アダム・ホール「北京暗殺団をつぶせ」

 このスパイ小説は、ハードで文学的。内面描写は具象と抽象の間を行ったり来たりして、目がくらむ思いです。

イギリスの情報機関の諜報部員クィラーの活躍は、あまりに生々しく、冷たいリアリズムに背筋が冷たくなります。自動車事故に見せかけてロンドンで殺された同僚の事故現場を離れた直後に記憶を失い、次の瞬間自分も交通事故に見舞われる。要は命を狙われたと言うこと。キーは北京にあるとみて、中国首相の葬儀に参列するイギリス外相の随行員になるのだが、当の外相も爆弾テロで命を奪われる。手がかりを求めて韓国に潜入するが、情報を得る寸前で情報源は殺される。なんという救いのなさ。

著者のアダム・ホールは、ペンネームで、本名はエルンスト・トレヴァーとおっしゃるようで、えらくたくさんのペンネームをお持ちです。

ともかく、終盤は意外な展開で、驚きますし、途中に挟み込まれた悲壮なエピソードも衝撃でした。

とはいえ、キャセイパシフィック航空が金浦空港から平壌への定期便をDC-10で飛ばしている設定が出てくるのですが、そんなことってあったのでしょうか? キャセイはDC-10も保有していなかったようですし……。

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