2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

はじめに

昨日の興奮冷めやらぬままこちらのCDきいているんですが、ちょっと、これすごくないですか!! フィガロのPaneraiがスゴイ。。

http://www.icartists.co.uk/classics/catalog/cds/carlo-maria-giulini

 

これは、また後日として、昨日の続きです。

演出

今回のケップリンガーの演出は2005年に続いて2回目ですが、以下の二つ理由から、今回のほうがより楽しめた気がします。

一つは、ビジュアル面でしょう。今回の公演、皆さんカッコイイ方ばかり。ロジーナのコンスタンティネスクも美人さんですし、伯爵のボテリョもずいぶんとイケメンです。あとは、フィガロのイェニスの粋な身振りが素晴らしいです。

(2005年公演では、ロジーナの方がアルマヴィーヴァより背が高いという状況だったと言うこともありますが)

舞台設定

もう一つ。席が良かったです。今回も奮発して前の方だったので、舞台の細かいところまでちゃんと観ることが出来ました。いろいろな仕掛けをつぶさに観ることができて面白かったです。

たとえば、電気器具や調度品の時代考証も凝っていて、置かれている白黒テレビは当然ですが、第一幕冒頭でフィオレッロが持っている白いラジオがレトロ調で格好良かったです。

フランコ統治下のスペイン

舞台は1960年代のセヴィリアです。ですので、フランコの肖像がバルトロの部屋に飾られています。image

そういうこともありますので、どうやらグアルディア・シビルとよばれる治安警察が踏み込んできたという設定になっているようです。あの特徴的な帽子の形でそうだと分かりました。フランコ政権時代はこのグアルディア・シビルが国内統治に利用されていたようです。

若者と老人、フランコとアルマヴィーヴァ

今回の演出においては、アルマヴィーヴァ、ロジーナ、フィガロの三人の若者が、バルトロ、バリジオなどの年寄りに反旗を翻すという物語にも見えました。

演出のケップリンガーの説明においては、原作が書かれたが書かれたフランス革命前夜とおなじく、演出の舞台である1960年代のセヴィリアも「社会構造の変革を前にした「熱い時代」」であると語られています。

フランコ政権は1938年に始まり、1975年のフランコの死によって幕を閉じます。後継者として国王に指名されたファン・カルロス一世によりそれまでの全体主義体制から立憲君主制へと移行し、「スペインの奇跡」と称されるほんの少し前の時代です。image

来るべき新しい時代が3人の若者によって象徴されているのか、などと思ったり。

ですが、アルマヴィーヴァは伯爵位にあります。いわば旧体制に属しながらも、若い世代に属しているというゆがみが生じているのだ、と思います。

警察(グアルディア・シビル)の隊長がアルマヴィーヴァの伯爵位に恐れをなし、同時にフランコの肖像を担ぎ出すのはそういうゆがみがなせるわざでしょう。

(余談ですが隊長は、2002年に観た新国立劇場の「セビリアの理髪師」では堂々たる人物でしたが、今回の演出では権威主義的でだらしない男になってました)

あるいは、アルマヴィーヴァもフランコと重ねあわされているような場面もありました。ロジーナがバルトロの奸計でアルマヴィーヴァとフィガロの企てに疑いを持った瞬間、フランコの肖像が壁から落ちましたね。あれはどうしてなんだろう?と思うのです。

旧体制に属しながら新しい時代を切り開く人物であるアルマヴィーヴァはいったい誰なんだろう? ファン・カルロス一世なのかなあ、などなど。

いやいや、我々はこの物語の続編を知っています。モーツァルトの「フィガロの結婚」です。そこでは、アルマヴィーヴァがバルトロのような俗物に成り下がっています。そうした示唆なのか……。

 

次回に続きます。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

IMG_1689

師走1日目、寒風吹きすさぶなか新国立劇場「セビリアの理髪師」でしばし気分を暖めてきました。

なんだか、純粋に楽しめたなあ、という感じです。こういう楽しみ方もありなんだ、とすこし驚きました。

ワーグナーやプッチーニ、シュトラウスは好きすぎるので、構えてしまうんですが、ロッシーニは結構苦手でして、かえってリラックスして聴けたのだと思います。

楽しい3時間でした。ありがとうございます。

主な出演者

指揮:カルロ・モンタナーロ

演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー

アルマヴィーヴァ伯爵:ルシアノ・ボテリョ

ロジーナ:ロクサーナ・コンスタンティネスク

バルトロ:ブルーノ・プラティコ

フィガロ:ダリボール・イェニス

フィガロ

フィガロのイェニス、声に張りがあって大迫力でした。軽妙な身振りも交えた演技はとても素晴らしいものでした。ああいう感じは欧米人ならではですね。

ロジーナ

ロジーナを歌ったコンスタンティネクスは、軽やかで澄み切ったソプラノです。モーツァルトやロッシーニによく合う声質です。ケルビーノ、ツェルリーナ、チェネレントラ、ドラベッラ、デスピーナなどがレパートリーのようです。実は、「ばらの騎士」のゾフィーなんかも合うのではないでしょうか。

アルマヴィーヴァ

アルマヴィーヴァ伯爵のルシアノ・ボテリョはイケメンテノールです。巧いのですが、早いパッセージがすこし苦手そうでした。気になったのはそれぐらいで、演技も歌も十分楽しめました。

バルトロ

バルトロを歌ったブルーノ・プラティですが、あのメタボっぷりは、さすがになにかおなかに入れてますよね。恰幅がよくて、日本語も交えたコミカルな演技が面白かったです。

指揮者モンタナーロ

カルロ・モンタナーロの指揮は、実にすっきりとした味わいでした。オケをきちんと統率している感じで、オケの鳴り方もいつもより細密でくっきりしているように聞こえました。

モンタナーロ、第二幕で劇に乱入しましたね。バルトロの歌詞を「違う違う!」と指揮台から叫んでました。もちろん仕込まれた仕掛けですので、みんな笑ってましたけれど。

次回は……

次回は演出面などを書きます。1960年代フランコ政権下のセヴィリアが舞台になっていると言うことで、仕掛けがたくさんありました。私は、どうもアルマヴィーヴァがフランコ政権体制側の人物として示唆されていたように思えてならないシーンがありましたので、調べています。が、どこまで追い込めるか。。

 

それではまた。

Opera

12月のプレミアムシアターの予定を。

オペラは1本ですね。

http://www.nhk.or.jp/bs/premium/

12月10日(9日深夜)

  • タングルウッド音楽祭
    ムター、ヨーヨー・マ、エマニュエル・アックス、ピーター・ゼルキン。なんとジェームス・テイラーまで!
  • ウェルザー・メスト指揮 クリーブランド管弦楽団
    ブルックナー交響曲第4番

12月17日(16日深夜)

  • マウリツィオ・ポリーニ 日本公演
    ポリーニ パースペクティブ2012

12月24日(23日深夜)

  • ミラノ・スカラ座 2012/13開幕公演
    「ローエングリン」

ヨナス・カウフマン、ルネ・パーペ、アニヤ・ハルテロス、トマス・トマソン、イヴリン・ヘリツィス

指揮はバレンボイム。2012年12月7日の公演が放送される予定です。

 

追伸

今日届きました!

実物の表紙はこんな感じです。

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それでは。You have.

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera

トスカ、まだまだ続きます。

そろそろ「理髪師」の予習もしないと行けないのですが。

今日はデイヴィス盤を紹介します。

デイヴィスの指揮はずいぶん好きなんです。「ピーター・グライムス」や「魔笛」に親しんでいました。

デイヴィスの指揮もきりっと引き締まっていて、緊張感が素晴らしいです。テンポコントロールがきまっています。

スカルピアのイングヴァール・ヴィクセルがエラクカッコイイですよ。スウェーデン生まれのバリトンで、昨年亡くなられたようです。鋭利で冷たい刃物のようなスカルピアです。

カレーラスも雄々しく雄叫びをあげます。第二幕でナポレオン軍の勝利に歓喜して絶叫するところは、さすがカレーラス!、と思います。

トスカを歌うモンセラート・カバリエがも豊潤でドラマティックです。

1976年にコヴェントガーデンで録音。

(もう36年も前ですか。。)

  • 指揮:コリン・ディヴィス
  • トスカ:モンセラート・カバリエ
  • カヴァラドッシ:ホセ・カレーラス
  • スカルピア:イングヴァール・ヴィクセル

最近夜更かし気味です。今日もそろそろ眠ります。

では。

Alban Berg,Opera

美貌のソプラノ、モイツァ・エルトマンの「ルル」、今晩のプレミアムシアターで放送です。

http://www.nhk.or.jp/bs/premium/

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以下予告編です。

 

 

ルルって、ほんと、怖いオペラだ。。

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でも、惹かれてしまう。。

この、ドイツ的センスが素敵すぎる。

観る時間あるかな。。

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera

初台にてトスカを見てきました。

今回も前列方面でしたので、いつもになく十分に堪能しました。ありがたいことです。

3年前の「トスカ」をみた後には「このパフォーマンスが東京で、なんて恵まれている。」という記事や、「音楽か、言葉か、演出か?」なんていう記事を書いています。

今回も、このパフォーマンスを東京でみられる幸運に感謝です。

 

ノルマ・ファンティーニ!

トスカを歌ったノルマ・ファンティーニ、今回も聞かせてくれました。

というか、迫真過ぎて、見ているのがつら過ぎするぐらい。

なんだか、もう、トスカの危機的状況が手に取るように分かって、あらすじは理解しているんですが、ハラハラしました。

表情も硬軟織り交ぜているのよく分かりました。巧いです。

第一幕、カヴァラドッシが浮気をしているのではないかと疑うシーン、笑ったり怒ったり織り交ぜてカヴァラドッシを責めるあたりは、本当に役者だなあ、と思います。

パワーもものすごいです。座席が前の方だったので直接声が響いてきました。いままで味わえなかった感動です。

舞台の歴史背景

ステージの豪華絢爛さは何度見ても素晴らしいです。座席的にも舞台がよく見える場所でしたので、聖アンドレア・デラ・ヴァッレ教会に本当に足を踏み入れた気がします。

ちょっとイタリアに来た気分で、幸福な気分です。

今回は、歴史的経緯もちゃんと確認していきましたので、その点でも楽しめました。

第一幕最後のテ・デウムのシーンに登場した若い王妃が、ナポリ王国女王のマリア、カロリーナですね。ずいぶん若いですけれど。

どうやら教皇も登場していたようです。きっとピウス七世です。

スイス人衛兵もカッコよかったです。

雑感

しかしなあ、これから死ぬ運命にある幸福な恋人達の会話を聞くと胸が痛みます。

カヴァラドッッシも、いつ逮捕されても分からない状況にあったのに、トスカと一緒に居たいが為にローマに滞在していたわけですから。

政治を甘く見てはいけないです。お節介ですけれど、

第三幕、トスカとカヴァラドッシが感極まって、歌と絵で芸術を極めよう!みたいなことを言うんですが、これって音楽と演出のことを言っているんだろうなあ、と思ってみたり。

トスカとカヴァラドッシが巧く逃げたら、きっとカヴァラドッシが演出家になって、トスカが出演のオペラプロダクションを作ったりして。。

結局、うまくいかなさそうな二人です。

スカルピアがもし生きていたら、ナポレオンが再びローマを攻略したときに失脚するんでしょうが、巧いことやって、フランスに取り入ったりするんでしょうね。

 

今回も本当に楽しめました。ありがとうございます。

それではまた。フォースとともにあらんことを。

 

※ヌーヴォー飲んで酔いながら書いてます。。

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

本日、トスカの初日ですね。

どんな感じでしたでしょうか。

私は情報シャットダウンしてこの一週間を乗り切る予定です。

新国立劇場の来シーズのラインナップも一部発表されましたね。

「リゴレット」と「死の都」です。楽しみであります。

 

さて、第13回はスカルピアの簡単な前歴。そうか、シチリア男だったんですね。

これで、だいたい「トスカ」の周辺知識を整理できました。

次回からはディスコグラフィーに行く予定です。

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スカルピアはシチリア出身で、名をヴィッテリオと言う。

スカルピアがローマへやってきたのは、「トスカ」が舞台とする1800年6月17日の一週間ほど前であった。革命思想に共鳴する政治犯を取り締まるために警視総監として着任したのだ。

これは、ローマを占領していたのがナポリ王国であったからだ。

ナポリとシチリアは同君連合だった。当時の国王のフェルディナントは、ナポリ王としてはフェルディナント四世であり、シチリア王としてはフェルディナント三世と呼ばれていた。

ちなみに、両王国はナポレオン戦争後、両シチリア王国として合併するに至る。

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シチリアはマフィアの勢力が強いことで有名であるが、当時も山賊の本場として有名だった。スカルピアのイメージ形成の一つの要因となるだろう。

「トスカ」の幕が開けた段階で、実はスカルピアは窮地に陥っているのだ。

これは、警視総監としてローマに赴任してすぐにアンジェロッティの脱獄を許してしまったからだ。

ナポリ王妃マリア・カルローネはスカルピアを強く叱責していたのだ。

アンジェロッティを捕まえることが出来なければ、お前の首が危ういぞ、と。

スカルピアは意地でもアンジェロッティを逮捕する必要があったというわけだ。

 

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日です。

チケットぴあ

2007/2008シーズン,2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

しかしずいぶん寒くなりました。
明日は赤坂に出撃予定です。仕事が無事に終わればですが。
第12回はカヴァラドッシの前歴です。そうか、ダヴィッドに習ったのですね。さすが。
===
マリオ・カヴァラドッシは、画家なのだが、単なる画家ではない。ローマ貴族の末裔で自由主義と革命思想に親しんだ画家だ。
父親はパリでディドロやはりダランベールの結社に出入りしており、ヴォルテールとも親交を結んでいた自由主義者であった。
カヴァラドッシは、革命時代のパリで育ち、絵はダヴィッドのもとで学んだという設定になっている。
ダヴィッドはフランス革命期の大画家である。革命期にはジャコバン党員として政治にも関わり、国民公会の議長を務めていたことがある人で、その後はナポレオンの御用画家として大活躍する。
以下はダヴィッドの手になる「アルプスを超えるナポレオン」。
image.jpeg
カヴァラドッシがダヴィッドの弟子であるのならば、自ずと自由主義者になるだろう。
だから聖アンドレア・デラ・ヴァッレ聖堂の壁画を書いて、信心深いところを見せているのだ。そうして当局の目を欺こうという魂胆なのである。
なぜそんな面倒なことをしているのか?
原因はトスカにある、
カヴァラドッシがトスカと知り合ったのはローマのアルジェンティーナ劇場でのトスカの歌を聴いたからだ。
それ以来ローマを離れることができないでいる。そうでなければ王党派の勢力下にあるローマに滞在する訳がない。
結局、恋に身を滅ぼす、という言葉を当てはめることができるだろう。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

今日は、一息入れます。

トスカの初日が迫っていますね。11日からです!

トスカのノルマ・ファンティーニ

ノルマ・ファンティーニのFacebookページには衣装合わせをしている写真がのっていました。楽しそうでいい雰囲気が伝わって来て嬉しくなります。

私にとっては「アンドレア・シェニエ」依頼のファンティーニです。一回「オテロ」ふられていますので、今回も心配していたのですが、嬉しい限りです。

ファンティーニがうたうトスカはこちらでご覧になれます。

カヴァラドッシのサイモン・オニール

カヴァラドッシをうたうサイモン・オニールのインタビューが新国立劇場のホームページに乗っていました。

ニュージーランド出身で、METでドミンゴのカバーをしていたそうで、ドミンゴレパートリーが自然にレパートリーになったそうです。

来年はジークムントをミュンヘン、スカラ座、ベルリン、ウィーンなどで歌うそうで、ひっぱりだこの状況のようです。

「世界の声」をすぐそばでリーズナブルに聞くことができる新国立劇場は本当にありがたいところだと思います。

今回はさすがに人気演目ということもあり、残席が少ないとのこと。これも嬉しい限りです。

 

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日にて。

チケットぴあ

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,ローエングリン研究

しかし急に寒くなりました。

普通は、冬に備えて体格が良くなり始める季節ですが、家飲みと間食を絶ってからは、少しずつスリム化している気がします。

嬉しい限り。

きっかけは、先日の試験受験票に貼った自分の顔写真見た時のショックが忘れられないからです。

さて、今日で11回目になりました。トスカの半生はこんな感じでした、の巻です。

===

フローリア・トスカは、ヴェローナ近くの牧場で羊番をしていた無骨が少女であったが、ベネディクト会の修道女が修道院へ引き取り、修道院で育てられた。

修道院では天才的な音楽的才能を示し、16歳で歌手となったのだった。作曲家であるドメニコ・チマローザが感嘆し、オペラ歌手にしようとかんがえたのだが、修道女たちはこれを拒んだのだった。

ここには教皇の意向も働いていたというのだから驚く。image

それはそうだ。修道女が歌手になるなんて、今で言えば、品行方正なお嬢様学校の生徒が、卒業後パンクロッカー(古い?)になるのと同じぐらいだろう。

チマローザと修道女たちの争いは、教皇の調停にゆだねられることになったのだが、このときトスカの歌声を聞いた教皇が、芸術の道に進ませるべきであるとして、決着がつき、トスカはオペラ歌手としてデビューすることになったのだった。

(写真がドメニコ・チマローザ)

だが、トスカの信心深さはこの修道院育ちという出自に由来している。

つづく

 

次回はカヴァラドッシの前歴をさぐります。

新国立劇場「トスカ」は11月11日~23日です。

チケットぴあ