは思うのですが、決定的にこれだ、という感じを受け取ることが出来ずに困っています。少しマーラーはお休みにした方が良いのかもしれませんね。

Classical

昨夜は22時半には就寝しておりました。富士山に行くか行かないか迷いましたが、結局行かずに、友人達が私の家に遊びに来ると言うことで話は決定していたはずだったのですが、その後、ポイント天気予報では、15日夜半(つまり今日の夜半です)には天候が回復するから、行かないか? という話になってしまったのでした。もう富士山には登らないつもりでいたということと、やはり夜中に登るということの危険性、大雨が降った後の山ってどうなんだろう、火曜日仕事があるのに大丈夫なのか、などなどと逡巡してしまいました。

友人達と話をして、結局、今晩、友人達は僕の家に泊ることで決定。ただし、友人達は明日の朝早く出立して、日帰りで富士山頂にアタックするのだそうです。うーん、なんというタフな人々なのだろうか。もっとも、一人は某巨大組織の船乗りで、一人はフルマラソンを何度も経験し富士登山マラソンに毎年出場する強者ですから、私の体力レベルとは全くかけ離れています。

前にも触れましたが、私は、大学時代にはどんなに天気が良くても地下のスタジオで3時間練習し、その後ファミレスで練習の反省会をし続けるといったインドアな男ですから。というわけで、残念ながら富士登山は僕だけキャンセルと言うことになりました。

今回はもともと登ろうとしていた登山道が残雪の影響で使えなかったり、台風が来たり、ということでコンディションが非常に悪かったので、初心者の僕には無理だったという風に諦めるべきでしょう。ですが、来月以降、リベンジをしようと画策中です。先だって大山に登ったときのすがすがしさが忘れられないのですよ。たしかに辛かったですが、山頂に登り切ったという達成感は何にも代え難いものでしたし。

というわけで、名曲300に含まれているシューベルトの「さすらい人幻想曲」を聴いたりしていたのですが、ふとした拍子にプフィツナー(ウィキペディアではプフィッツィナーと表記されています)のヴァイオリンソナタをかけてしまいました。

Pfitzner

Sonata for Violin and Piano op. 27 E minor – Bewegt, mit Empfindung
Sonata for Violin and Piano op. 27 E minor – Sehr breit und ausdrucksvoll
Sonata for Violin and Piano op. 27 E minor – Äußerst schwungvoll und feurig

このCD、ジャケットの美しさに魅せられて買いました。ハインリヒ・フォーゲラーの絵なのですが、その物憂げな美しさに酔わされたのです。しかし購入して大正解でした。プフィツナーの曲にそんなに親しんでいるわけではありませんが、このヴァイオリンソナタは名曲だなあ、と思います。特に第三楽章の祝祭的な気分にふれれば、どんなに暗鬱とした気分をも晴れさせる力があるのではないでしょうか。この曲を知人の結婚式のBGMにお勧めしたこともありましたね。

Miscellaneous

ajisai 雨が酷く降っていますね。台風が近づいています。梅雨前線も活発ですね。

午前中は近所の眼科で眼鏡の処方箋をつくりました。先だっての会社の健康診断で、右眼の視力だけが落ちていて、左目とアンバランスになっていることが分かりました。どうりで右眼がいつもゴロゴロするわけです。それで、眼科で視力をはかったりしたわけなのですが、なかなかしっくり来る組み合わせがない。右眼を強くすれば、却って目が疲れてしまったり、乱視矯正が難しかったり。あれやこれやで二時間半ぐらいかかってしまいましたが、最後はようやくとしっくり来る形になったと思います。これでもうお昼になってしまいました。本当ならもっと早く終るはずだったのですが。それでいつものカフェで一休みして帰宅。台風情報を確認すると、もう明日夜に登るのはほとんど無理だなあ、と言うことが判明。友人に連絡して、富士登山はキャンセルと言うことに決めました。ですが、友人は広島からわざわざこちらに出向いていると言うこともあって、逢わずに変えるのもどうかな、ということで、明日自宅にお招きすることにしました。というわけで、来客の準備をしているところです。久々の来客なので、部屋を片づけないと……。

マーラー:交響曲「大地の歌」
バルツァ(アグネス) ケーニッヒ(クラウス) マーラー テンシュテット(クラウス)
EMIミュージック・ジャパン (1998/03/11)
売り上げランキング: 83151

というわけで、片づけながら、テンシュテットの振る大地の歌を聴きました。大地の歌、こればかりは本当に10年以上ぶりに聴いた気がします。僕が初めて聴いた大地の歌の指揮者は誰だったでしょうか?20年前にNHK-FMでエアチェックをしたものなのですが、本当に忘れてしまいました。大地の歌は、やはりワルター盤が有名なようですが、テンシュテットの大地の歌も良いものですね。どうしていままでちゃんと聴かなかったのでしょうか。その分別の音楽を聴いていたと言うことなのでしょうが、計画性をもって聴くことも大事ですよね。

それで、かつて取り上げた「名曲300を聴く」にひるがえってみたのですが……、ああ、まだ80曲も聴いていないのでした。300曲到達に向けて入手したりしたものの、聴けていないものが多いです。オペラの予習やマーラー漬が原因なのですが。また聴き始めよう。そしてもっと頑張ろうっと。

300Music 

Composer 割合
J・S・バッハ 13 11 85%
R・シュトラウス 9 9 100%
アイヴズ 1 0 0%
イベール 1 1 100%
ヴィヴァルディ 1 1 100%
ウェーバー 1 0 0%
ヴェルディ 7 5 71%
エルガー 2 0 0%
オルフ 1 1 100%
ガーシュウィン 2 1 50%
グリーグ 2 2 100%
グレツキ 1 0 0%
コープランド 1 1 100%
コダーイ 1 0 0%
サティ 1 1 100%
サン=サーンス 4 2 50%
シェーンベルク 2 2 100%
シベリウス 5 4 80%
シューベルト 12 8 67%
シューマン 11 10 91%
ショーソン 1 1 100%
ショスタコーヴィチ 6 5 83%
ショパン 9 4 44%
スカルラッティ 1 0 0%
スクリャービン 2 1 50%
ストラヴィンスキー 4 3 75%
スメタナ 1 1 100%
チャイコフスキー 7 7 100%
チレア 1 0 0%
ディーリアス 1 0 0%
ドヴォルザーク 5 5 100%
ドニゼッティ 2 0 0%
ドビュッシー 7 4 57%
ニールセン 2 2 100%
バーンスタイン 1 0 0%
ハイドン 7 1 14%
パガニーニ 1 0 0%
ハチャトゥリアン 1 0 0%
バルトーク 3 3 100%
ビゼー 2 2 100%
ヒンデミット 1 1 100%
ファリャ 1 1 100%
フォーレ 3 3 100%
プッチーニ 5 5 100%
ブラームス 13 13 100%
フランク 2 2 100%
ブリテン 1 1 100%
ブルックナー 4 4 100%
プロコフィエフ 5 2 40%
ベートーヴェン 27 26 96%
ベルク 1 1 100%
ペルゴレージ 1 1 100%
ベルリオーズ 2 1 50%
ヘンデル 3 2 67%
ホルスト 1 1 100%
ボロディン 1 0 0%
マーラー 8 7 88%
マスカーニ 1 1 100%
ムソルグスキー 3 2 67%
メシアン 1 1 100%
メンデルスゾーン 6 6 100%
モーツァルト 34 20 59%
モンテヴェルディ 1 0 0%
ヤナーチェク 3 2 67%
ヨハン・シュトラウス? 2 1 50%
ラヴェル 8 6 75%
ラフマニノフ 3 3 100%
リスト 4 1 25%
リムスキー=コルサコフ 1 1 100%
レオンカヴァッロ 1 1 100%
レスピーギ 1 1 100%
レハール 1 1 100%
ロッシーニ 2 1 50%
ロドリーゴ 1 1 100%
ワーグナー 6 2 33%
総計 300 220 73%

Tsuji Kunio

Haru

辻邦生全集〈9〉小説9
辻邦生全集〈9〉小説9

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辻 邦生
新潮社 (2005/02)
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辻邦生全集〈10〉春の戴冠(下)
辻 邦生
新潮社 (2005/03)
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プラトンの生誕祭にあわせて、プラトン・アカデミーでは、「饗宴」をもした哲学を語る宴が開かれるのでした。メディチ家当主ロレンツォはもちろん、フィレンツェの碩学の面々があつまり、語り手フェデリゴはその書記役として饗宴の末席に連なることになったのです。

さまざまな問題が語られるのですが、ロレンツォは、こうした哲学的な議論は、アカデミックな場にとどまるだけであってはならず、たとえば、自分がいま手がけようとしているイモラ領の買収といった高度な政治的駆け引きに於いても哲学的な議論が有用でなければならないのだ、と言うのでした。

それをうけてフィチーノは、まさにその通りなのである、とその議論を引き継ぎます。すなわち、<神的なもの>は、世のあらゆるものに分有されていなければならず、たとえば美しい桜草を見るとき、そこに美しさを見いだすのと同じように、政治活動や経済活動に於いても、神的なものが分有されているはずなのだ、というのです。確かに、桜草を見たときに感じる美しさのほうが強いのは、神的なものが桜草には濃く現れているにはちがいないのですが、桜草以外の現世のあらゆる事象に神的なものを見いだそうとするパースペクティブが重要なのだ、と解くのでした。

これは辻邦生師が行っている、この世を支えているのは美しさなのであるが、その美しさとは決して芸術作品などの美しさなどではないのであって、たとえば、日の光や木々のざわめき、鳥のさえずりと言った自然物から、コンクリートの建築や、日々の雑多な作業などを支えているのは「美」なのである、という考え方が現れている部分だと思います。

これを額面通り受け容れることが出来るかどうか、人それぞれだと思います。しかし、以下の点について留意しなければならないのではないでしょうか。辻先生は、美が現実を支えているという構造を現実に体験していると言うよりも、むしろそうした状況を意志している、ということが言えるのではないでしょうか。ちょうど、カントが純粋理性批判に於いて超越論的演繹法という形で、科学が成立するための諸原理を考えたのと同じように、この世を美が支えていなければ、どうなるのだろうか、というある種の直観的な意志に基づいて語っているような気がしてならないのです。そうでなければ、人間世界は成り立たない、という危機感によるものではないか、とも思います。

次回は「窖」について書いてみたいと思います。


台風が近づいてきています。本当であれば、明日の朝早くに出立して、明日の晩には富士山八合目の山小屋で夕食を食べているはずでした。そして明後日の明け方には、富士山頂にてご来光を仰いでいるはずだったのです。ですが、台風と梅雨前線という自然力には屈服することになりました。明日の登山は当然のことながら中止となりました。ですが、それでも諦めないのがわが友人達。15日の夜から登り初めて、16日朝のご来光を眺めよう! という話になってきています。ですが、台風は思った以上に遅い。遅々とした足取りの台風は、どうやら15日の午後に関東地方に再接近する模様。さて、わが登山隊の隊長の判断や如何に?? 明日の夜ご報告します。 


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Richard Strauss

昨日まで毎日シノポリ氏の9番を聴いていたのですが、なかなか言葉が思い当たりません。テンポが遅め設定ですが、うねるような重厚な響きに圧倒されているのでしょうか。それとも、僕のなかで違和感を感じないほど寄り添ってくれているのでしょうか。もう少し時間をおいて向き合おうかなと思いました。

Capriccio
Capriccio

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Richard Strauss Karl Böhm Bavarian Radio Symphony Orchestra Bayerischen Rundfunkorchester Anton de Ridder Arleen Augér David Thaw Dietrich Fischer-Dieskau Gundula Janowitz Hermann Prey
Deutsche Grammophon (2005/09/13)
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というわけで、今日は久しぶりにシュトラウスの「カプリッチョ」を聴いています。何度も紹介したベームさんの指揮による盤です。今回聴いてみていいなあ、と思ったのは、ディースカウさんがオペラについて歌うところ。22トラック目です。以前にも書きましたが、ここで使われる旋律は原稿の音楽のそれと同じなのです。あの気を失うぐらい美しい旋律にディースカウさんの雄々しく個性的な歌い回しが入ってくるところ、素晴らしいですね。ベーム盤は何回聴いたでしょうか。この9ヶ月ほどでもう何十回と聞いているに違いありません。


それにしても、この三週間ぐらいマーラーばかり聴いていましたので、やはり少々疲弊しているようです。マーラーに当たった、とでも表現したらいいのでしょうか。幾ら好きなものでも、三週間も聴き続ければ少し疲れるのは当たり前ですよね。あの美味しい生牡蠣をパリで食べたというのに、夜半にかけて嘔吐し続けたことを思い出しました。美しいもの、美味しいものには気をつけなければなりません。


明日で会社はおしまいです。今週末は14日から15日にかけて富士山に登る予定でしたが、流れました。一つは台風の影響、もう一つは雪解けが遅れていて、登山道が開通していないと言うこと、の二点です。厳密に言えば、山梨県側登山道と御殿場の北よりの登山道は開通しているのですが、予約をした山小屋のある登山道はまだ開通していません。というわけで、15日の夜から開通している登山道から登って、ご来光を頂上で眺めようと思っています。さて、どんな絶景が待っているのでしょうか? 楽しみです。


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Photo

4 個の画像 4 個の画像 今日は梅雨中だというのに、綺麗な夕焼けが見えました。少し早めに帰ってきたので見ることが出来たのです。あわててカメラをもって写真を撮ったのですが、ちょっと失敗。ISO800で撮っていたので、ノイズが乗っています。これからは写真を撮る前にISO感度を確認して、撮ってからもISO100にもどすように習慣づけようと思います。


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Tsuji Kunio

Haru

辻邦生全集〈9〉小説9
辻邦生全集〈9〉小説9

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辻邦生全集〈10〉春の戴冠(下)
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春の戴冠、上巻も半ばを過ぎてきました。小さかったサンドロ(ボッティチェルリ)も、語り手のフェデリゴももう十二分に大人になりました。サンドロはフィリッポ・リッピの工房から別の親方の工房へ入ったのですが、人気が出てきたこともあって独立した工房を構え、肖像画などを描く仕事をしています。語り手のフェデリゴは、フィチィーノに弟子入りし、師匠の原稿の清書をしたり、後輩のギリシア語の先生になったりしています。フェデリゴは結婚していますので、もう20代も半ばにさしかかったところでしょう。

フィレンツェ(文中では、フィオレンツァ)の情勢はといえば、コシモが死に、息子のピエロが死に、孫のロレンツォがメディチ家の当主となりメディチ銀行をやりくりするだけではなく、フィオレンツァの政治的安定と覇権を確保すべく活躍しています。 フィレンツェの主要産業は毛織物なのですが、毛織物を染色するためには、媒介剤となる明礬が不可欠です。ところが、明礬はオランダでとれたり、教皇領でとれたりという感じで、なかなか安定供給が見込まれない状態。毛織物業者の中にも廃業するものが出てきたのですが、そんな折、フィレンツェ領内で明礬鉱が発見され、大騒ぎになります。ところが、明礬鉱が発見されたヴォルテルラの住民が叛乱を起こし、ロレンツォは完膚なまでにヴォルテルラの住民を虐殺するのでした。

一方、サンドロとは言えば、今そこにある桜草を描くのではなく、この桜草を通じてそこに現れている神的なものもを描き出そうとしています。他の親方は「ものから目をそらすな」といった具合に、現実認識を拡張していくことで、そこに美を求めようとするのですが、それはそれでいつしか破綻を来すのは必定なのです。人間の認識能力は有限ですので、認識すればするほど地平は広がり、認識すべきものの多さと大きさに圧倒されることになるのです。いわば経験論的な世界観とでも言いましょうか。サンドロはそうではない。いまここにあるものの背後にある神的なもの、あるいはイデアールなものをとらえて、それを描き出そうとしている。そう言うやり方なのです。この構造には見覚えがありますね。「嵯峨野名月記」の俵屋宗達のスタンスと同じです。あるいは、「小説への序章」で語られる、神の死後に改めて認識される世の不可知性の問題です。バルザックの頃までは、経験によって全世界を把握しようという試みは可能であったかも知れないけれど、いまやその可能性はないのです。そうなると、芸術家はパースペクティブを変えなければならない。帰納的認識から演繹的な認識へといこうしなければ、無限大に連なる世界を表現することなど能わないのです。辻邦生師のなかに一貫して現れるテーマがここにも当然のように登場していて、それを読むたびになぜか甘美な思いをするのです。

たしか、前回読んだときには、サンドロの芸術的信条がもう一二度転回していく、というのを覚えています。これからどのようにサンドロが成長していくのか、そしてフィオレンツァの行く末はいかなるものへとなっていくのか。二度目だというのにわくわくしますね。もちろん、歴史的事実として、このあとサルヴォナーラが登場して、フィオレンツァのルネサンスは小休止を強いられる訳なのですが。

最近、思い立って、フィレンツェの地図をガイドブックからコピーして、読みながら、場所を把握するようになってきました。フィレンツェには行ったことがありませんので、土地勘が全くありません。せめて地図と本でフィレンツェを満喫できればいいな、と思いながら読んでいます。もちろん辻邦生師の文学への理解がいっそう深まることを願っているのは言うまでもありません。

Miscellaneous

今日も日記になってしまいそうです。

本当は、シノポリ氏のマーラーの9番を聴いて感想を書くはずでしたが、少々帰宅後時間がなくなってしまったと言うこともあって、今日も当世風日記です。申し訳ありません。
昨夜は早くに寝たつもりだったのですが、疲れがとれていなくて、朝起きても鈍く光る疲労感に苛まれている感覚。会社で珈琲を伸びながら仕事。そうかくとバルザックのようですが、そんなたいしたものではありません。帰宅途中で登山用品屋に寄って雨具を購入。富士山対策です。そのお店は、お客にあまりものを勧めたりせず、一番安くてリーズナブルなものを勧めてくれるようです。良いですね、こういうスタンスのお店。帰宅してからも少々庶務作業を行っていまして(やむを得ないのです)、時間切れです。
シノポリ氏のマーラー、重厚ですが、無用に重々しいと言うこともなく、流れもきちんとある感じです。一回聴いた感じではあまりテンポは動かしていないなあ、と思いました。

明日こそはシノポリ氏のマーラー9番かな。

Miscellaneous

Mahler;Symphonies 9 + 10 Mahler;Symphonies 9 + 10
Philharmonia Orchestra (1998/11/20)
Deutsche Grammophon

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今日はお休みでした。8時に起きて、9時にいつもの近所のカフェへ。PCを持ち込んだのですが、思ったより電池が持たなかったので、最後の30分ほどは「春の戴冠」を読みました。昼食はそうめんです。美味いですね。昼寝をしてから、少々部屋の片づけ。それから、CDをITUNEに取り込んだり、不用なものを処分したりとちょっとした大掃除を。
今日は、集中的に音楽を聴けませんでしたが、マーラーの9番の聞き比べをしていました。これについてはまた書きたいと思います。今日、死蔵していたシノポリの全集を取り出して聴いてみたのですが、かなり良い感じです。シノポリと言えば、シュトラウスとかプッチーニのイメージがあったのですが、よく考えたら、いまから20年ほど前に来日して復活を演奏していたのを思い出しました。僕の復活体験の一つがこのシノポリさんの指揮でしたね。惜しいことに若くしてなくなってしまいましたが。長生きするのもやはり大事だな、と思わされます。
今日はゆっくり休めましたので、明日へ向けて英気を養うことが出来ました。明日も頑張ります。

Miscellaneous

fighting
さて、水曜日の森麻季さんのリサイタルで起こったこと、ですが、こんな感じです。
アンコールに入って、一曲歌い終わられた森麻季さんに皆さんが拍手しているとき、一階平土間の席で、少し太り気味の中年の男が、係員を呼んで少し前の席を指さしている。なんだか起こっている風情。指さす先では、なんと小柄な中年の男がデジカメで写真を撮っている。あれほど写真や録音はお断りします、とアナウンスがあったのに(というか、日本のホールでは常識でしょうか……?)。それで、女性の係員が、デジカメ男を制止して、いったんはそこで騒ぎは終ったかに見えました。

ところが、最後のアンコールの曲を歌い終わったときのことでした。森さんが舞台で挨拶をしていて、前の方には熱狂的な観客が詰めかけて手を振っている。そんなとき、怒声が聞こえたような気がしました。それで平土間を見ると、やっぱりまたあのデジカメ男が写真を撮っている。それを今度は別の中年の男が制止しようとしている。女性係員も駆けつけている。しかし、何を言われようとも、デジカメ男は写真を撮り続けている。とうとう、制止している男が、デジカメ男の後ろから殴るか叩くかしたのが見える。デジカメ男、ようやくカメラをしまう。と思ったら、デジカメ男が、通路に出て、制止する男につかみかかる。逆ギレしたんですね。女性係員が二人を制止するんだが、二人は喧嘩を始めてしまう。まだ、拍手していて、森さんが舞台で挨拶をしているというのに……。二人とも感情的になっているようで、お互いに、追いかけたり、道をふさいだりして、つかみ合っている様子。係員は、なすすべもなく姿を消している。そのうちに二人はドアから外に出て行きました。あの後どうなったのでしょう。つかみ合いの喧嘩でもしているのでしょうか。

それにしても、いい年をした男が喧嘩する場面なんて見たくないですよ、まったく。もう50歳ぐらいになっているというのに。こちらは気持ちよく森さんの歌に感動しているというのに、興ざめだなあ、とおもいつつ。

そもそも、禁止された写真撮影をしているデジカメ男が悪い。でも、制止した男が高潔な精神の持ち主というわけでもなさそう。思ったのですが、制止した男もやっぱり写真を撮りたかったんじゃないでしょうか。でも、禁止されているからそれはできない。そんななかで禁止事項を平気でやぶるデジカメ男が写真を撮り始めた。自分達は我慢しているのに、デジカメ男が抜け駆けをしたんですね。それで、写真を撮るのを我慢している男の怒りが頂点に達した。なんでお前だけ撮るんだよ、みたいな。それでああいう行為に出たんでしょうね。

でも、よく考えると、デジカメ男は、制止男に何の迷惑もかけてない。デジカメ撮っているからって、制止男に影響あるんでしょうか? ないでしょうね。だから放っておいて、係員を呼ぶだけで良いんですよ。後ろからつかみかかって、殴るだか、叩くだなんていう「暴力」行為にでることは全くない。でも、そう言う行為に出ちゃったもんだから、会場内の一部の雰囲気が悪くなったのは確か。そう言う意味では、会場のコンディションを崩した制止男が悪い。TPOをわきまえたマナーがない。まあ、後からだと何でも言えるんですが。

それから、思ったのは、きっとみんな苛々しているんだろうなあ、ということ。このご時世だから、誰もが叩かれる心配を抱えている。社会保険庁もそうだし、銀行も、生保も、損保も、学校の教師も、警察官も、だれもがお互いにたたき合っている。マスコミぐらいじゃないですか、叩かれないのは(まあ、関西テレビのように叩かれる場合もあるけれど)。叩くのはマスコミですからね、自分を叩くことはそうそうはない。叩きすぎて、犠牲者もでているぐらいですから。松岡農林水産大臣など、そういう文脈で捉えると気の毒だなあ、と言う感じもします。そういう世知辛い世の中だから、みんながみんな鬱憤も溜めているんでしょうね。

もっとも、カーテンコールぐらい写真にとっても良いんじゃないかな、と思うのですがだめですかね? 肖像権とかあるんでしょうけれど。僕なんて、もっとひどいことをしている男をドレスデンで見ましたよ。僕らの席の前に座っている英語を話す白人が、カルメン役のソプラノをビデオでずっと写してましたからね。それで幕が下りると、ブラヴァー、ブラヴィーと大声でがなり立てる。でも、品が悪い男ではありませんでした。薄くひげを蓄えたアイルランド人っぽい男で、頭も良さそう。たぶん、カルメン役の歌手の身内なんじゃないかなあ、と思いました。オペラでビデオをとっている男を見て唖然としましたが、誰も止めたりしていませんでした。ドイツ人は、他人に厳しい面があるじゃないですか。だからこういう場面では注意する人とが出てきそうなものだったのですが。まあ、ザクセンの人々はとても優しい気風の持ち主ですので、大目に見たということなのかも知れませんし、あるいはそもそもビデオを撮っても良かったかも知れませんし、観客がたまたま僕らのような観光客で占められていたのかも知れませんし。

というわけで、気持ちよく音楽を聴いていたのに、最後の事件ですこし気分を悪くしたのは確か。困ったものです。もっと品位をもって行動して欲しいですね、デジカメ男も制止男も。それから、怒ったら負けですな。何をされても笑って受け流すぐらいの鈍感力がないと。ちなみに、最近の鈍感力の名人は小泉前首相なのだそうですが。小泉さんは安部首相に「鈍感力をもて」と助言したとかしないとか。


最近CDの感想を書いていない気がしていますが、実は聴いているのですよ。何を聴いているのかと言えば、ブーレズ指揮のマーラー9番。今これにはまりきっています。何度聞いても、この都会的冷徹なマーラーにひかれていくのが分かるのです。早速図書館から、ブーレーズの5番を借りてきました。これについてもまた感想を書けるかな、と思っています。