2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

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報告遅れましたが、9日(土)に新国立劇場で「愛の妙薬」を聞いて来ました。

徹夜明けの新国立劇場にも慣れた気がするけれど、なんだか日常との乖離に涙が出るほど。

今回のキャストのかたがた、みんな安定していて、素晴らしかった。

シラクーザ、キャンベル、ジローラミ、成田さん、九嶋さん、みんな良かったなあ。

しばし現実を忘れました。

今回も合唱が素晴らしかったし。

シラクーザの思い出

シラクーザが歌いだして、あー、こりゃ贅沢だー、と思いました。いつも書いてますが、これを東京で見られるという奇跡に感謝ですよ。

新国立劇場でシラクーザを聴くのは今回が三回目です。一回目が、あの伝説の2002年の「セビリアの理髪師」。そう、私が初めて聞いた実演オペラ。

これも何度も書いてるんですが、今回も書きます。

当時の新国立劇場はダブルキャストで、シラクーザは降り番でした。

で、第二幕。なかなか始まらなくてやきもきしていたら、スタッフが舞台上に出てきて、アルマヴィーヴァ役のテノールが風邪のため二幕以降歌えない、ということになりました。

で、代わりに登場したのが、シラクーザ! 場内湧きに湧きましたよ! 風邪を引いたテノールに申し訳ないぐらい。

その後のシラクーザの素晴らしい歌唱とコミカルな演技を堪能して、私は新国立劇場に通うようになったというわけです。

そうか、シラクーザのおかげだったのですね。

二回目は「チェネレントラ」でしたね。あの時もすごかった。生まれて初めて、劇中でアンコールで同じ所を歌う、というのに出くわしました。

https://museum.projectmnh.com/2009/06/14195823.php

ニコル・キャンベル

アディーナを歌ったのはニコル・キャンベル、前回のプロダクションのアディーナとくらべて背が高くて、身のこなしが都会的で、劇中で本を読んでいる姿がなんだか先生みたいでしたが、歌はめちゃうまいです。声はやわらかみのある感じです。「ばらの騎士」の元帥夫人を聞きたいなあ、とおもいました。フィガロの伯爵夫人を歌っているから、行けそうですね。

 

レナート・ジローラミ

あとは、ドゥルカマーレを歌ったレナート・ジローラミ。

もう、こういう方が居らっしゃるからオペラが楽しくなるわけですね。

軽妙洒脱な演技がすごくてすごくて。こういうのを見るにつけて、オペラとかヨーロッパの懐の深さを感じてしまいます。

この分野で日本人が勝つのは並大抵ではないなあ、とおもいます。

まあ、西欧人が歌舞伎役者になるのが難しいのと同じ理屈だと思いますけれど。

演出

演出もめちゃ楽しい。

原色をふんだんに使った衣装が、映える舞台。本をうまく使った舞台設営。

現代アートのを見てる感じで、本当に楽しいです。

 

で、今回もありましたよ。

 

ドゥルカマーレの「愛の妙薬」のグラマラスな売り子が、第二幕の最初に、タクトを振り上げようとする指揮者のジュリアン・サレムクールに売りつけるシーン。

二幕の雨に、売り子さんが客席でスタンバっていて、サレムクールの方をポンポン、とたたいて、薬を売ります。

サレムクール、嬉しそうに投げキッスしてました。2本目はコンマスの弦にお札をつけて買ってましたね。

こういうの楽しくて大好きです。真後ろ二列目で見てたので、余計に面白かったです。

今回はないかな、と思ったんですが、ありましたね。

指揮サレムクール

サレムクールの指揮、重みがありながらも推進力がある感じ。私は全然軽さを感じませんでした。ですが、それはストーリーを阻害するものではなく、かえって引き締めているものに思えました。

バレンボイムの弟子、という先入観があったかもしれませんが、そう感じました。

最悪だった私の体調

しかし、私の体調は最悪でした。

前日の8日、5時半に起きて、そのまま24時間働いて、帰宅したのが9日の午前6時半。4時間仮眠して初台に行きました。

レッドブル投入しましたが、さすがに集中力な持たないです。。

寝落ちはしませんでしたが、疲労が鉛のように体の底に溜まっていて、気持ちが感動に向かおうとする時に足を引っ張るのですね。せっかくの第二幕最後のシラクーザ、気持ちが付いて行かなかった。これはショックです。

で、10日も仕事して。

今日は流石に休みましたが、さっきから寒くて寒くて。体温調整ができていないようです。

次回はアイーダ

次回はアイーダですね。

昨日から、カラヤン盤、ムーティ盤、アーノンクール盤を聞きました。

そしたら、今日のNHK-FMで、リストがピアノ用に編曲した「トスカ」が流れていて、おもしろかったですよ。

昨日の深夜にもBSプレミアムで「アイーダ」放送されていましたしね。

 

それでは、また。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera,Richard Wagner

昨日、2月2日に新国立劇場で「タンホイザー」を見て来ました。

今日は夜遅くなってしまいましたので、これからすこしずつ深堀りしますが、いままでの「タンホイザー観」が変わってしまいました。

全体的にはそんなにドラスティックに変わったわけではないのですが、演出一つで物語が大きく変質することに改めて驚きました。

まあ、ヴェーヌスにおける、リンダ・ワトソンとエレナ・ツィトコーワの違いなんですけどね。

画像は、私の参考CDであるハイティンク盤。こればかり聴き過ぎたのかもしれません。ルチア・ポップがエリーザベトを歌うのですが、巧すぎて巧すぎて、かえってエリーザベトっぽくなく思えるようになりました。

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昨夜は、大学生時代の音楽サークルの先輩後輩と久々に。とある方とは15年ぶりに飲んだのですが、全く変わっていなくて、タイムスリップした観があります。若返りの飲み会。

過剰な追憶モードは慎みたいものですが、たまには過去を振り返って自分の今の立ち位置を確認するのもいいものだと思いました。

そういう意味では、ブレブレな人生だなあ。

 

そうそう。今日もあのバークレー出身のギタリストと会話を。

こっちもとても面白かったです。

 

ではまた明日。

2013/2014シーズン,NNTT:新国立劇場

2013/2014シーズン予定発表

少し出遅れました。

来シーズンの予定がアナウンスされました。

  • リゴレット(新制作)
  • フィガロの結婚
  • ホフマン物語
  • カルメン
  • 蝶々夫人
  • 死の都(新制作)
  • ヴォツェック
  • カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師(新制作)
  • アラベッラ
  • 鹿鳴館

今シーズンと同じく新制作が3本ですね。ワーグナーが消えて、シュトラウスが復活しました。ヴォツェックの再演は嬉しいですね。

国別には、

  • ドイツ 4本
  • イタリア 3本
  • フランス 2本
  • 日本 1本

ということになります。

作曲家別上演回数

開場以来の作曲家別ですが、以下のとおりです。

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盤石のイタリア・オペラ。

リヒャルト・シュトラウスがワーグナーを追い抜くのはいつか?

本公演演目数上位

本公演演目の上位は以下のとおり。

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蝶々夫人ダントツです。意外にもアラベッラが多いですね。アラベッラのプロダクションは2つあるはず。それぞれで二回ずつということになります。

新規割引制度導入

それから、30歳台への割引制度が導入されました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000456.html

個人的には、もっと早く導入してくれればよかったんですが。

とはいえ、裾野を広げるため意欲的な施策だなあとおもいます。

 

まずは取り急ぎ。

Opera

新年三日目。

長いはずの年末年始休暇ももう終わりですか。。

 

今年はテレビでNHKニュー・イヤー・オペラコンサートを見ました。

少しタイミング遅れましたが、昨年のボジョレーを楽しみながら。

格別な時間でした。ありがたいことです。

 

イゾルデ愛の死を歌った藤村美穂子の素晴らしさはやはり違うなあ、とおもいます。

数年前にもNHKニューイヤー・オペラ・コンサートに出るということで、チケットを買って出かけたのを思い出しました。

だって、バイロイトの常連で、厳しいドイツのオペラ界で血の滲むような努力をしてこられた方ですから、チャンスがあれば見に行かなけれな、と思ったのでした。

残念ながら体調不良で出演は取りやめで、臍を噛みました。

その後も、バイロイトの生中継などで見ていましたが、やっぱり別格だなあとおもいます。

安定感があるので、ゆっくりと聞いていることができます。これが第一。そのあとに深い情感を感じることができるのです。

今回も、本来は歌うはずのないイゾルデを楽しむことができました。(藤村さんはメッゾですから、歌うのならブランゲーネのはずなのです)

(そういやあ、MISIAはメゾだなあ)

あとは、中嶋彰子さんも巧いですね。メリー・ウィドウに出ていましたが、この方も安定感が素晴らしいです。たしか2003年に新国立劇場でムゼッタを歌われました。一番左が中島さん。ちなみに、この時のミミはチェドリンス。私が涙を流した公演。

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さすがにウィーンのフォルクスオーパーで張っていただけあって、揺るぎない安定感でした。

 

それから、福井敬さんがすごいのは言うまでもないです。別格だなあ、と。

ヴァルキューレの騎行も素晴らしかったです。

 

あとは、桂文枝(桂三枝)。あそこで、「新婚さんいらっしゃい」を持ち出すのは面白かったですよ。予定調和ですが、素直に面白かったです。

でも、中嶋彰子さんはあの番組、ご存じなかったのかなあ。15歳でオーストラリアに移住なさったとのことなので。いまいちノリが悪かった気がします。

やはりコメディアンだけあって、なんか洒脱で、ウィーンな感じを大阪風にうまくアレンジしていて感動しました。すごいタレントだと思います。あらためて好きになりました。

 

今年は行けばよかった、と後悔しました。来年は前向きに考えます。

 

あすから仕事ですが、一日おいてまたお休みです。どうも、仕事しないと落ち着かない体になってきました。ワーカーホリックですね。でも休養できましたよ。明日から戦争です。

では、また明日。おやすみなさい。

Opera

年末は特別番組が目白押しです。

スカラ座公演が4日連続放送です。これは確保しないと。

http://www.nhk.or.jp/classic-blog/

12月25日 23時45分から 「シモン・ボッカネグラ」

バレンボイム、ドミンゴ、ハルテロスですね。

12月27日(26日深夜) 0時40分から 「ピーター・グライムス」

ティッツィアッティ、ホール

12月28日(27日深夜) 0時から 「カルメン」

ヨナス・カウフマン、バレンボイム

12月29日(28日深夜) 0時15分から 「ジークフリート」

これもバレンボイム。

 

っつうか、いつみられるかな? 年末年始?

Giacomo Puccini,Opera

プッチーニの最初のオペラ「妖精ヴィッリ」は、ソンツォーニョオペラ作曲コンテストに出品され、落選したものだった。

このコンクールは出版印刷会社経営するエドゥアルト・ソンツォーニョが企画したものだった。ソンツォーニョ社はもともと、文学作品の廉価版を出版したり、共和党の月刊誌にも関わっていた。

エドゥアルトはそれにも飽きたらず、音楽情報誌「イル・テアトロ・イルストラート」を作った。そこでオペラ作曲コンクールを催したのだった。

第一回目の優勝者は、ルイージ・ボレッリ「アンナとグァルベルト」、グリエルモ・セッリの「北の妖精」であった。プッチーニの妖精ヴィッリは落選したのだが、これには背景がありそうだ。というのは、プッチーニは遅筆で、締切間際に提出し、しかも乱筆であったから、というのだ。人間はまずは体裁から入るから、中身が良くても体裁が悪すぎては氷化されないと言うことになる。

ソンツォーニョ社はプッチーニを見いだすことが出来なかった。

だが、第二回目のコンクールにおいて、ソンツーニョ社は金の卵をてに入れたのだ。

マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」である。

これが「ヴェリズモオペラ」のブームのはじまりはここにあった。そして、そのブームがプッチーニに「トスカ」を作曲させる要因の一つになったのだ。

一方、落選した「妖精ヴィッリ」を目にとめたジュリオ・リコルディがプッチーニを見いだしたのだ。ソンツツォーニョ社はライヴァルのリコルディに塩を送ったことになる。

また、第一回目の入選者はどうなったのだろう。人生の哀楽をみる一つのエピソードがある。

次回へ

Giacomo Puccini,Opera

今日も郷土のために頑張りました。

トスカに関連して、周辺事情をいろいろと調査しています。

ソンツォーニョ社について調べています。19世紀のイタリアの出版社で、ソンツォーニョオペラコンテストを主催していました。プッチーニはここに「妖精」を出品しましたが、残念ながら落選します。そのあとが面白いのです。

今日は遅いので取り急ぎ。明日に続きます。

 

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

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先日の新国立劇場の「セビリアの理髪師」の演出。二回目なんですが、今回はいろいろ気づくところがたくさんありました。

そのうちのひとつ、面白かったところが序曲の部分です。

あそこでは、登場人物達が一人ずつ登場して、舞台の最前部でマネキンのように動きを止めます。最後にフィガロが登場するのですが、フィガロが合図するごとに、登場人物達は操り人形のように動き出し、また合図をすると動きを止めます。

なんだか、マネキンと言うよりフィギュアが登場したような感じでした。私はフィギュアは持ってませんのでよく分かりませんが、華やかな衣装を着けたキャストが人形のように立っているので、そう思えました。

フィガロがフィギュアのような登場人物達を操るのは、フィガロがこの物語の狂言回しだからでしょうか。にしては、劇中ではメタフィクション的な動きが見えませんでしたね。

一昨年の「コジ・ファン・トゥッテ」では、アルフォンソが狂言回しでしたので、途中で登場人物達の動きを止めてコントロールするシーンがありましたが、そうした動きはなかったと思います。席が前すぎて俯瞰できなかったのかも。。

何れにせよ、演出は本当に面白いです!

 

2012/2013シーズン,Giacomo Puccini,NNTT:新国立劇場,Opera,トスカを聴こう!

先日から連載しているトスカの件ですが、その後も引き続き調査を続けています。その中でわかったことをお伝えします。

トスカ成立の話の中でフランケッティという作曲家が登場しました。もともとトスカの作曲権を持っていたのですが、ジュリオ・リコルディにしてやられて、プッチーニに作曲権を渡してしまうという話でした。

その際に、フランケッティはプッチーニの学友だったという話を書いたと思います。このエピソードは、プッチーニの伝記として有名なモスコ・カーナーの著作に登場します。私はそこから引用しました。

ところが、南條年章氏の「プッチーニ」(音楽之友社)おいては、それが誤解ではないか、という説が紹介されていました。

曰く、フランケッティは、プッチーニと同じマージという先生に習っただけなのだそうです。いわば兄弟弟子です。ですが、一緒に学んだことはなかったとのこと。プッチーニはルッカで、フランケッティはヴェネツィアで、マージに師事したということになります。

歴史の中に埋れた真実はその手がかりをつかむのは難しいです。

(イタリア語がわかれば良いんですけどね。あと10年すれば、翻訳エンジンの性能が上がるでしょうから、文献程度なら辞書がなくてもわかる日がくるでしょう)

このシリーズ、来年元旦には、形にまとめてご披露できるよう頑張ります。

 

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

セヴィリアの理髪師、劇が一瞬中断する瞬間がありますね。

それは、第一幕の最終部分、第16場のところです。

http://www.youtube.com/watch?v=SYwG4199BCg

「銅像のように冷たく動けなくなったわ」以降では、キャストがみんな止まって、六重唱が始まります。この映像でいうと、2分27秒のあたり以降です。

演出にもよると思いますが、新国立劇場の演出では、登場人物達が停止し、背景の警察達が曲の拍節に合わせて体を動かし始めます。ストーリーの中の時間速度が遅くなる、あるいは停止して、登場人物達がストーリーから抜けだす瞬間です。

これは一種のメタフィクションなのでしょう。

リブレットを読むと、一応、バルトロが銅像のように固まってしまったと揶揄する場面と理解できるんですが、実演を観るとそうは思えません。

バルトロだけじゃなくてみんなかたまる必要はないんです。

でも、Youtubeの演出もみんな止まってますし、先代の新国立劇場演出でもやはりかたまってしまいました。

なんだか、この場面いつも奇異に思えます。

それに、歌が終わった後に、場面転換を告げるかのように信じられないほど静謐な旋律が出てくるのですよ。

その後またドタバタハチャメチャな喜劇に戻るのですよね。

これはリブレットを読んだだけだと理解できない世界です。

ここだけ、際だっているのですよねえ。

ググってみたんですが、どうも答えは見つかりません。